脳梗塞×リハビリ ~リハビリを成功させる鍵~
今回は、脳梗塞後のリハビリにおいて、後遺症を大きく改善させるポイントを述べていきます。
多様な脳梗塞後遺症
脳梗塞では起きた部位によって、障害される経路や身体の箇所が異なります。そのため、脳梗塞の後遺症と一口に言っても、その人その人によって、悩まされる症状は様々です。
「手足は動かせるが、バランスが取れない」
「片側が思うように動かない」
人によって異なる後遺症に対処していくためには、具体的な方向性を決めていくことが重要です。
始めに脳梗塞が起こり、急性期を終えて、全身の状態が安定してから、リハビリ開始となります。
リハビリ開始時に、特に大切なのは、予後予測です。
現在の後遺症の状態から、
「1人で起き上がり、座った姿勢がとれる」
「1人で立って、手すりを使いながら歩くことができる」
「バランスが取れるようになって、外で、1人で歩ける」
など、どのくらいまで動作を獲得することができるか。獲得したいと思うか。
目指すべき到達点をより具体化することで、改善スピードを加速することができます。
脳梗塞の後遺症によってリハビリによる到達点は異なりますが、より短期間で、目標や、獲得すべき動作に向かって、着実にリハビリを進めていくことが大切です。
リハビリベース国分寺では、麻痺の部位や度合いを評価し、到達可能な動作や活動を、期間とともに提示します。
もちろんご利用者様の目標や、ご家族様の希望を聞き、出来る限り実現ができるように具体的な目標設定を行い、オーダーメイドのリハビリプログラムを立案して参ります。そちらをリハビリ毎に振り返りながら、機能改善を着実に進めていきます。
短期集中
リハビリの効果を出すためには、
短期集中で機能改善を図ることがより効果的です。リハビリに集中して、自分と向き合うことにより、効果的な運動学習効果を得ることができます。
また、集中的に動作改善を重ねることで、1人で行える動作に短期間で到達でき、そこから長期的な効果へつなげることが出来ます。
立ち座りが不安定で、出来なかったところから、1人で行えるようになると、日常生活の動作量が格段と増えてくることも、短期間での効果から生み出される良さの一つです。
身体機能の改善と日常生活の参加
短期集中による効果を、日常生活でも発揮することが、リハビリでは必要不可欠です。獲得できた立ち上がりや歩行を、普段から行ってもらうことで、筋力や持久力が増し、より難易度の高いバランス、応用的な歩行に発展させていくことができます。
短期集中で機能や動作改善を図り、日常生活でできることを増やす。
この正のサイクルが、リハビリの効果を一気に加速させていきます。
心理サポート
リハビリの過程で、脳梗塞による感情的・精神的な起伏がみられるのは自然なことです。脳梗塞後には、抑うつ、不安、ストレス、焦りなどを皆さんが経験します。時に、周りのご家族様も、どうしたらいいのかと、心配が多くなってしまうこともあると思います。
リハビリベース国分寺では、単にリハビリをするだけでなく、ご利用者様やご家族様と、
コミュニケーションを多く重ねていくことを重視しています。思い違いや不安な部分に対して、現在の病態や、改善されるリハビリの過程を説明していくことで、常に軌道修正と、リハビリの動機付けを図っていきます。
心が動かなければ、身体も動きづらくなってしまうのは、当然なことです。心理的な面でも、上向かせていくことで、負のサイクルを抜け出し、
効果的な、結果の出るリハビリの流れを生み出せるように、
リハビリベース国分寺は最大限のサポートを目指していきます。
2023年8月31日作成
2024年2月24日編集
今回は、脳梗塞後のリハビリにおいて、後遺症を大きく改善させるポイントを述べていきます。
多様な脳梗塞後遺症
脳梗塞の後遺症と言っても症状は様々です。
「手足は動かせるが、バランスが取れない」。「片側が思うように動かない」。
このように、症状が様々なのも、脳梗塞が起きた部位により、障害される経路や身体の箇所が様々だからです。
脳梗塞で非常に起きやすい片麻痺に関しては、発生機序から期間、リハビリの流れに関して、
突然脳梗塞で右片麻痺になってしまったら?で述べさせてもらいました。
その他の、脳幹や小脳梗塞などの後遺症に関しても、細かく
脳血管リハビリテーション➂に書かれているので、ご覧下さい。
脳梗塞の後遺症は、様々と話しましたが、それによってリハビリによる到達点も異なります。初めに脳梗塞が起こり、急性期を終えて、全身状態状態が安定してから、リハビリ開始となります。
リハビリ開始時に、特に大切なのは、予後予測になります。現在の後遺症の状態から、どのくらいまで動作を獲得することができるか。「1人で起き上がり、座った姿勢がとれる」、「1人で立って、手すりを使いながら歩くことができる」、「バランスが取れるようになって、外で、1人で歩ける」。目指すべき到達点をより具体化することで、改善スピードを加速することができます。より短期間で、目標や、獲得すべき動作に向かって、着実にリハビリを進めていくことが大切です。
リハビリベース国分寺では、麻痺の部位や度合いを評価し、到達可能な動作や活動を、期間とともに提示します。もちろんご利用者様の目標や、ご家族様の希望を聞きながら、
出来る限り実現ができるように、オーダーメイドのリハビリプログラムを立案して参ります。
短期集中
リハビリの効果を出すために、短期集中で機能改善を図ることがより効果的です。理由として、リハビリに集中して、自分と向き合うことにより、効果的な運動学習効果を得ることができるからです。また、集中的に動作改善を重ねることで、1人で行える動作に短期間で到達でき、そこから長期的な効果へつなげることが出来ます。立ち座りが不安定で、出来なかったところから、1人で行えるようになると、日常生活の動作量が格段と増えくることも、短期間での効果から生み出される良さの一つです。
リハビリベース国分寺では、具体的な目標設定を行い、リハビリ毎に振り返りながら、機能改善を着実に進めて参ります。
身体機能の改善と日常生活の参加
短期集中の効果を、最終的に日常生活にて効果を発揮させることが、リハビリでは必要不可欠です。獲得できた立ち上がりや歩行を、普段から行ってもらうことで、筋力や持久力が増し、より難易度の高いバランス、応用的な歩行に発展させていくことができます。
短期集中で機能や動作改善を図り、日常生活でできることを増やす。
このサイクルが、リハビリの効果を一気に加速させていきます。
心理サポート
リハビリの過程で、脳梗塞による感情的・精神的な起伏がみられるのは自然なことです。脳梗塞後に、抑うつ、不安、ストレス、焦りなどを皆さんが経験します。時に、周りのご家族様も、どうしたらいいのかと、心配が多くなってしまうこともあると思います。特にリハビリベース国分寺では、ご利用者様やご家族様と、コミュニケーションを多く重ねていきます。思い違いや、不安な部分に対して、現在の病態や、改善されるリハビリの過程を説明していくことで、常に軌道修正と、リハビリの動機付けを図っていきます。やはり、心が動かねければ、身体も動きづらくなってしまうのは、当然なことです。心理的な面でも、上向かせていくことで、負の循環から、効果的な結果の出るリハビリの流れを生み出せるように、目指していきます。
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尾作研太 理学療法士
回復期病院にて4年間勤務、主に整形外科や脳血管疾患、脊髄損傷のリハビリに従事。海外の大学にて、ヘルスケアの学位を取得後、訪問リハビリと地域の介護予防に参画。脳血管疾患の方の動作獲得や、装具を含めた歩行の修正、社会復帰までサポートしている。
パーキンソン病とはどんな病気?
パーキンソン病とはどんな病気?
パーキンソン病は決して珍しい病気ではありません。加齢とともに発症しやすいため、高齢化が進んでいる日本では、今や一般的な病気とさえいわれるようになってきました。現在、日本には約15万人の患者がいます。
今回のブログでは、パーキンソン病に関する知識として、パーキンソン病の病態や治療、リハビリについてまとめています。
【目次】
●パーキンソン病とは
●パーキンソン病による運動障害
●パーキンソン病による自律神経障害
●パーキンソン病による精神症状
●パーキンソン病の重症度分類
●パーキンソン病の治療方法
●まとめ
パーキンソン病とは、大脳の下の「中脳」にある「黒質」のドパミン神経細胞の変性を主体とする、進行性変性疾患です。ドパミン神経細胞とは、脳内で情報の運搬役を担っている神経伝達物質の一つで、主に運動や学習、感情、意欲、ホルモンの調節に関わっています。
パーキンソン病の初発年齢は若年から老年まで幅広いです。50歳代から60歳代で発病することが一般的ですが、まれに40歳以下で起こる場合もあり、若年性パーキンソン病と呼ばれています。
患者数は10万人に100人~150人といわれており、60歳以上では100人に約1人と、高齢者では多くなる傾向にあるので、人口の高齢化に伴いパーキンソン病は増加しています。男女差は、約1~2:1と、日本では男性に多い傾向が報告されています。
臨床症状としては、大きく分けて、「運動障害」と「自律神経障害」、「精神症状」があります。
パーキンソン病による運動障害には、「
振戦」、「
固縮」、「
無動・
寡動」、「姿勢反射障害」の4主要徴候があります。
*詳細は下記表
この中でも初発症状としては振戦がもっとも多く(約60%)、次いで歩行障害(20%)、動作緩慢(20%)などで気づかれることもあります。中には痛みで発症する症例もあり、整形疾患だと思って治療していたがなかなかよくならず、そのうちに振戦が出現して診断に至るケースもあります。
運動障害は左右差が明らかなことが多く、ゆっくりと進行していき、進行期には無動と姿勢反射障害が目立ってきます。長期の薬物治療を必要とするため、副作用による運動障害を呈する場合もあるので、注意が必要です。
振戦
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4~6Hz前後の比較的ゆっくりした規則的なふるえで、安静時に強く持続性があり、運動により減弱・消失するため安静時振戦と呼ばれます。通常、片側のみの手指や上肢あるいは下肢から始まり同側の他肢へ、次いで対側へと拡大していきます。病気の進行とともに頭頚部などに広がることもあります。
安静時振戦はパーキンソン病にとって特異的な症状になり、手指の振戦では親指と他の指で薬を丸めるような動きに似ていることからピルローリングといわれることもあります。
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固縮(筋強剛)
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固縮(筋強剛)とは、パーキンソン病患者の関節を受動的に曲げ伸ばしさせるときに認められる抵抗(筋緊張)が亢進した状態です。筋肉を伸ばすとき一様に持続的な抵抗があるときは鉛管様固縮、伸ばしている途中でがくがくと断続的な抵抗を感じるときは歯車様固縮といいます。
歯車様固縮は筋緊張亢進に安静時振戦のリズムが加わった症候ですが、患者・病期によっては安静時振戦が目立たず軽度の歯車様固縮のみがみられることもあります。初期には手関節や肘関節によくみられ、病期の進行に伴い、肩関節、股関節、頚部などにも固縮が現れます。固縮が強い場合、手指や足趾の関節変形を認める場合もあります。
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無動・寡動
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運動麻痺がないのにも関わらず動作の開始に非常に時間がかかり、いったん動作を開始できても緩慢で、通常の時間内には完全に遂行できず、場合によっては動作全体が欠如したようにみえる症状を無動・寡動といいます。日常生活中に認められる動作緩慢、動作開始遅延、仮面様顔貌、小字症、小声、単調発語などの症状は無動の表れです。
歩行時の一歩目の踏み出しが障害されるすくみ足現象や、極端に歩幅が小さくなる小刻み歩行、すり足歩行も、無動・寡動が関与していると考えられ、方向転換するときや狭い場所を通過するときによく見られます。
このように無動・寡動はパーキンソン病の中核症状の一つであり、進行期のADL障害に、もっとも大きな影響を与えてしまいます。
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姿勢反射障害・姿勢保持障害
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初期にはあまり見られませんが、病気が進行すると、体が傾いた時に姿勢を立て直すことができなくなり、転びやすくなる症状が出ます。その症状を姿勢反射障害と呼びます。座っている時に、姿勢をまっすぐ保つことができず、斜めに傾いたり、前や後ろに倒れてしまったりします。歩行中では重心が前方に偏移し、加速歩行・突進歩行といわれる歩容を呈し、衝突や転倒をきたしてしまいます。姿勢反射障害が重度になると、立っている銅像が倒れるように、受け身の姿勢を取ることなく倒れてしまい、大きな外傷や骨折につながってしまいます。
姿勢反射障害発症はPullテスト(患者さんの両肩を素早く後ろから引っ張り、倒れないかどうかを診る)という方法で、「姿勢の不安定性」を検査することができます。体勢を崩さないようにしようとする反応が起こらない場合には、異常と判定します。
姿勢反射障害が発症初期から起こることはなく、病気が始まって2年以内に姿勢反射障害が起こるときには、進行性核上性麻痺などのパーキンソン症候群の可能性を疑います。
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【パーキンソン病による自律神経障害】
パーキンソン病による自律神経障害でもっとも頻度の高い症状は、消化管運動障害(特に便秘)です。他には、神経因性膀胱、起立性低血圧・食後低血圧(高度な場合は突然死のリスクともなる)、脂顔、四肢浮腫、発汗、嗅覚の異常などが認められます。
【パーキンソン病による精神症状】
パーキンソン病による精神症状には抑うつ症状、認知機能障害、睡眠障害などがみられます。中でも抑うつ症状を合併する方は多く(30~90%)、運動障害が現れる前に抑うつ症状を認める場合も少なくありません。また、皮質下性痴呆と呼ばれる特有の認知機能障害を認める場合もまれではありません(20%前後と報告されている)。
他には睡眠-覚醒リズム障害、不眠などの睡眠障害を訴えることも多いです。
薬物療法による副作用として、経過中に幻覚やせん妄などの精神症状が現れることもあるので、注意が必要です。
【パーキンソン病の重症度分類】
パーキンソン病の重症度は一般に、生活機能障害度分類およびHoehn-Yahr分類により評価されることが多いです。近年ではパーキンソン病統一評価尺度 UPDRS(unified Parkinson's disease rating scale)による評価が普及してきています。国際的評価スケールとして信頼性が高く、特に、治療効果判定に用いられることが多いです。
以下にそれぞれの評価表を記載します。パーキンソン病統一評価尺度については評価内容がとても細かく設定されており、量も多いので、簡単にまとめています。
生活機能障害度分類およびHoehn-Yahr重症度分類
生活機能障害度分類
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Hoehn-Yahr 重症度分類
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Ⅰ度
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日常生活、通院にはほぼ介助は不要
労働能力もかなり維持されている
|
stage1
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左右どちらか一側性の軽度機能障害(振戦、固縮)のみ
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stage2
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両側性または体幹の機能障害はあるが、バランス障害はない
日常生活、労働は可能
|
Ⅱ度
|
日常生活、通院に部分介助が必要
労働能力制限が明らかである
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stage3
|
歩行障害が明らかで、軽度の姿勢反射障害がある
労働は職種により可能
生活機能障害は軽度~中等度で生活は自立
|
stage4
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無動を含む機能障害が高度で、姿勢反射障害のため転倒しやすい
日常生活は高度に障害され介助が必要
|
Ⅲ度
|
日常生活に全介助が必要
まったく労働能力なし
|
stage5
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介助がないと寝たきり、あるいは車いすの生活になる
|
パーキンソン病統一評価尺度 UPDRS
(unified Parkinson's disease rating scale)
Ⅰ.精神機能、行動および気分
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このパートは16点満点。4項目(知的機能障害、思考障害、抑うつ、意欲・自発性)を0~4点の5段階で評価。
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Ⅱ.日常生活動作(ADL)
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このパートは52点満点。全13項目(会話、唾液分泌、嚥下、書字、食物の咀嚼、食器の取り扱い、着衣、寝返り、転倒(すくみ足によらないもの)、歩行中のすくみ足、歩行など)のそれぞれを0~4点の5段階で評価。
|
Ⅲ.運動能力
|
このパートは56点満点。全14項目(言語、表情、安静時振戦、動作時・姿勢時振戦、固縮、指タップ、手指の運動、手の回内・回外運動、下肢の敏捷性、椅子からの立ち上がり、姿勢、歩行、姿勢の安定性、身体の動作緩慢)のそれぞれを0~4点の5段階で評価する。
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Ⅳ.治療の合併症
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このパートは23点満点。全11項目(ジスキネジア、症状の日内変動、その他の合併症など)を評価。11項目のうち、5項目は0~4の5段階評価だがその他は2段階評価となる。
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【パーキンソン病の治療方法】
パーキンソン病の治療方法は大きく分けて3つあり、薬物療法、非薬物療法、リハビリテーションが挙げられます。
薬物療法
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薬物療法には➀ドパミン代謝異常に対する薬物療法、➁ドパミン受容体刺激療法、➂アセチルコリン神経系抑制療法、➃ノルアドレナリン補充療法、➄随伴症状に対する薬物療法があります。
ドパミン代謝異常に対する薬物療法の中でドパミン前駆薬による治療は、早期・進行期ともに症状改善に効果があり、患者全体の80%に有効であると報告されています。しかし、長期から高用量服用している場合には、副作用が問題となるケースが多く、症状に応じてできるだけ用量を減らしてドパミン作動薬と併用することが望ましいと言われています。主な副作用は症状の日内変動として、ウェアリングオフ現象、オン‐オフ現象、無動、ジスキネジア、ジストニア、精神症状として幻覚や妄想が挙げられます。
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非薬物療法
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薬物療法による効果が不十分な場合や、副作用が強く薬物療法を継続しがたい場合などには、外科的介入を選択する場合があります。
外科的治療には、視床下核へ刺激電極を留置する定位脳手術とドパミンや神経栄養因子の供給源として種々の細胞を脳内に移植する細胞移植手術の2つがあります。
そのほかにも非薬物療法には磁気刺激療法や電気痙攣療法、心理カウンセリング療法などがあります。
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リハビリテーション
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パーキンソン病の症状では、疾患由来の一次的障害、廃用などの二次的な障害、これらが複合した障害を生じます。一次的障害の中には、理学療法の介入効果が報告されていないものもありますが、機能障害・能力障害を防ぐために、できるだけ早期から薬物療法とともにリハビリテーションを開始し、そして継続していくことが非常に重要です。対象者の身体評価の中で「何が日常生活動作の妨げになっているのか」問題点を抽出してリハビリメニューを組むことが必要であり、状態に応じて身体評価やリハビリメニューを変えていくことも大切です。
パーキンソン病でよくみられる「小刻み歩行」を例にしてお話すると、小刻み歩行では、
・股関節伸展角度や体幹の回旋可動域制限による歩幅の減少
・下肢筋力低下による片脚立位の支持性低下、単脚支持期の短縮
・両下肢間の協調性の低下
などが問題点となってきます。
これらの問題を改善させるために、股関節と体幹の可動域訓練やストレッチ、下肢・体幹の筋力強化、協調性向上トレーニング、外的キューイング(感覚的・イメージや例えを使用した指示)による歩行練習を行っていくというリハビリプランになります。
対象者によって症状や問題点は様々なので身体評価とリハビリの効果確認を繰り返し、症状に応じたリハビリを提供することが望ましいと考えています。
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【まとめ】
パーキンソン病はゆっくりと徐々に進行していく進行性変性疾患であり、現状ではパーキンソン病を治癒させる治療方法はまだありません。また、長い時間をかけて向き合っていく疾患になるので、出現する症状の種類や重症度、病気の経過はそれぞれ異なります。
そのため、治療目標は「治す」ではなく「症状の緩和」となります。一人ひとりの病状、生活状況に合わせた、細やかな内服調整や、リハビリプランの調整が必要になってきます。
さらに、パーキンソン病とどう向き合っていくかが大切になります。家の中に引きこもりがちになり身体活動量が減少し廃用を招いたり、ストレスを蓄積させたりすることはよくありません。
リハビリベース国分寺では、発症からの経過年数や日数制限にとらわれず、身体機能向上・改善のためのリハビリが可能です。保険外サービスになりますのでリハビリ内容の自由度は高く、「
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パーキンソン病とはどんな病気?
パーキンソン病は決して珍しい病気ではなく、現在、日本では約15万人の患者数がいます。
加齢とともに発症しやすく、高齢化が進んでいる日本では今や一般的な病気とさえいわれるようになってきました。
今回のブログではパーキンソン病に関する知識としてパーキンソン病の病態や治療、リハビリについてまとめています。
【目次】
●パーキンソン病とは
●パーキンソン病による運動障害
●パーキンソン病による自律神経障害
●パーキンソン病による精神症状
●パーキンソン病の重症度分類
●パーキンソン病の治療方法
●まとめ
パーキンソン病は大脳の下の「中脳」にある「黒質」のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変性疾患になります。ドパミン神経細胞とは、脳内で情報の運搬役を担っている神経伝達物質の一つで、主に運動や学習、感情、意欲、ホルモンの調節に関わっています。
パーキンソン病の初発年齢は若年から老年まで幅広いですが、50歳代から60歳代に発病することが一般的で、まれに40歳以下で起こる場合もあり、若年性パーキンソン病と呼ばれています。
臨床症状としては大きく分けて運動障害と自律神経障害、精神症状があります。患者数は10万人に100人~150人といわれており、60歳以上では100人に約1人と、高齢者では多くなる傾向にあるので、人口の高齢化に伴いパーキンソン病は増加しています。男女差は、約1~2:1と、日本では男性に多い傾向が報告されています。
パーキンソン病による運動障害には振戦、固縮、無動・寡動、姿勢反射障害の4主要徴候があります。この中でも初発症状としては振戦がもっとも多く(約60%)、次いで歩行障害(20%)、動作緩慢(20%)などで気づかれることもあります。中には痛みで発症する症例もあり、整形疾患だと思って治療していたがなかなかよくならず、そのうちに振戦が出現して診断に至るケースもあります。
運動障害は左右差が明らかなことが多く、ゆっくりと進行していき、進行期には無動と姿勢反射障害が目立ってきます。長期の薬物治療を必要とするため、副作用による運動障害を呈する場合もあるので注意が必要です。
振戦
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4~6Hz前後の比較的ゆっくりした規則的なふるえで、安静時に強く持続性であり、運動により減弱・消失するため安静時振戦と呼ばれます。通常、片側のみの手指や上肢あるいは下肢から始まり同側の他肢へ、次いで対側へと拡大していきます。病気の進行とともに頭頚部などに広がることもあります。
安静時振戦はパーキンソン病にとって特異的な症状になり、手指の振戦では親指と他の指で薬を丸めるような動きに似ていることからピルローリングといわれることもあります。
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固縮(筋強剛)
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固縮(筋強剛)とは、パーキンソン病患者の関節を受動的に曲げ伸ばしさせるときに認められる抵抗(筋緊張)が亢進した状態です。筋肉を伸ばすとき一様に持続的な抵抗があるときは鉛管様固縮、伸ばしている途中でがくがくと断続的な抵抗を感じるときは歯車様固縮といいます。歯車様固縮は筋緊張亢進に安静時振戦のリズムが加わった症候ですが、患者・病期によっては安静時振戦が目立たず軽度の歯車様固縮のみがみられることもあります。初期には手関節や肘関節によくみられ、病期の進行に伴い、肩関節、股関節、頚部などにも固縮が現れます。固縮が強い場合、手指や足趾の関節変形を認める場合もあります。
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無動・寡動
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運動麻痺がないのにも関わらず動作の開始に非常に時間がかかり、いったん動作を開始できても緩慢で通常の時間内には完全に遂行できず、場合によっては動作全体が欠如したようにみえる症状を無動・寡動といいます。日常生活中に認められる動作緩慢、動作開始遅延、仮面様顔貌、小字症、小声、単調発語などの症状は無動の表れです。
歩行時の一歩目の踏み出しが障害されるすくみ足現象や極端に歩幅が小さくなる小刻み歩行やすり足歩行も無動・寡動が関与していると考えられ、方向転換するときや狭い場所を通過するときによく見られます。
このように無動・寡動はパーキンソン病の中核症状の一つであり、進行期のADL障害にもっとも大きな影響を与えてしまいます。
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姿勢反射障害・姿勢保持障害
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初期にはあまり見られませんが、病気が進行すると、体が傾いた時に姿勢を立て直すことができなくなり、転びやすくなる症状を姿勢反射障害と呼びます。座っている時にも、姿勢をまっすぐ保つことができず、斜めに傾いたり、前や後ろに倒れてしまったりします。
歩行中では重心が前方に偏移し、加速歩行・突進歩行といわれる歩容を呈し、衝突や転倒をきたしてしまいます。姿勢反射障害が重度になると、立っている銅像が倒れるように受け身の姿勢を取ることなく倒れてしまい、大きな外傷や骨折につながってしまいます。
姿勢反射障害はPullテスト(患者さんの両肩を素早く後ろから引っ張り、倒れないかどうかを診る)という方法で、「姿勢の不安定性」を検査することができます。体勢を崩さないようにしようとする反応が起こらない場合には、異常と判定します。
姿勢反射障害が発症初期から起こることは無く、病気が始まって2年以内に姿勢反射障害が起こるときには、進行性核上性麻痺などのパーキンソン症候群の可能性を疑います。
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【パーキンソン病による自律神経障害】
パーキンソン病による自律神経障害でもっとも頻度の高い症状は消化管運動障害(特に便秘)で、他には神経因性膀胱、起立性低血圧・食後低血圧(高度な場合は突然死のリスクともなる)、脂顔、四肢浮腫、発汗、嗅覚の異常などが認められます。
【パーキンソン病による精神症状】
パーキンソン病による精神症状には抑うつ症状、認知機能障害、睡眠障害などがみられます。中でも抑うつ症状を合併する方は多く(30~90%)、運動障害が現れる前に抑うつ症状を認める場合も少なくありません。また、皮質下性痴呆と呼ばれる特有の認知機能障害を認める場合もまれではありません(20%前後と報告されている)。
他には睡眠-覚醒リズム障害、不眠などの睡眠障害を訴えることも多いです。
薬物療法による副作用として経過中に幻覚やせん妄などの精神症状が現れることもあるので注意が必要です。
【パーキンソン病の重症度分類】
パーキンソン病の重症度は、一般に生活機能障害度分類およびHoehn-Yahr分類により評価されることが多いです。近年ではパーキンソン病統一評価尺度 UPDRS(unified Parkinson's disease rating scale)による評価が普及してきています。
国際的評価スケールとして信頼性が高く、特に治療効果判定に用いられることが多いです。
以下にそれぞれの評価表を記載しますが、パーキンソン病統一評価尺度については評価内容がとても細かく設定されており量も多いので簡単にまとめています。
生活機能障害度分類およびHoehn-Yahr重症度分類
生活機能障害度分類
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Hoehn-Yahr 重症度分類
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Ⅰ度
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日常生活、通院にはほぼ介助は不要
労働能力もかなり維持されている
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stage1
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左右どちらか一側性の軽度機能障害(振戦、固縮)のみ
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stage2
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両側性または体幹の機能障害はあるが、バランス障害はない
日常生活、労働は可能
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Ⅱ度
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日常生活、通院に部分介助が必要
労働能力制限が明らかである
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stage3
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歩行障害が明らかで、軽度の姿勢反射障害がある
労働は職種により可能
生活機能障害は軽度~中等度で生活は自立
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stage4
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無動を含む機能障害が高度で、姿勢反射障害のため転倒しやすい
日常生活は高度に障害され介助が必要
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Ⅲ度
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日常生活に全介助が必要
まったく労働能力なし
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stage5
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介助がないと寝たきり、あるいは車いすの生活になる
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パーキンソン病統一評価尺度 UPDRS(unified Parkinson's disease rating scale)
Ⅰ.精神機能、行動および気分
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4項目(知的機能障害、思考障害、抑うつ、意欲・自発性)を0~4点の5段階で評価。このパートは16点満点。
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Ⅱ.日常生活動作(ADL)
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このパートは52点満点。全13項目(会話、唾液分泌、嚥下、書字、食物の咀嚼、食器の取り扱い、着衣、寝返り、転倒(すくみ足によらないもの)、歩行中のすくみ足、歩行など)のそれぞれを0~4点の5段階で評価。
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Ⅲ.運動能力
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このパートは56点満点。全14項目(言語、表情、安静時振戦、動作時・姿勢時振戦、固縮、指タップ、手指の運動、手の回内・回外運動、下肢の敏捷性、椅子からの立ち上がり、姿勢、歩行、姿勢の安定性、身体の動作緩慢)のそれぞれを0~4点の5段階で評価する。
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Ⅳ.治療の合併症
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このパートは23点満点。全11項目(ジスキネジア、症状の日内変動、その他の合併症など)を評価。11項目のうち、5項目は0~4の5段階評価だがその他は2段階評価となる。
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【パーキンソン病の治療方法】
パーキンソン病の治療方法は大きく分けて3つあり、薬物療法、非薬物療法、リハビリテーションが挙げられます。
薬物療法
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薬物療法には➀ドパミン代謝異常に対する薬物療法、➁ドパミン受容体刺激療法、③アセチルコリン神経系抑制療法、➃ノルアドレナリン補充療法、➄随伴症状に対する薬物療法があります。
ドパミン代謝異常に対する薬物療法の中でドパミン前駆薬による治療は早期・進行期ともに症状改善に効果があり、患者全体の80%に有効であると報告されています。しかし、長期から高用量服用している場合には副作用が問題となるケースが多く、症状に応じてできるだけ用量を減らしてドパミン作動薬と併用することが望ましいと言われています。主な副作用は症状の日内変動として、ウェアリングオフ現象、オン‐オフ現象、無動、ジスキネジア、ジストニア、精神症状として幻覚や妄想が挙げられます。
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非薬物療法
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薬物療法による効果が不十分な場合や副作用が強く薬物療法を継続しがたい場合などには外科的介入を選択する場合があります。
外科的治療には、視床下核へ刺激電極を留置する定位脳手術とドパミンや神経栄養因子の供給源として種々の細胞を脳内に移植する細胞移植手術の2つがあります。
そのほかにも非薬物療法には磁気刺激療法や電気痙攣療法、心理カウンセリング療法などがあります。
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リハビリテーション
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パーキンソン病の症状では、疾患由来の一次的障害、廃用などの二次的な障害、これらが複合した障害を生じます。一次的障害の中には、理学療法の介入効果が報告されていないものもありますが、機能障害・能力障害を防ぐためにできるだけ早期から薬物療法とともにリハビリテーションを開始し、そして継続していくことが非常に重要です。
対象者の身体評価の中で、何が日常生活動作の妨げになっているのか、問題点を抽出してリハビリメニューを組むことが必要であり、状態に応じて身体評価やリハビリメニューを変えていくのも大切です。
パーキンソン病でよくみられる「小刻み歩行」を例にしてお話すると、小刻み歩行では股関節伸展角度や体幹の回旋可動域制限による歩幅の減少、下肢筋力低下による片脚立位の支持性低下・単脚支持期の短縮、両下肢間の協調性の低下などが問題点となってきます。
これらの問題を改善させるために、股関節と体幹の可動域訓練やストレッチ、下肢・体幹の筋力強化、協調性向上トレーニング、外的キューイング(感覚的・イメージや例えを使用した指示)による歩行練習を行っていくというリハビリプランになります。
対象者によって症状や問題点は様々なので身体評価とリハビリの効果確認を繰り返し、症状に応じたリハビリを提供することが望ましいと考えています。
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【まとめ】
パーキンソン病はゆっくりと徐々に進行していく進行性変性疾患であり、現状ではパーキンソン病を治癒させる治療方法はまだありません。そのため、治療目標は「治す」ではなく「症状の緩和」です。一人ひとりの病状、生活状況に合わせた細やかな内服調整やリハビリプランの調整が必要になってきます。また、長い時間をかけて向き合っていく疾患になるので、出現する症状の種類や重症度、病気の経過はそれぞれ異なります。
パーキンソン病とどう向き合っていくかが大切で、家の中に引きこもりがちになり身体活動量が減少し廃用を招いたり、ストレスを蓄積させたりすることはよくありません。
リハビリベース国分寺では発症からの経過年数や日数制限にとらわれず、身体機能向上・改善のためのリハビリが可能です。保険外サービスになりますのでリハビリ内容の自由度は高く、「〇〇へ買い物に行きたい!」「〇〇観戦にいきたい!」などのサポートもできます。
是非一度、リハビリベース国分寺へお越しいただき体験リハビリ受けてみてください!!!
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人工膝関節置換術について
人工膝関節置換術について
人工膝関節置換術を受ける方は年々増加しております。
人工関節部品の性能や手術技術は大きく進歩し、今では「手術を受けて良かった」と回答する人が約9割くらいといわれている程です。
長年、膝の痛みに悩んでいる方や手術を受けるか迷っている方は是非ご覧下さい。
人工膝関節置換術について
人工膝関節置換術を受ける方は年々増加しております。
人工関節部品の性能や手術技術は大きく進歩し、今では「手術を受けて良かった」と回答する人が約9割くらいといわれている程です。
長年、膝の痛みに悩んでいる方や手術を受けるか迷っている方は、是非ご覧下さい。
【目次】
●人工膝関節置換術とは
●人工膝関節置換術の適応疾患
●人工膝関節置換術の術式
●人工膝関節置換術の効果
●人工膝関節置換術の合併症
●人工膝関節置換術の入院期間
●まとめ
【人工膝関節置換術とは】
人工膝関節置換術(total knee arthroplasty: TKA)とは、膝の変形性関節症や関節リウマチなどにより痛んだ関節面を関節の代用として人工膝関節に置き換える手術的治療法の一つです。通常、医師が特殊な精密器具を使用し、大腿骨、脛骨、膝蓋骨の損傷した関節面を取り除き、そこへ代わりの人工関節部品を固定します。
【人工膝関節置換術とは】
人工膝関節置換術(total knee arthroplasty: TKA)とは、
膝の変形性関節症や関節リウマチなどにより痛んだ関節面を、関節の代用として人工膝関節に置き換える、
手術的治療法の一つです。
通常、医師が特殊な精密器具を使用し、大腿骨、脛骨、膝蓋骨の損傷した関節面を取り除き、そこへ代わりの人工関節部品を固定します。
【人工膝関節置換術との適応疾患】
人工膝関節置換術(TKA)の適応疾患は、膝の変形性関節症、関節リウマチ、骨壊死などにより関節の変形や破壊が進行している症例です。これらの疾患によって、膝関節の痛みや可動域の制限、歩行困難などの症状が出現します。第一選択として保存療法が選択されますが、保存療法で効果がみられなかった場合、手術の適応となります。
人工膝関節置換術(TKA)の効果は傷んだ部分が新しく置き換わるので除痛効果に優れています。また、膝の骨や靱帯が欠損しているため膝がグラグラして歩けない、という症状の方に対しても効果的で歩行のしやすさも期待できます。また、変形のために膝がひどく曲がってしまった方(O脚やX脚)、まっすぐ伸ばせない方にも効果があります。
【人工膝関節置換術との適応疾患】
人工膝関節置換術(TKA)の適応疾患は、膝の変形性関節症、関節リウマチ、骨壊死などにより関節の変形や破壊が進行している症例です。これらの疾患によって、膝関節の痛みや可動域の制限、歩行困難などの症状が出現します。
第一選択として保存療法が選択されますが、保存療法で効果がみられなかった場合、手術の適応となります。
人工膝関節置換術(TKA)は、傷んだ部分が新しく置き換わるので、除痛効果に優れています。また、膝の骨や靱帯が欠損しているため膝がグラグラして歩けない、という症状の方に対しても効果的で、歩行のしやすさも期待できます。変形のために膝がひどく曲がってしまった方(O脚やX脚)、まっすぐ伸ばせない方にも、効果があります。
【人工膝関節置換術の術式】
人工膝関節置換術(TKA)の手術は、一般的に麻酔下で行われ、大きく分けて2つの方法があります。人口膝関節全置換術、人口膝関節部分置換術です。膝関節全体に変形が進んでいる場合は人工膝関節全置換術、膝関節の限られた部位の変形であれば、人工膝関節部分置換術が選択されます。
また、部分置換術には、単顆置換術(UKA)と膝蓋大腿置換術(PFA)の2種類があります。
一般的な手術方法では、約15㎝~20㎝程度の大きな皮膚切開を行い、筋肉を大きく切り開きながら骨まで到達していき、人工膝関節を設置しています。
手術をする病院や変形の程度によっては、8cm~12cm程度の皮膚切開で従来と同じ人工膝関節の手術ができるMIS手術という画期的な方法もあります。ですが、執刀医の視野や操作も制限されてしまうため、すべての方に適応できる手術方法ではありません。
【人工膝関節置換術の術式】
人工膝関節置換術(TKA)の手術は、一般的に麻酔下で行われ、大きく分けて2つの方法があります。人口膝関節全置換術、人口膝関節部分置換術です。膝関節全体に変形が進んでいる場合は人工膝関節全置換術、膝関節の限られた部位の変形であれば、人工膝関節部分置換術が選択されます。
また、部分置換術には、単顆置換術(UKA)と膝蓋大腿置換術(PFA)の2種類があります。
一般的な手術方法では、約15㎝~20㎝程度の大きな皮膚切開を行い、筋肉を大きく切り開きながら骨まで到達していき、人工膝関節を設置しています。
手術をする病院や変形の程度によっては、8cm~12cm程度の皮膚切開で従来と同じ人工膝関節の手術ができるMIS手術という画期的な方法もあります。ですが、執刀医の視野や操作も制限されてしまうため、すべての方に適応できる手術方法ではありません。
【人工膝関節置換術の効果】
人工膝関節置換術が世界中でおこなわれるようになって40年以上が経過しましたが、近年さらに人工関節の素材やデザインが進歩してきています。当初10~15年とされていた耐久年数も、正しく手術が行われれば、耐久年数が20年以上期待できることが分かってきています。
また、強い衝撃が加わらないスポーツ活動ならば可能なことも、報告されてきています。例えば、術前の膝の状態によって異なりますが、人工関節全置換術の術後には、膝の曲がり具合は120°程度獲得できます。ですが、しゃがみ込みや正座などの膝を深く曲げる動作は難しいです。部分置換術では130~145°程度獲得でき、状態によってはしゃがみ込みや正座といった、膝を深く曲げる動作の獲得も期待できます。
すなわち人工膝関節置換術は、軟骨や骨がひどく摩耗した方に対して行えて、術後はレクリエーションレベルでの軽いスポーツ活動(ゴルフ、卓球、水泳、ハイキングなど)が可能になる手術です。
しかし、運動負荷の高いスポーツ(マラソンやジャンプを伴う競技など)を行うことは推奨されていません。
日常生活の安定はもちろんのこと、スポーツ活動再開のためには、適切なリハビリを行わなければなりません。
人工膝関節置換術(TKA)は、高齢者や肥満の患者にも適用されることが多く、これらの患者においても、手術によって痛みや機能障害を改善することができます。ただし、手術前には、患者の年齢や健康状態、生活環境、治療目的などを総合的に評価し、手術の適否を判断する必要があります。
【人工膝関節置換術との合併症】
●感染症
人工関節に置換された膝関節に細菌が進入する合併症で、その発生率は1~3%とされています。主に手術中に細菌が侵入したために発生する早期感染症と、術後、歯槽膿漏・難治性の痔・皮膚の傷などから二次的に細菌感染を起こす遅発感染症があります。糖尿病、関節リウマチで薬物治療中の方、ステロイド治療中の方は、感染率が高くなります。
●血栓症
手術するにあたり、生体は出血に対する自己防御反応として血液が固まりやすい状態になります。また、手術中、手術後には下肢をあまり動かすことが出来ないため、下肢の血流が停滞し下肢の静脈内に血栓(血液のかたまり)が出来ます。この状態を深部静脈血栓症といいます。
さらに、この血栓がはがれ落ち、この血栓が血流に乗って移動し、肺の血管につまった状態を肺塞栓症といいます。肺塞栓症は命にかかわる重大な合併症となることがあります。肺塞栓症の予防のためには、深部静脈血栓症の予防が大切です。術後に弾性ストッキングを着用したり下肢にメドマー(空気ポンプ)を装着したりします。血栓予防の薬の服用や足趾を動かすエクササイズを行うこともあります。
●神経障害
手術によって周囲神経の損傷が生じ、創部痛や四肢のしびれなどが起こることがあります。また、術後の管理不足による腓骨神経麻痺にも注意が必要です。
●骨折
人工膝関節置換術を受けた場合、術後に人工関節周囲の骨密度が低下することが多く報告されています。そのため、万が一転倒してしまうと人工膝関節の周囲で骨折をする可能性があります。
手術により身体機能が向上することで活動量が増え、軽い転倒でも骨折してしまうリスクがあるので注意が必要です。
骨折部位は大腿骨側の人工関節の上で起こることが多いです。
●人工関節の緩み
人工関節を長期使用していると、人工関節と骨との接着面にゆるみが生じ、膝痛を発生させ歩行障害が出現する事がありあます。ゆるみが進行する場合には人工関節を再度入れ直す必要もでてきます。定期的なレントゲン検査や骨粗鬆症の予防・治療、膝周囲のリハビリが重要になってきます。
近年、流行の振動マシーンが禁忌とされる場合もあります。使用前は医師やリハビリ担当者に確認することが望ましいです。
感染症
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人工関節に置換された膝関節に細菌が進入する合併症で、その発生率は1〜 3%とされています。主に手術中に細菌が侵入したために発生する早期感染症と、術後、歯槽膿漏・難治性の痔・皮膚の傷などから二次的に細菌感染を起こす遅発感染症があります。糖尿病、関節リウマチで薬物治療中の方、ステロイド治療中の方は感染率が高くなります。
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血栓症
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手術するにあたり、生体は出血に対する自己防御反応として血液が固まりやすい状態になります。また手術中、手術後には下肢をあまり動かすことが出来ないため、下肢の血流が停滞し下肢の静脈内に血栓(血液のかたまり)が出来ます。この状態を深部静脈血栓症といいます。さらにこの血栓がはがれ落ち、この血栓が血流に乗って移動し、肺の血管につまった状態を肺塞栓症といいます。肺塞栓症は命にかかわる重大な合併症となることがあります。肺塞栓症の予防のためには、深部静脈血栓症の予防が大切です。術後に弾性ストッキングを着用したり下肢にメドマー(空気ポンプ)を装着したりします。また、血栓予防の薬の服用や足趾を動かすエクササイズを行うこともあります。
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神経障害
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手術によって周囲神経の損傷が生じ、創部痛や四肢のしびれなどが起こることがあります。また、術後の管理不足による腓骨神経麻痺にも注意が必要です。
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骨折
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人工膝関節置換術を受けた場合、術後に人工関節周囲の骨密度が低下することが多く報告されています。そのため、万が一転倒してしまうと人工膝関節の周囲で骨折をする可能性があります。
手術により身体機能が向上することで活動量が増え、軽い転倒でも骨折してしまうリスクがあるので注意が必要です。
骨折部位は大腿骨側の人工関節の上で起こることが多いです。
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人工関節の緩み
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人工関節を長期使用していると、人工関節と骨との接着面にゆるみが生じ、膝痛を発生させ歩行障害が出現する事がありあます。ゆるみが進行する場合には人工関節を再度入れ直す必要もでてきます。定期的なレントゲン検査や骨粗鬆症の予防・治療、膝周囲のリハビリが重要になってきます。
近年、流行の振動マシーンが禁忌とされる場合もあります。使用前は医師やリハビリ担当者に確認することが望ましいです。
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【人工膝関節置換術の入院期間】
人工膝関節置換術(TKA)の手術は、膝関節の疾患に対する治療法の一つであり、患者の生活の質を向上させるために行われます。手術前には、患者の身体的状態、年齢、病歴、手術目的、手術方法などを総合的に評価し、手術の適否を判断する必要があります。
また、手術後には、適切なリハビリテーションや定期的なフォローアップが行われることが重要です。最新の技術や手術法の導入により、TKA手術の成功率や安全性が向上し、今後も更なる発展が期待されます。
手術方法や対象者の状態にもよりますが、一般的に初回のリハビリは、術後翌日~4日以内に開始されます。入院期間は、入院時のリハビリ期間も含めて、人工膝関節全置換術の場合は2~4週間、人工膝関節部分置換術では1~3週間とされています。
入院中のリハビリの大きな目的は、
・術後の炎症を抑えること
・可動域を確保すること
・自宅に戻るための機能を獲得すること
です。
急性期病院で状態が安定して予定通りに退院できれば、その後は外来でのリハビリが開始されます。「自宅に戻るのが不安」というような方は、回復期リハビリテーション病院へ転院するケースもあります。
術後のリハビリには、最低でも2~3、4カ月程度必要になってきます。
また、術前のリハビリも非常に重要です。術前の膝関節の状態は、術後の状態に大きく関わってきます。
リハビリベース国分寺では、術後のリハビリはもちろん、術前のリハビリもみっちり行うことが出来ます。
【まとめ】
人工膝関節全置換術と人工膝関節部分置換術の比較
術式
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適応症
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身体への負担
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術後の膝屈曲角度(目安)
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耐久年数
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退院までの期間
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全置換術
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関節全体が痛んでいる場合
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手術部分が多いため、部分置換よりも負担は大きい
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深いしゃがみ込みや正座は難しい(120~130°程度)
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20年以上
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2~4週間
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部分置換術
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関節の一部のみ痛んでいる場合
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全置換術のおよそ半分程度
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深いしゃがみ込みや正座ができることもある(135~145°程度)
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15年以上
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1~3週間
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近年、入院期間の減少や保険内リハビリでの制限などといった医療保険制度が徐々に厳しくなってきている印象です。
「この状態では退院は不安」「退院後しっかり生活できるかしら」「もっとリハビリしたいのにもうできないの?」と、このようなお声をたくさん聞くようになりました。
そんな中、リハビリベース国分寺ではご利用者様のニーズに合わせて期間や日数制限などがなくオーダーメイドリハビリが出来ます(1回90分間のコース制/3種類のプランより選択)。
退院後すぐにご来院いただいている方や、回復期病院を経てご来院くださる方、術前リハビリでご来院される方などと様々です。
リハビリベース国分寺ではご利用者様の身体を細かく評価させていただき、的確なリハビリプランを組むことで一人ひとりに合ったオーダーメイドのリハビリが可能です。
90分間の中で身体のケアはもちろん運動量を十分に確保し、身体機能向上に向けたハイブリッドなリハビリが行えます。
また、当施設では室内でのリハビリだけでなく、近隣の商業施設や駅構内、国指定文化財である殿ヶ谷庭園などでの屋外訓練なども実施しております。
まずは是非、体験リハビリを受けてみませんか?
皆様の思い描く目標に向かって全力でサポートしていきます。
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はじめての方へ①―医療・介護保険との違い―
はじめまして、JR国分寺駅南口徒歩1分のところにありますリハビリベース国分寺の院長の原嶋です。
リハビリベースは脳梗塞、脳出血の後遺症の方だけでなく、難病と言われるパーキンソン病や脊髄小脳変性症などの神経疾患の方、脊柱管狭窄症や変形性関節症などの骨・関節疾患の方、また骨折などの術後のリハビリなど様々な目的でご利用していただいております。約7割の方が介護保険をお持ちで、デイサービスや訪問リハビリなどの介護保険リハビリ、または整形外科の外来などの医療保険と併用される方が多くいらっしゃいます。
はじめての方に多い疑問の1つとして『保険リハビリとの併用できるの?』とよくご質問をいただきます。
そこで、今回は医療・介護保険と当施設のリハビリの違いについてご説明致します。
医療・介護保険を用いたリハビリは、保険申請が適用されれば1~3割負担でリハビリを受けることが可能です。
しかし、、
時間や日数などの法的制限や施設側のリハビリ体制などから様々な制限があることもあります。
リハビリベース国分寺は保険外のリハビリを提供しており、医療・介護保険との併用のご利用も可能です。
私達は現在の身体状況などを踏まえて、上手な活用方法についてもご提案させていただいております。
1、医療・介護保険のリハビリを使って出来ること・できないこと
医療・介護保険でのリハビリは、国民が同等に医療・介護保険を利用しながら保険適用されたリハビリを受けることができる国のサービスですが、社会保障費など財源、制度上の観点からできないこともあります。
自費リハビリであるリハビリベースと医療・介護保険でのサービスとでは次のような違いがあります。
✅セラピストの経歴がわからない
基本担当者は選べません。また、回復期病院を中心に「若い人が多かったよ。」とか、「その人に悪くて、変更希望は出せなかった。」というお話を聞きます。年間1万人の理学療法士が養成校から卒業し、多くの新人理学療法士が回復期病院に就職する傾向があります。また、各セラピストの背景など掲載しているところはほとんどありません。
当施設ではスタッフの経歴など掲載し、急性期から回復期、在宅など10年以上臨床経験を積んでいます。
ご安心してご利用できる体制を整えています。
✅リハビリ時間、日数に制限がある
医療・介護保険でのリハビリは、日数や内容が法的に定められており、疾患や介護度などによってもリハビリを受けることができる時間や内容に制限があります。そのため目標に対して時間や回数が足りないなどの問題点も実際にございます。
当施設の自費リハビリは、保険外でのサービスとなりますので、時間や期間に制限はありません。8・16・24回コースから選ぶことができ、その後のアフターコースもございます。ご利用者様の目標や希望に対して『納得いくまで』対応することができることが強みです。
✅介護保険でのデイサービスは疾患に特化したサービスではない場合がある
訪問リハビリやデイサービスは、介護度によって利用できるサービスが決まっており、集団でのリハビリや担当するセラピストが日によって変わるなど、きめ細やかなサービスを提供している施設は少ないのが現状です。
当施設では、ひとりひとりの症状や状態に合わせて目標設定を実施しております。まだ保険下でも導入の少ないIVES®や歩行や姿勢などのAI評価などを用いたオーダーメイドのリハビリを完全マンツーマンで提供することで、より改善を図ることが可能です。
2、現在ご利用している、または今後予定しているリハビリ内容を踏まえて目標を設定します
訪問リハビリやデイサービス、医療保険での外来リハビリをしている場合は、そこでのリハビリ内容を必ずお伺いしております。医療・介護保険での内容を踏まえた上で、当施設での目標を計画します。
リハビリベースの体験リハビリしてみませんか?
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原嶋崇人 リハビリベース国分寺院長 運動器認定理学療法士
小児から高齢者、俳優からスポーツ選手のリハビリを経験。ラグビーワールドカップ2019のスポーツマッサージセラピスト、TOKYO2020大会の医療スタッフとして派遣経験あり。スポーツ現場へのサポート、地域高齢者に対しての介護予防や転倒予防事業の講師などを行っている。
笑顔の介護ワークショップ
当施設では、日々のリハビリの中で、ご利用者だけでなく、ご家族の方に対しても、リハビリ方法のレクチャーをさせて頂くことがございます。
介助する人の負担を減らすことや、介助される側も動きやすくなることにつながります。
介助する人、介助される人の双方にメリットがあり、日常生活動作は繰り返し行うため、長期的にみても大きな効果が得られます。
介護問題を解決するリハビリレクチャー
レクチャーの内容は、難しいものではありません。
「起き上がる」、「立つ、座る」、「立ってバランスを取る」といった、日常生活にて必ず行う動作のポイントをしっかりと抑えていきます。
基本的な動作ではありますが、すべての動作の始まりになります。
この動作が上手くいかなければ、他の応用的な歩く、階段を昇るといった動作も上手くいかず、より介助量は増えてしまいます。
基礎を繰り返し、積み上げることで、他の動作に大きく反映していきます。
私達と、自宅生活の中から、リハビリの好循環を生み出していきましょう。
介護でお困りの方から、普段ご利用者宅に行っているヘルパーさんまで、誰でも参加可能です。
もちろん、お身体の状態によって、様々なケースがあると思います。
時間の許す限り、個別で相談に乗らせて頂き、様々なケースにも対応させて頂きます。
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冬に気を付けたい病気
冬に起きやすい病気とは?
病気には、季節性のものと、そうでないものがあります。季節性とは、四季により病気が起きやすくなる傾向があることを指します。日本国内の死因として、1位にガン、2位に心疾患、3位に老衰、4位に脳血管疾患が挙げられます。この中でも、ガンは季節による死者数の変化はみられませんが、心疾患などの循環器疾患や脳血管疾患は、他の季節と比較し、冬の方が、死者数が多いことが統計の中で明らかになっています。
脳血管疾患では、特に、脳出血とくも膜下出血において、冬季に発症頻度が高い傾向にあります。脳梗塞は、特に年間を通して発症し、強く季節性を示していないのも特徴ですが、心疾患に伴い、リスクが高まる病型もあります。それは、心原性脳塞栓症と呼ばれ、冬場により多くみられる不整脈から生じるため、季節性が認められます。
冬の寒さに対して、引き起こされる心疾患は、代表的なものとして、心筋梗塞、心不全があげられます。他の季節に比べても1.5倍程増加するため、血圧管理や日常生活で、気を付けるべき点があります。
今回は、冬に起きやすい病気の特徴や発生機序から、気を付けるべき点を予防的観点から紹介させて頂きます。
冬になぜ、よく起こる?
冬は、なんといっても厳しい寒さから、血管が収縮し、血圧が高くなりやすく、脳血管疾患や心疾患の数が他の季節に比べて、多く起こります。
分かりやすい例として、冬場の血圧変動から引き起こやすい現象であるヒートショックがあげられます。みなさんも、この言葉を一度は聞いたことがあるかもしれません。ヒートショックの多発例としては、入浴時が挙げられます。居間で身体を暖めてから、寒い脱衣所や浴室にいくことで血管が収縮し、一気に血圧が上昇します。そこから熱い湯に、入り急激に血管を拡張させることで、血圧が低くなり、意識消失が浴槽内で起こってしまいます。意識消失からそのまま、溺れて死んでしまうことが、冬場特に多いです。逆の現象としても、入浴中、血管が広がり血圧低下した状態から、寒い脱衣所に移動することで、急激に血管収縮し、血圧が高くなる状態もあります。元々、基礎疾患として、高血圧をお持ちの方は、ヒートショックにより更に血圧が高くなり、脳出血や心筋梗塞などが引き起こされる頻度が高まってしまいます。このように寒暖差が強くヒートショックが起こる環境が、冬場は多いため、ヒートショックが起こらない環境を、つくっていくことが冬場の予防策として非常に大切になります。
高血圧性脳出血
脳卒中の中でも、脳梗塞に次いで発生頻度の高い病型として脳出血がありますが、動脈瘤破裂によるものや、高血圧により引き起こされるものなど、誘因は異なります。冬場の寒さから血圧があがり、それが脳出血の引き金となってしまっています。高血圧性脳出血は、季節問わず一年中、血圧管理などから気を付けたいですが、冬場の寒さから血圧の上昇は避けられず、出血を起こすリスクがどうしても高くなります。水分摂取など、その場のリスク回避もできますが、やはり日頃の食生活や服薬管理など、基本的な健康習慣を身に着けることが大切です。
心筋梗塞
狭心症や心筋梗塞は、心臓にある冠動脈が閉塞し、心機能の低下や、不整脈を引き起こします。もともと動脈硬化や、狭心症、心不全を持病としてお持ちの方は、とくにヒートショックなど、血圧に負担のかかる環境下では、負担が多くなります。冬季は特に、不整脈が起こりやすくなるため、心原性脳塞栓症が起こるリスクも高まります。
これらの季節的のある病気の特徴として、血圧に負担のかかる寒い環境にリスクが存在していることと、元々、高血圧や糖尿病、狭心症など、基礎疾患を持つ方々は特に、注意が必要な季節と言えます。
次は、基礎疾患をお持ちの方や、60歳以上の高齢者に向けて、冬の起こりやすい病気に対して、できることや予防策をご紹介させて頂きます。
冬の病気を予防するために
まずは、ヒートショックなど過度に血圧変動を生み出す環境に気を付けて下さい。
ヒートショックを防ぐ10箇条
1)冬場は脱衣室と浴室を暖かくしておく。
2)風呂の温度は38~40度と低めに設定。
3)入浴時間は短めに。
4)入浴前後にコップ一杯の水分を補給する。
5)高齢者や心臓病の方が入浴中は、家族が声を掛けチェック。
6)入浴前にアルコールは飲まない。
7)入浴前後の血圧チェック。(収縮期血圧が180mmHg以上または拡張期血圧が110mmHg以上ある場合は入浴を控える。)
8)ゆっくりお風呂から出る。浴槽から急に立ち上がらないように。
9)居間や浴室の温度をみえるようにする。
10)夕食や日没前の入浴。(午後2~4時ころがおすすめ)
リスクのある方は、上記のように工夫を凝らすことで、危険回避することもできますが、根本的に背負われているリスクに対しても改善が必要かもしれません。
生活習慣病の予防
以下の項目に当てはまる方は、冬場特に注意が必要です。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドローム、動脈硬化
高血圧の方は、医師から降圧剤の処方をもらい、血圧管理が大切です。食生活の中でも、塩分を控え、一汁三菜のバランスのとれた食生活を推奨します。食事に関しては、より細かく下記にて述べていきます。
重要な栄養素
次に、リハビリをより効果的に進めていくために、具体的にどの栄養素が必要でしょうか。
最近は、特定健康保険食品(トクホ)、機能性表示食品など、科学的な根拠に基づいた商品が多く出されるようになりました。他にもサプリメントなど、健康にまつわる多種多様な商品が出されていますが、基本的には、バランスの取れた適量の食事を摂るが一番大切です。
バランスが摂れた食事とは、「一汁三菜」のことを指します。主食の炭水化物、三種類のおかず、一つは主菜となるお肉や魚などのタンパク質、残りの二つ目は野菜となります。詳しくは、農林水産省に食事バランスガイドをご参照下さい。
食事バランスガイド(厚生労働省)
主食5~7V + 副菜5~6V + 主菜3~5V + 乳製品2V + 果物2V
上から主食である炭水化物、二つ目のおかずとしてサラダや、お浸し、煮物、三つ目にメインディッシュとなる肉や魚などのタンパク質が挙げられます。一日に必要な、割合が○Vで表示されており、代表的な栄養素が含まれる食材と、摂取すべき割合が示されています。
具体的な食事量カロリーは、先ほど述べたリハビリを通して目指すべき、体重の増減によります。あくまでも目安となりますが、年代別の平均消費カロリーは下の図の通りになります。具体的な、一つ一つの食事にかかるカロリー数は、文部科学省の日本食品標準成
分表をご参照下さい。(https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html)
●年代別平均消費カロリー(厚生労働省)
20代 1750~2300kcal
30~40代 1700~2250kcal
50~70代 1650~2050kcal
70歳以上 1350~1600kcal
特に、筋力強化には、肉や魚などのタンパク質が欠かせません。実際には、筋力がついてくるのは、リハビリを開始してから、8週〜12週かかると通例で言われています。 筋力強化や、動作練習をすることで筋の発火頻度(神経と筋の伝達)が向上し、2週間目でも向上がみられますが、純粋に筋肉が大きくなるのは2ヶ月以上を要します。
その過程でも、上記のエネルギー源となる炭水化物を摂り、運動量を挙げていくことと、2ヶ月の経過でタンパク質から、筋肥大を作っていく。
この基本的な、摂取と消費カロリーのバランスと、栄養素のバランスをとることが、リハビリを効果的に進めていくために欠かせません。
注意すべき食事
日本は、透析患者が他国と比較し、非常に多いことでも有名です。透析にいかないまでも、腎不全の予備軍は、8人に1人いるとも言われています。理由としては、背景に糖尿病や高血圧の人が多いという理由もあります。脳卒中の起こる前の予防から、再発予防、糖尿病などの生活習慣病を防ぐためにも、食事と運動は欠かせません。
では実際に注意すべき食事として、塩分過多な食事、食品添加物を多く含むファーストフード、または無機リンを多く含む麺類や加工食品などが挙げられます。もちろんお酒も含まれますが、特に塩分や脂が多い食事はご存知の通り、高コレステロール結晶、高血圧を引き起こし、脳卒中につながるリスクが非常に高いです。脳卒中後の再発を防ぐためにも、食事の管理は非常に大切です。
脳卒中を防ぐ栄養素
血圧を抑える、脳卒中のリスクを低下させる栄養素として、K、CA、Mgが効果的というデータがあります。日常的に消費される食品を上げると、牛乳やヨーグルトなどの乳製品が、脳卒中のリスクを抑えられるという結果があります。55〜68歳の3150人の中年日本人を対象とした調査では、牛乳を飲んでいない人は、2杯以上牛乳を飲んでいる人に比べて、2倍以上、脳卒中を経験しているという事実もあります 。中には、それぞれ運動習慣や、体重、脳血管疾患のある家族歴な様々な因子が背景としてありますが、日常生活で消費される食品に焦点を当てると、脳卒中のリスクを回避できる栄養素が存在します。他にも野菜や果物、海藻類に多く含まれるカリウムも、血圧を抑える、そして脳卒中のリスクを低下させる働きがあると言われています。カリウムの含有量が多い食材として、ほうれん草、アボガド、ごま、アーモンド、カシューナッツなどが挙げられます。
良い習慣を身に着けるために
色々と持病をお持ちの方や、日頃から予防の心がけをしている方はたくさんいらっしゃると思います。中には、食事や運動など、気を付けなくてはいけないとわかっていても、どうすればいいのかわからない。なかなか一人で管理することが難しいと感じている方もたくさんいらっしゃると思います。
リハビリベース国分寺では、脳血管疾患から、整形外科の術後、または予防目的まで、幅広い方々に通って頂いております。現在のお身体の悩みから、日頃の生活週間のサポートまで、携わらせて頂くことで、身体の好循環を生み出していきます。
リハビリでのお悩みや、運動、予防に関してのご相談があれば、お電話や体験にてご相談承っております。
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小脳出血 バランス機能を取り戻した20代男性
「小脳出血」、脳出血の中でも聞きなれない病名かも知れません。
この小脳という部位。日常生活で絶えず機能している、バランス機能に大きく関与しています。
むしろバランス機能を司っているといっても過言ではありません。
小脳出血は、脳出血の中でも10%にも満たない割合で起こります。割合は少ないですが、この小脳に障害を負うと、日常生活のあらゆる動作に大きな障害を来します。
後遺症としては、比較的身体は動かすことができますが、バランス障害や運動を滑らかに動かすことが困難となるケースが多いです。
今回は、小脳出血の後遺症の特徴から、大事なリハビリのポイントを初めに説明させて頂きます。後半には、当施設に通われていたご利用者様を通し、大きく改善された部分や、生活復帰を叶えた過程を紹介させて頂きます。
小脳は、脳幹の後ろに位置しています。図1のように、脳幹(中脳、橋、延髄)に隣接しており、それぞれ小脳と協同して働く連絡通路が存在します。
小脳は図2のように、大脳小脳、脊髄小脳、前庭小脳に区分されています。発生学的に、古い順番から古小脳(前庭小脳)、旧小脳(脊髄小脳)、新小脳(大脳小脳)という呼称もあります。
この小脳の中でも、出血の部位が異なることで、後遺症も変わってきます。
小脳の役割
小脳の代表的な働きとして、「協調運動」が挙げられます。
協調運動とは、相互に調整を保ちながら、複数の筋によって滑らか、かつ正確に運動することを言います。運動の中でも、動きを協調的に生み出している経路の一つとして、小脳は大きな役割を担っています。協調運動の代表的な検査として、図3の指鼻指試験があります。これは、自分の鼻と、相手の指や一点の標的に対して、指を往復させることで、動作の滑らかさと、標的に対して正確に到達しているかを、検査します。協調性が失われると、手のリーチがぎこちなくなる、標的に対し、大きくズレが生じてしまうといったことが見られます。日常生活では、水が入ったコップを掴み、口に運ぶ。物を棚の上に置く。脚に関して言えば、階段を円滑に登り降りができるといった動作も、協調運動が必要です。
より詳しくみてみると。。。
小脳の働きは、先ほどの小脳の区分にあったように大脳小脳、脊髄小脳、前庭小脳の3つに分けられます。
大脳小脳は、視床と橋を経由し、大脳に行く運動指令を、小脳にてコントロールしています。
次に脊髄小脳は、虫部と半球中間部からなり、体性感覚を統合し、脳幹へ伝達しています。また、小脳虫部は体幹の制御を、中間部は上下肢の制御を行っています。
三つ目の前庭小脳は、耳でとられたバランス等の情報を、脳幹の前庭神経核という部分に情報伝達しています。詳しくは、
脳血管リハビリテーション③でも述べた、耳の前庭感覚によるバランス情報も、小脳を経由し脳幹に集められています。外部からの情報は、視覚や体性感覚、前庭覚が、それぞれの受容器から情報入力されますが、それらの情報が脳の中心部に向かう経路や、情報を統合してまた身体へ送り出す経路は、たくさんあります。
失われた障害経路を特定し、得られやすい、または効果的な方法をリハビリの中で探っていくのも、一つの大事な行程になります。
小脳性運動失調に対してのリハビリ
一様に小脳の後遺症に対してのリハビリは、これが必要とは言いきれません。
脳出血によっては、小脳とまたがり脳幹の一部で侵襲が起こり、片麻痺を呈する場合もあります。まずは、脳画像により侵襲部位を確認することや、身体の症状として、随意性や協調性運動、痺れや感覚の検査を行い、障害部位を具体化していきます。それから、立ち上がりや立った姿勢、バランスの状態や、移乗などのステップ動作、歩行を観察し、総合的に評価していきます。
先程述べた、小脳性運動失調に対しては、失調部位を明らかにしてから、協調性の向上を図る動作も行いますが、個々の細かい筋肉を選択的に使う、そして強化するという行程を踏んでいきます。具体的には、寝返りや四つ這い運動、起立からリーチ動作など、体幹や四肢をより選択的に細かく動かすことで、失調に対し協調性を育んでいきます。座った姿勢や、立った姿勢に対しては、失調により上手くバランスが保てないことに対し、鏡を使用した視覚的情報による代償や、裸足で足底からの感覚を掴みやすくするなど、より本人に効果的に働く感覚入力を行っていきます。最後に、リハビリの中でも一番の量を取りたい動作は、歩行になります。歩行が生み出されるプロセスとしても、小脳は、小脳歩行誘発野と呼ばれる、歩行リズムの生成を担っており、無意識下での姿勢制御や、歩行での選択的な活動を総じて上向かせることができます。注意点としては、固定的な姿勢ではなく、より良い歩行の中で、量を生み出していくことが大切です。
質と量を重ねることで、効果的な学習効果をえることが出来ます。中には、歩行の不安定さが強く、歩行器や手すりを使用して、一時的な期間、日常生活を送ってもらうケースもあります。本来では、支持物はなく歩行改善を目指していきたいところですが、転倒のリスクや1人で行える環境も考慮し、歩行器を使用して歩行量を増やしていく手段も、最終的な目標達成には必要です。
小脳性運動失調
小脳の代表的な特徴である協調運動に関して述べましたが、特に脊髄小脳の役割である、筋緊張の調整は、リハビリを進めていく上で非常に大切な機能になります。脳卒中では、運動神経の経路が絶たれ、片麻痺の状態になるこが、非常に多いケースとしてあります。小脳に関しても、片側での麻痺が出るケースもありますが、随意性、筋出力は良好なことがあります。筋力は発揮でき身体は動かすことができるが、上手く調整して動かすことができないといった特徴が、小脳の後遺症にあります。この協調性のように、四肢や体幹の運動調整が失われ
ることを「失調」と言います。特に脊髄小脳では、脳出血や脳梗塞による侵襲部位により、体幹や上下肢のどこに強く失調の症状が出るか、ある程度定まってきます。
小脳性運動失調の特徴のもう一つとして、眼球運動や視覚的な情報が、失われやすいです。
これは、前庭小脳が、平衡や眼球運動を担っているため、眼球運動が直接的に障害されることもあれば、姿勢制御の中で協調運動が上手く行えずに、周囲へ向きづらくなるといった理由もあります。人は、無意識下、または予測的にバランスを保っていますが、小脳性運動失調がある場合は、身体が上手くコントールできずに”固定的”になってしまいます。固定的という現象は、具体的に一つ一つの筋肉が”選択的”に働かずに、粗大な筋肉を緊張させて姿勢をとるという現象です。
小脳性運動失調に特徴的な姿勢としては、腰や背中から頸部まで、一直線に固定される。身体を捻る回旋の動きや方向転換など、細かい動きが必要な動作に対して、非常に弱いとこも特徴の一つです。また頸部が固定的になることから、頭を回旋して周りを見回すような動きもしづらく、眼球運動の動かしやすさを阻害する悪循環が存在します。頸部から頭部の動き、または眼球運動は、関係性が強く、姿勢筋緊張に対しても、眼球運動への影響は大きい報告されています。
小脳の姿勢制御と、視覚的なバランス保持は、小脳性運動失調に対してのリハビリに、必要不可欠です。
リハビリベース国分寺でのアプローチ
【症例】
20代男性 小脳出血
【ライフゴール】
“バランスが取れるようになって、復職したい。”
【リハビリ期間】3ヶ月 16回プラン
【現病歴】
ある日突然、頭痛が強く起こり、救急搬送され、小脳出血の診断を受けました。出血量が多かったことから、2回の開頭術を施行し、2ヶ月の急性期病院を経たあとに、回復期病院へ転院となりました。6ヶ月の回復期退院後、他施設にて3ヶ月リハビリを行い、その後に当施設でリハビリ開始となりました。
【身体機能・参加】
小脳出血も、中央と左側の侵襲が強く、左上下肢の協調性低下、体幹の筋力低下がみられ、大股の歩行や左右の動揺が見られました。また運動時の回転性目眩、眼球運動障害、複視もあり、バランス機能は困難さが多く見られました。片脚や継足、方向転換時のふらつきがあり、自覚症状として小脳特有のバランスの取りづらさが強くありました。
【目標シート】
【リハビリ内容】
体幹トレーニング
体幹の協調性低下、筋力低下に対しては、寝返りやうつ伏せ、四つ這いなどベッド上でのトレーニングを中心に強化を図りました。特に小脳由来の体幹の失調に対しては、筋力をつけることもそうですが、より細かい、体を捻るなどの協調的な運動が行えるようにアプローチを行いました。
手足に関しても、緊張を取った後に、細かい関節の一つ一つの動きが滑らかに動かせるように、協調運動の練習を行なっていきました。
眼球運動エクササイズ
視覚は、特に左側に複視の症状がみられ、同時に左眼球の外側への動かしにくさがありました。複視や眼球運動障害に対しては、反射を利用した、眼球運動エクササイズを行いました。次第に左側への眼球運動は広がり、視野が広がりましたが、側方の複視は残存しピントが合いづらい部分が残存したため、今後も継続してトレーニングを行ってもらうかたちとなりました。
バランス練習
体幹から下肢の協調運動や、眼球運動から視野の改善を図った上で、複合的なバランス課題を、段階的に行っていきました。継足や、足を閉じた中でのバランス保持練習から、視覚を外し、無意識下でのバランス反応を養いました。小脳の障害は、特に無意識でのバランス制御が課題としてあるため、視覚を無くしたバランスへのアプローチは、とても効果的です。体幹から下肢の滑らかな動きを促すことで、前庭系で得られたバランスの情報を、円滑に手や足へ伝達し、バランスがしっかりと取れるようになります。逆に、裸足になり、足底から様々な感覚を入れ、バランスの反応を養う訓練もとても効果的です。様々な刺激や、バランス課題を、段階的に練習することで、バランスがどんな状況でも取れる自信をつけていきました。
回転性目眩に対してのアプローチ
小脳の前庭系経路の障害では、目眩やバランスの取りづらさが主訴としてあります。目眩の軽減に対しても、バランス動作や回転運動などの刺激を与えるとともに、バランス機能を養うことで、目眩が改善するエビデンスがあります。バランス課題の中で、視野を一周する、頭部の上下、回転運動を行い、目眩に対して我慢できる刺激や、バランス課題を行いました。次第に大きな視野の変化や、頭部の動きに対しても目眩が起こらずに動作が行える範囲が増えていきました。
屋外での動作、バランス確認
小脳の障害のお持ちの方は、お店や人混みでの移動など、様々なものに注意を向けながら歩くことが、とても難しく、体力のいる作業です。視覚や、前庭系のバランス、足の協調性が改善したところで、駅構内や階段、人混みなどの移動にて、動作や恐怖心を感じ、自信がない部分などは、屋外での課題を一緒に行わせて頂きました。やはり駅内での移動は、階段など人の流れの中で、必ずしも手すりなど使える環境ではないため、人の流れや少しの衝突に耐えうるバランス能力が必要です。その都度動作確認や、屋外での単独での活動にもチャレンジしてもらいながら、活動範囲を広げて行ってもらいました。
3ヶ月後、ライフゴール達成
目眩の改善、視野が広がったことと、歩行も大股歩きから、スムーズな歩きを獲得することができました。何より、屋外にて周囲を見ながら歩く、不整地や人混みでもバランスを取り、自信を持って歩くことが可能となりました。バランス課題もリハビリ内の応用的な課題も問題なく行え、ジャンプやランニング動作も獲得していきました。最後は、職場復帰の時期が決まり、それまでにスポーツやフィットネストレーニングなど、より応用的な運動を行って頂き、当施設でのリハビリは卒業する流れとなりました。
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くも膜下出血 水頭症合併 ~歩行獲得までの道のり~
今回は、脳卒中のあらゆる病型の中でも、くも膜下出血について、病型と後遺症につい述べていきます。
また、後半は当施設に通われている、くも膜下出血を呈した方に対してのリハビリを紹介させて頂きます。
くも膜下出血とは?
くも膜下出血は、血管が破れ、脳が覆われているくも膜の内側に、血液がたまり、引き起こされる脳血管疾患の一種です。脳皮質内で引き起こされる、頻度が高い被殻出血や、視床出血とは異なり、脳細胞へのダメージというより、脳が圧迫されることで、歩行や意識障害などの後遺症が引き起こされる病型です。下図のように、出血により血が溜まる部分が異なり、脳卒中の中でも、病型により、症状や予後は様々です。
くも膜下出血は、脳卒中の中でも、1割を占める病型になります。発症頻度としては、男性は50代、女性は60代でピークを示し、60歳以降で女性が占める割合が増えてきます1)。病型として割合は低いものの、予後としては25%以上の割合で予後不良というデータがあり、脳卒中の中でも、重症化しやすい病型と言えます2)。後遺症は、他の病型と比べ、片麻痺などの身体が動かしづらくなる運動麻痺ではなく、意識障害や歩行障害を呈するのが特徴です。
図1:脳卒中の発生機序
重症度や予後の決め手
年々、死亡率から受傷者率は、減少傾向にあり、発症から救急にて搬送されるスピードや、クリッピングなど手術の充実性が減少傾向に働いています。くも膜下出血の多くは、脳動脈瘤破裂により、脳全体に多量の出血が広がります。そのため、救命や重症度を軽くするためには、出血後の時間が勝負となります。
図2のように、くも膜下出血後の処置は、以下の割合を示します。初めに出血後、開頭や内視鏡手術を行わずに、経過をみることを保存と言います。次に動脈瘤に対しての処置は、コイルやクリッピングと呼ばれる処置があります。コイルは動脈瘤の中を詰めていくことで、動脈瘤のふくらみの部分に血流がないように遮断します。クリッピングは、動脈瘤の手前を、袋を閉じるようにクリップで止める術式になります。ドレナージとは、くも膜下出血の急性水頭症を引き起こさないためにも非常に大切な処置になります。脳内の出血量が多いと、脳室の拡大も認められ、水頭症を合併するケースがあるからです。
大まかな予後予測になりますが、予後良好は58%、著しい予後不良は28%と全国をみてもこのような割合を示します1)。この著しい予後不良の中でも、正常圧水頭症を合併しているケースが多いです。
クリッピング
コイル
この先は、当施設に通って頂いているくも膜下出血術後、水頭症を合併した方の、リハビリ過程をご紹介します。
【症例】50代男性 くも膜下出血後遺症 正常圧水頭症合併
【ライフゴール】外で歩けるようになりたい。
【リハビリ期間】再手術の期間を入れ1年 24回プラン × 2
【現病歴】
くも膜下出血呈し、開頭術施行。その後、6カ月の回復期病院の入院期間を経て、当施設にてリハビリを継続。リハビリ開始から3か月経過し、正常圧水頭症と脳内血管のバイパス手術のため、再手術となる。その後自宅退院し、状態が安定し、再度当施設にてリハビリ再開となる。
【身体機能・参加】
リハビリ開始時は、車いす移動でした。前傾姿勢が強く、倒れないように多くの介助が必要で、初めは10m程度の屋内歩行がやっとな状態でした。水頭症を合併し、覚醒や注意など高次脳機能障害もあり、発語も乏しかったです。歩行障害が残存し、予後不良との診断の中でしたが、運動量を多く取り、介助下でしたが最大300m程度屋外での歩行が行えるようになりました。その後、水頭症の経過が変わらないため、再手術を行い、回復を待って、当施設にてリハビリ継続となりました。
【ライフゴール達成】
現在は、屋外歩行見守りで、最大1km程度、目標を達成してきました。これからは、さらに歩行量を延ばしていくことと、単独へ安定した歩行が行えるように、もう1回継続してリハビリ行っていきます。諦めずに、目の前の課題を一つずつクリアし、より高い目標を目指していきます。
【Before & After動画】
リハビリベースメソッド体験
脳卒中の後遺症に対して改善を図ることは、リハビリの即時的な効果も得られますが、生活の再獲得を図るには、長期戦となります。一度、リハビリベースにて体験をして、後遺症に打ち勝つリハビリをしてみませんか?
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