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IVESを使用したリハビリの実際

はじめに

当院では歩行能力の向上を目的にも電気治療を積極的に行っております。

電気治療には随意運動介助型電気刺激IVES®を使用しております。

IVESとは、患者の随意運動を検知し、それに応じた電気刺激を筋に与えることで運動を補助するリハビリテーション機器です。1)

特に、脳卒中や脊髄損傷後の麻痺患者に対する歩行訓練に有効とされています。
IVESの使用目的や効果は以前当院のブログにて紹介していますのでご参照下さい。
 https://reha-base.com/blog/article.html?page=162

2、歩行練習

今回は当院にてivesのセンサートリガーモードを使用し歩行が改善した実例を紹介します。

センサートリガーモードとは、踵に装着した歩行センサにより電気刺激のON/OFFを制御し、踵が床から離れたタイミングで電気刺激がONとなり、歩行時の足関節背屈(つま先が上に向く動き)をサポートします。
ほ
OG技研HPより引用
足を前に振り出す際に、足関節背屈の動きが困難となり、課題として残る事が多々あります。センサートリガーモードを用いて歩行練習を行うことで、背屈の動きが補助され振り出しやすくなり、繰り返し練習することで運動学習として徐々に習得されていきます。
実施の訓練映像
文献にて脳出血後の麻痺に対してIVES使用後,下肢装具なしで歩行自立を獲得した症例報告があります。2)
また、センサートリガーモードを使用し、歩行補助具を使用せず歩行が自立し、歩行速度や耐久性が改善した報告もあります。3)
Before After
映像からも左(麻痺側)のつま先が比較的真っ直ぐ出るようになり、歩行速度が改善していることが分かります。
こちらのご利用者様は、元々は杖をついて歩かれていましたが、徐々に身体機能が改善し杖無しで歩けるようになりました。そして、復職や韓国旅行に行けるまでに回復されました。

おわりに

今回はIVESを使用した改善例を紹介させて頂きました。発症して間もない場合でも、発症から時間が経っているとしても、新たな刺激を入れることで身体機能が改善する可能性は大いにあります。興味がある方は是非お問合せください!

参考文献

1) OG技研HPより引用
2) 前脛骨筋に対してIVES使用後,下肢装具なしで歩行自立を獲得した脳卒中片麻痺者の一症例. 関東甲信越ブロック理学療法士学会 42 (0), O-001-, 2023社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
3)ivesを使用した症例の報告−スモン患者への適応にための予備的研究−.厚生労働省研究データベース

60代男性脳梗塞後遺症 ~歩行改善の為のリハビリ~

脳梗塞の3種類

脳梗塞の発生機序は以下の3つに分類されます

アテローム血栓性脳梗塞

➁ラクナ梗塞

➂心原性脳塞栓症

脳卒中の病型の中でも、以下の図のように、脳梗塞が占める割合は全体の中で多いです。
 
 
 
 
➀アテローム血栓性脳梗塞

初めに脳梗塞の発生機序には、2種類あります。1つ目は、動脈硬化により血管内が細くなる「脳血栓」と、心臓でできた血栓が脳血管につまってしまう「脳塞栓」があります。

アテローム血栓性脳梗塞は、はじめに脳血管内の動脈硬化により起こります。血管にコレステロールなどの塊が、プラークとして血管内にでき、血管の通り道が狭くなることで、動脈硬化が起こります。そこに加えて血栓が詰まることで、閉塞が起こります。

原因としては、高血圧や喫煙、過度な飲酒、高脂血症といった、生活習慣病から引き起こされます。脳梗塞の予防や、再発を防ぐためにも、生活習慣の改善が必要です。薬物療法としては、血栓をおさえる薬(抗血栓薬)や、血圧上昇を抑える薬(降圧剤)などが用いられます。

症状としては、安静時に起きることが多く、睡眠中に起こり、起床時に気づくといった流れが多くみられます。前兆として、一過性脳虚血(TIA)による、脱力や痺れ、筋肉の緊張などの症状を見逃さないことが、脳梗塞を防ぐために必要です。

特に発症から4~5時間以内であれば、血栓を溶かすt-PA(血栓溶解剤)を打ち、脳梗塞側が生じた部位の血管の流れを回復することができるため、後遺症も早い段階で少なくすることが可能です。
 
 
 
 
➁ラクナ梗塞

ラクナ梗塞とは、細い血管内に15mm以内の小さな脳梗塞が起こることを指します。

アテロームと比較し、小さな血管で引き起こされるため、比較的、小規模な脳梗塞となります。特徴して、高齢者や高血圧の方に多くみられ、特に高齢者においては、筋力低下やその他疾患に隠れて気づきにくいケースでも多いです。

小さい血管で生じる梗塞のため、意識障害が起こることはないですが、片側の脱力や痺れ、しゃべりにさ(構音障害)などの症状がみられます。この病型も同様に、異変があれば早期発見と早期治療が、予後の決め手として大切な部分になってきます。

アテローム血栓性脳梗塞と同様に、生活習慣を改善し、予防することが大切です。こちらも手術ではなく、薬物療法など内科的な治療が主な対応となります。
 
 
 
 
➂心原性脳塞栓症

心原性能塞栓症とは、心臓にできた血栓が脳に運ばれ、脳血管を詰まらせる病気です。ラクナ梗塞と比較し、より大きな脳部位に血液を供給している、大きな血管で梗塞が起こります。

アテローム脳梗塞とは異なり、動脈硬化などの前兆もなく、順調であった血管の流れが、急に血栓により閉塞されるため「ノックアウト型脳梗塞」と呼ばれています。

心原性脳塞栓症の場合、60歳以降で年代別に急増し、80歳以降は30%と起こる頻度が高くなっています。具体的な心疾患として、9割以上が心房細動と呼ばれる不整脈から起因し、心臓の老化に伴い増加する、脳卒中の代表的なタイプになります。

心原性脳塞栓症の特徴として、重症度が比較的高く、多く介護を要する傾向にあります。症状として、片麻痺や失語、意識障害が挙げられます。

大きな後遺症にならないように、早期発見と、梗塞部位の特定から、素早い処置を行うことで、後遺症の軽減を図ることができます。

素早い処置とは、t-PA(血栓溶解剤)を使用した血栓の溶解や、ある程度太い動脈では、カテーテル治療(血栓回収療法)を行うことで、脳組織への血液供給を早めることで、後遺症を少なくすることが出来ます。
 
 

60代男性 脳梗塞後遺症 ~歩行改善のためにリハビリ~

【ご利用者様】60代男性 脳梗塞後遺症

【ライフゴール】肩の痛みを取って生活したい。円滑に歩けるようになりたい。

【リハビリ期間】24回プラン

【現病歴】右上下肢の脱力と構音障害認め、救急搬送。左前頭葉梗塞、右片麻痺を呈し、保存的加療で経過。回復期にて約4カ月入院し、退院後当施設でリハビリ継続となりました。

【身体機能・参加】
右上肢の麻痺は重度、下肢の麻痺は、中等度レベルでした。右下肢は、金属支柱付き短下肢装具を付けて、屋外歩行は自立していました。
主訴として、右肩の痛みが強くあり、亜脱臼と肩関節周囲の筋緊張が高くみられました。右下肢は、特に足首の筋緊張が高く、装具での強い矯正が必要でした。

【リハビリ内容】
肩の痛みに対し、肩関節周囲の筋緊張緩和と、可動域拡大を図っていきました。可動域を広げ、促通を行うことで、肩関節周囲の筋活動を引き出していきました。痛みの原因は、後遺症による筋緊張や、上手く肩の保持や動作が行えないことから生じるため、可動域の拡大や筋活動を上げていくことで、疼痛が消失していきました。
 下肢は、痙性に対して、ストレッチングや電気刺激を行いました。動作の中でも、相反抑制を行いながら、麻痺の改善を図っていきました。麻痺の筋緊張を緩和していくことと、随意性を引き出していくことで、装具に依存する下肢から、裸足でも歩行が可能なレベルまで、麻痺を改善していきました。
 上肢の姿勢と、下肢の麻痺の改善を図ることで、歩容改善と歩行スピードを格段に上げることが出来ました。

【歩行Before & After動画】

40代女性 脳梗塞後遺症 ~主婦業復帰+復職~

 
 
【ご利用者様】40代女性 脳梗塞 後遺症

【ライフゴール】痛みをとって主婦業へ復帰。長距離の屋外歩行獲得後、復職。

【リハビリ期間】16回 プラン 4か月 + 8回プラン 定期利用

【現病歴】
脳梗塞、左片麻痺を呈し、救急搬送。急性期病院から回復期へ転院した時も、麻痺は中等度レベルで、初めは車いす生活でした。回復期病院にて3か月程度で、ふらつきながらも、T字杖歩行が獲得された為、自宅退院となりました。

【身体機能・参加】
麻痺の状態は、下肢に軽度、上肢に中等度あり、特に肩に強い痛みがありました。生活は、麻痺の左手側が動かせないため、右手のみでの生活でした。屋外歩行でも、肩に強い痛みがあり、恐怖心がありました。高次脳機能障害は、軽度の構音障害と、左半側空間無視がみられました。

【リハビリ内容と経過】
 
 
リハビリ内容は上記の流れのように行い、まずは目標である家事動作の復帰と、その後は、復職を段階的に果たしていきました。

主訴として、肩の痛みが挙げられたため、初めは肩を中心に介入を行いました。

麻痺の影響で動かせないことと、誤った動かし方から、肩関節周囲の筋緊張が高く、可動域制限が大きくありました。

可動域拡大とともに、痛みは消えていき、少しずつ動作練習や筋力強化を図っていきました。

リハビリで動作練習を行うことと、日常生活で麻痺側を参加させることで、麻痺の改善に対し、相乗効果をもたらしました。

痛みを取り除くことで、日常生活でも参加しやすくなり、段階的に主婦業への復帰も果たしていきました。

生活復帰までには、復職が必要なケースでした。
 
日常生活動作、主婦業をこなすことが出来たものの、復職となると通勤動作や、より細かい手の動作、注意や集中力も必要となってきます。
 
さらに負荷量をあげたトレーニングや、難易度の高い課題をこなすことで、必要な動作や、持久力をつけていきました。

リハビリと同時に、就職活動を行い、麻痺の後遺症と上手く付き合うことができる仕事をみつけ、無事に復職を果たすことが出来ました。

【上肢 Before & After動画】
 
 

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高次脳機能障害の克服②

高次脳機能障害の克服

今回のブログでは、脳梗塞や脳外傷後に生じやすい注意障害に対し、種類や特徴、そして症状を改善させる取り組みを述べていきます。
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注意障害とは

高次脳機能障害①で挙げた症状の中でも、上位に挙げられるのが、注意障害です。注意障害によって引き起こされる症状は、4種類に大きく分けられます。

①持続性(sustained)
②選択性 (selective)
③転換性 (alternating)
④分配性 (divided)


①の持続性は、一定時間、集中して作業を続ける機能です。持続性の低下が認められる場合は「疲れやすく、同じ作業に注意を向け続けることが困難である」「集中して継続することが困難である」といった症状がみられます。

②の選択性は、目の前にある多くの情報から選択して、注意を向ける機能です。選択性の低下がみられると、「周囲の音や人に注意がいってしまい、行うべき作業を、集中して行うことができない」といった症状がみられます。

③の転換性は、一つのことに集中していても、別のことに気づき、注意を切り替えることができる機能です。注意の転換が困難な場合、例えば「一つの作業を行っているところに、電話がかかって来ても気づけない」といった症状がみられます。

④の分配性は、一つのことだけでなく、二つ以上の物事に注意を配る機能です。二重課題を同時進行で行うことができない場合、注意の分配が行えていないと言えます。困難な場面としては「転ばないように気をつけて歩くことに精一杯で、隣にいる人と会話ができない」のような例があります。


注意障害の評価

脳梗塞の急性期における注意障害は、意識レベルの改善とともに、同じく改善されることが多いです1)。注意障害の評価は、机上での検査や、行動評価など、各評価バッテリーの点数を使用することで、より客観的に経過を追うことが可能です。

また、実際の生活場面で、出来るようになったことを増やすといった経過評価を行うことも可能です。代表的な検査は以下の通りです。

机上での検査
・標準注意検査法(CAT : Clinical Assessment for Attention)
・TMT(Trail Making Test) 【図1】

行動評価
・RSAB(Rating Scale of Attention Behaviors)
・BBAD(Behavior Assessment of Attention Disturbance)  【図2】

図1: TMT(Trail Making Test) Part A, Part B
図2: BAAD(Behavioral Assessment for Attention Disturbance)の内容と採点
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注意障害のアプローチ

各注意障害に対してのアプローチ方法は以下のような形になります。

①持続性低下
課題の難易度調整を行い、持続可能な時間を延長していきます。例えば上肢機能の課題として、積み木やビー玉の移動など、同じ動作を繰り返し行ってもらい、実際の動作スピードや課題に要した時間など、集中して行えている内容にも評価を行いながら、持続性注意の向上を図っていきます。

②選択性低下
①の持続性低下のアプローチと重なる部分もありますが、目の前の注力していること以外に、外部の刺激に紛らわされることなく、集中して継続を行わせます。これも課題の難易度調整と、課題を最後まで終えられまで、質的・量的な評価を行います。

③、④転換・分配性低下
この二つの注意機能は、対策として重なる部分が多いです。一つのことに注力することなく、他方への注意へ転換すること、または同時進行にて、二つ以上の課題に対し注意を配ることが必要です。
例えば、屋外歩行によって、進行方向への注意のみでなく、帯同する人とお話をしたり、対人や向かいからの車に注意を向けるなどの、転換から分配の難易度の高い注意機能を求めていきます。
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リハビリベース国分寺での取り組み

リハビリベース国分寺で注意障害に対してアプローチする際には、脳画像から起こりうる障害の予測などを行い、利用者様やご家族様への生活場面に対してのインタビューと、実際の身体機能の評価を照らし合わせることによって、細かく症状を評価、分析していきます。身体機能の評価に関しては、具体的には、バランスや眼球運動、実際のリハビリ課題下での注意評価があげられます。
リハビリの内容に関しては、リハビリベース国分寺では、一回の訓練を90分に設定しています。この90分の中で、理学療法士による徒手としゅ的な治療と、難易度を徐々にあげながらの動作訓練を中心に行っていきます。90分は集中できる持続的注意としても、難易度の高い時間ですが、ご利用者様ひとりひとりに合わせて難易度を調整することで、可能な注意課題の幅を、少しずつ増やしていきます。


リハビリによって実感できる変化は人によって異なりますが、例えば、自宅内で「自発的な活動が増える」「会話が多くなる」「周囲の変化に気づきやすくなる」といったことがあげられます。

屋外での活動は、自宅内の活動と比較すると、情報量の多さや注意課題の難易度が大きく変わってきます。それぞれの移動形態や歩行レベルにもよりますが、「移動すること」「人や車に対して道を譲る」「避ける」「周りを見てバランスを取りながら歩く」など、難易度が高いものとなってきます。

高次脳機能障害を持つ方にとって、屋外での活動は大きなハードルとなることもありますが、同時に、外へ出る楽しさを感じられるようになって、目標を達成する上で、大きな分岐点になることもあります。
リハビリベース国分寺では、高次脳機能障害をお持ちの方に対しても、現状の身体機能の評価やご本人との対話を多く持つことによって目標を共有し、実際にできる活動を増やしていきます。リハビリを受けられる日数などに制限がある保険適用リハビリでなく、自費で行うリハビリのため、ひとりひとりのお悩みや目標に寄り添うことが可能です。

『50代男性 脳出血後、復職への道のり』
こちらでは、屋外歩行と復職を目標とされた方のリハビリをご紹介しております。当施設でのリハビリの流れが分かる内容となっておりますので、ぜひ、こちらもご覧ください。


【引用文献】
1) 豊倉穣.(2008). 注意障害の臨床. 高次脳研究28(3):320~328.
2023年4月6日作成
2024年4月13日編集

高次脳機能障害の克服

脳梗塞や、脳外傷後に生じやすい注意障害に対し、種類や特徴、そして症状を改善させる取り組みを述べていきます。
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注意障害とは

高次脳機能障害①で挙げられた症状の中でも、上位に挙げられるのが、注意障害です。
注意障害とは、どのような症状があり、日常生活において、どのような支障を来してしまうのでしょうか。
注意障害は、大きく分けて、代表的なものが4種類挙げられます。

①持続性 (sustained)
②選択性 (selective)
③転換性 (alternating)
④分配性 (divided)


①の持続性は、一定時間、集中して作業を続けることができる注意機能です。低下が認められる場合として、疲れやすく同じ作業に注意をむき続けることが困難であることや、集中して継続することが困難な状態がみられます。

②の選択性は、目の前にある多くの情報から、選択して注意を向ける機能です。低下がみられると、周囲の音や人に注意がいってしまい、行うべき作業を集中して行うことができない、といった症状がみらます。

③の転換性は、一つの注意に集中しているところ、別のことに気づき注意を切り替えることができる機能です。注意の転換が困難な場合の例としては、一つの作業を行っているところ、電話がかかって来ても気づけない、といった症状がみられます。

④の分配性は、一つのことだけでなく、二つ以上の物事にも注意を配る機能です。困難な場面として、転ばないように気をつけて歩くことに精一杯で、隣にいる人と会話ができないと言ったことが見受けられます。このような二重課題を同時進行が行えない場合に、注意の分配が行えていないと言えます。
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注意障害へのアプローチ

脳梗塞の急性期における注意障害は、意識レベルの改善とともに、同じく改善されることが多いです1)。注意障害の評価は、机上での検査や、行動評価など、各評価バッテリーの点数を使用することで、より客観的に経過を追うことが可能です。また実際の生活場面で、出来る様になったことを増やすといった経過評価を行うことも可能です。机上の検査で代表的なものとしては、標準注意検査法(CAT : Clinical Assessment for Attention)、図1のTMT(Trail Making Test)があり、行動評価としては、RSAB(Rating Scale of Attention Behaviors)、図2のBBAD(Behavior Assessment of Attention Disturbance)が代表的なものとして挙げまれます。
図1: TMT(Trail Making Test) Part A, Part B
図2: BAAD(Behavioral Assessment for Attention Disturbance)の内容と採点
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各注意障害に対しての、アプローチ方法を以下に述べていきます。
①持続性低下
→課題の難易度調整を行い、持続可能な時間を延長していく。例えば上肢機能の課題として、積み木やビー玉の移動など、同じ動作を繰り返し行ってもらい、実際の動作スピードや課題に要した時間など、集中して行えている内容にも評価を行いながら、持続性注意の向上を図っていきます。

②選択性低下
→①の持続性低下のアプローチと重なる部分もありますが、目の前の注力していること以外に、外部の刺激に紛らわされることなく、集中して継続を行わせる。これも課題の難易度調整と、課題を最後まで終えられまで、質的・量的な評価を行います。

③、④転換・分配性低下
→この二つの注意機能は、対策として重なる部分が多いです。一つのことに注力することなく、他方への注意へ転換すること、または同時進行にて、二つ以上の課題に対し注意を配ることが必要です。屋外歩行など、進行方向への注意のみでなく、帯同する人とお話をしたり、対人や向かいからの車に注意を向けるなどの転換から分配の難易度の高い注意機能を屋外では求めていきます。
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リハビリベース国分寺での取り組み

リハビリベース国分寺で行う、注意障害に対してのプロセスとしては、脳画像から起こりうる障害を予測します。
また実際の評価では、利用者様やご家族からの生活場面に対してのインタビューと、実際の身体機能の評価を照らし合わせることで、細かく症状を評価、分析していきます。
具体的には、身体機能としてバランス、眼球運動、実際のリハビリ課題下での注意評価が挙げられます。
リハビリベース国分寺の特徴として、一回の訓練は90分と、集中できる持続的注意としても、難易度の高い時間を設定しています。90分の中で、理学療法士による徒手的な治療もそうですが、残りの時間は難易度を徐々に上げての動作訓練を中心に行っていきます。ご利用者様に対して、難易度を調整することで、可能な注意課題の幅を少しずつ増やしていきます。

自宅内での変化としては、自発的な活動が増える、会話が多くなる、周囲の変化に気づきやすくなるといったことが挙げられます。注意障害という点で屋外での活動は、自宅内の活動と比較し、情報量の多さや注意課題の難易度が大きく変わってきます。

屋外では、それぞれの移動形態や、歩行レベルにもよりますが、移動をすることと、対人や車に対して道を譲る、避けるや、周りを見てバランスを取りながら歩くなど、難易度が高いものとなってきます。
 高次脳機能障害を持つ方にとっては、屋外での活動は大きなハードルとなることもありますが、同時に外へ出る楽しさや、目標を達成する上で大きな分岐点になることもあります。
 
 リハビリベース国分寺では、そんな高次脳機能障害をお持ちの方に対しても、現状の身体機能から、ご本人と対話を多く持つことで、目標を共有し実際のできる活動を増やしていきます。次回は、注意障害とバランスに関して詳しく述べていきます。

【引用文献】
1) 豊倉穣.(2008). 注意障害の臨床. 高次脳研究28(3):320~328.

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高次脳機能障害の克服➀

症状の内訳

高次脳機能障害」と一口に言っても、脳の損傷部位により症状は様々です。身体の麻痺の状態や障害の種類によっても、実際の生活場面で行える動作や活動は、大きく変わってきます。
実際の内訳として、どんな特徴や症状があるのか、解説いたします。

東京都の1年間における高次脳機能障害の発生数は、49,508人(男性:33,936、女性:15,572)と、男性が女性に対し約2倍の割合となっています 1) 。

原因疾患としては、脳血管障害が全体の81.6%と大半を占めています。

高次脳機能障害の大まかな分類としましては、下記の障害が挙げられます。
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1 注意障害
2 遂行機能障害
3 記憶障害
4 失語症
5 半側空間無視
6 地誌的障害
7 失認証
8 半側身体失認
9 失行症
10 行動と感情の障害
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行動と感情の障害

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上記のグラフを見ると、「行動と感情の障害」、「記憶障害」、「注意障害」、「失語症」、といった障害が、多くの割合を占めています。
一番割合が高い症状として挙げられる、「行動と感情の障害」では、日常生活に対し意欲がわかない、落ち込みやすい、感情がコントロール出来ないといったメンタル面での障害が多くみられます1)。

脳血管疾患の方は、特に麻痺の後遺症から、術前と比較して出来ないことに対し落ち込むことや、思うように体が動かずに、苛立ちや焦りを覚えることがあります。そのため、日常生活の中でさらに消極的になってしまい、リハビリの意欲が低下するといった悪循環が起こることも、珍しくありません。
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リハビリベース国分寺の取り組み

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リハビリベース国分寺では第一に、運動量を多くとることで、脳の血流量を圧倒的にあげ、麻痺の後遺症のある手足の使用頻度を上げることで、随意運動ずいいうんどう(自らの力で動かす運動)の向上を図ります。2)

そして、一つの動作をただ繰り返すのではなく、その方が目標とする動作や好きなこと、得意なことも踏まえてより学習効果を高めていくのが、リハビリベース国分寺での機能改善の秘訣です。

目標設定が高すぎてしまったり、思ったより回復しないという苛立ちがあると、落ち込みや学習効果の低下につながってしまいます。

大切なのは、自己効力感やモチベーションの向上につながり、「行動と感情の障害」に対して解決の流れを作り出す好循環を生み出すことです。リハビリベース国分寺では、動作などの難易度調整をしながら、一つ一つ成功体験を積み重ねていただくことによって、「行動と感情の障害」に対し、改善を図っていきます。

また、そういった好循環を維持していくには、周りのご家族の理解や支えも必要になります。そのため、リハビリベース国分寺では、ご利用者様とご家族様との対話も大事にしています。
リハビリベース国分寺では、必要があれば理学療法士がご自宅まで訪問し、実際の生活状況の中で、動作や環境調整を提案いたします。これによって、できる生活動作を広げていきます。
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細かい評価(脳画像と実際の症状)

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脳の障害部位として、右脳と左脳のそれぞれの部位から、起こる高次脳機能障害がおおよそ決まってきます。
今回のトピックで挙げた感情のコントロールという部分で言えば、「うつ」や「不安」といった症状は、右脳と比べ、左脳の障害で出現することが多いです3)。
左脳の障害は他に、言語野がほとんどの人に存在することから、失語症が代表的なものとして挙げられます。

リハビリベース国分寺に通って頂いている方の中には、運動量を増やすことで発語のバリエーションが増加したり、日常生活動作の成功体験から、リハビリにより意欲的に取り組むことができるといった変化を感じた方もいらっしゃいます。

脳画像から、実際の生活状況や症状と照らし合わせ、細かい評価から解決策を一緒に話し合っていくこともできます。
当院では、いきなりの契約は不安という方にも安心していただけるよう、体験リハビリを行っております。当院への来院が初めてという方のみに提供させていただいている貴重な機会となっておりますので、お気軽にご要望をお伝えください。


さらに、高次脳機能障害の克服②では、行動と感情の障害と同じく、高次脳機能障害の症状として多い「注意障害」について詳しく解説しております。ぜひ、こちらもご覧ください。


【引用文献】
1) 東京都福祉保健局.(2008).高次脳機能障害実態調査 
2) Nudo, R.J, et al. (1996). Neural substrates for effects of rehabilitative training on motor recovery after
ischemic infract.
3) 小浜尚也、種村純. (2019). 脳損傷における感情表出の損傷半球別検討. 高次脳機能研究. 第39巻第2
号.
2023年3月4日作成
2024年4月13日編集

症状の内訳

高次脳機能障害といっても、脳の損傷部位により症状は様々です。身体の麻痺の状態に加え、高次脳機
能障害の種類によって、実際の生活場面で行える動作や活動は、大きく変わってきます。
実際の内訳として、どんな特徴や症状があるのでしょうか。
東京都の1年間における高次脳機能障害の発生数は、49,508人(男性:33,936、女性:15,572)と、男性が女性に対し約2倍の割合となっています 1) 。
原因疾患としては、脳血管障害が全体の81.6%と大半を占めています。
高次脳機能障の大まかな分類としましては、下記の障害が挙げられます。
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1 注意障害
2 遂行機能障害
3 記憶障害
4 失語症
5 半側空間無視
6 地誌的障害
7 失認証
8 半側身体失認
9 失行症
10 行動と感情の障害
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感情と行動の障害

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「行動と感情の障害」、「記憶障害」、「失語症」、「注意障害」といった障害が、多くの割合を占めています。一番の割合として挙げられる行動と感情の障害では、日常生活に対し意欲がわかない、落ち込みやすい、感情がコントロール出来ないといったメンタル面での障害が多くみられます1)。
脳血管疾患の方は、特に麻痺の後遺症から、術前と比較し出来ないことに対し、落ち込むことや、思うように身体が動かないことから、より苛立ちや焦りが増し、日常生活の中で消極的になってしまうと言った悪循環が多く見受けられます。
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リハビリベース国分寺の取り組み

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第一に運動量を多くとることで、脳の血流量を圧倒的にあげ、麻痺の後遺症のある手脚の使用頻度を上げることで、随意運動(自らの力で動かす運動)の向上を図ります2)。また動作一つひとつを繰り返すのではなく、その方にあった目標とする動作や、好きなこと、得意なことも踏まえてより学習効果を高めていくのが、リハビリベース国分寺での機能改善の秘訣です。

目標設定が高すぎてしまうことや、思ったより回復しないといった苛立ちがあると、落ち込みや学習効果の低下につながるため、難易度調整をしながら、一つひとつの成功体験を共に共有させてもらうことで、高次脳機能障害の半分を占める、感情と行動の障害に対し改善を図っていきます。

そのためにも、周りのご家族の理解や支えが必要なため、リハビリベースではご利用者様とご家族様との対話を大事にしています。
必要であれば、ご自宅まで脚を運ばせて頂き、実際の生活状況の中で、動作や必要であれば環境調整を提案させて頂き、できる生活動作を広げていきます。

一つひとつの動作や成功体験を重ねることで、自己効力感やモチベーションの向上に繋がり、感情と行動の障害に対して、解決の流れを作り出す好循環を生み出すことができます。
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細かい評価(脳画像と実際の症状)

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脳の障害部位として、右脳と左脳のそれぞれの部位から、起こる高次脳機能障害がおおよそ決まってきます。
今回のトピックで挙げられた感情のコントロールという部分では、「うつ」や「不安」といった症状は、右脳と比べ左脳の障害で出現することが多いです3)。
左脳の障害としては、他に言語野がほとんどの人に存在することから失語症が代表的なものとして挙げられます。
リハビリベース国分寺に通って頂いている方の中には、運動量を増やすことで、発語のバリエーションが増えることや、日常生活動作の成功体験から、より意欲的に取り組まれるといった変化がみられてきます。脳画像から、実際の生活状況や症状と照らし合わせ、細かい評価から解決策を一緒に話し合っていきます。
【引用文献】
1) 東京都福祉保健局.(2008).高次脳機能障害実態調査 
2) Nudo, R.J, et al. (1996). Neural substrates for effects of rehabilitative training on motor recovery after
ischemic infract.
3) 小浜尚也、種村純. (2019). 脳損傷における感情表出の損傷半球別検討. 高次脳機能研究. 第39巻第2
号.

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50代男性 被殻出血後遺症  ~復職に向けた歩行改善~

被殻出血とは?

被殻とは、脳の深部、大脳基底核と呼ばれる部位にあり、左右対称に両脳に存在します。近いところでは、視床があります。

脳卒中データバンクによると、脳出血の割合は全体の17%を占めます。脳出血部位の割合は、被殻(29%)視床(26%)という順番になっており、どちらも脳出血として起こる、多い割合を占めています。

中大脳動脈は、脳の側方を流れ、そこから細かい分岐した血管が破裂することで、被殻や視床部位に出血が起こります。この血種の大きさや、被殻、視床の部位により、予後はある程度決まってきます。
 
 

被殻出血の特徴

左右対称に、両脳にある被殻は、脳出血がどちらかにおこると、反対側に麻痺の症状がみられる、いわゆる片麻痺を呈します。

主な症状としては、運動麻痺や感覚障害、失語などが挙げられます。運動麻痺とは、後遺症として、痙性や固縮と呼ばれる筋緊張の異常により、運動が行える範囲も大きく変わってきます。

筋緊張に対して、装具が必要か、それとも筋力や動作を改善させることで、装具なく歩行がおこなえるかも、この運動麻痺の状態により、予後が変わってきます。
 
 

被殻出血の予後

被殻出血の中でも、脳室穿破や、内包前核、後核、視床をまたがる出血など、部位出血量により予後や症状は異なります。

その出血の広がる部位により、Ⅰ~Ⅴ型に分類されます。

Ⅲ~Ⅴ型は、被殻の後方に、出血巣が伸びているため、比較的重い感覚障害や、運動障害を伴うケースが多いです。特に、Ⅴ型は、隣の視床や脳室穿破がみられ、障害も重度となります。

Ⅲ~Ⅴ型のように、視床側に伸びる出血だと、内包後脚が障害されるため、運動麻痺が重症化しやすく、歩行の再獲得も困難なケースが増えてきます。

Ⅰ~Ⅴ型にみられる出血の部位もそうですが、出血量により、予後が軽症か重度かも決まってきます。

出血量が、20mL以下は軽症、40mL程度は中等度、60mL以上は重度となっています。
 
 

被殻出血のリハビリのポイント

■麻痺に対してのアプローチ

先ほども述べた予後の部分で、被殻出血の中でも、出血量や部位により、麻痺の重症度は異なります。
 
大切なのは、麻痺に対して、改善またはこれ以上の筋緊張を生み出さないように調整していくことが大切です。

麻痺が重度で、随意性が乏しければ、装具などにより、関節の拘縮を生み出さない取り組みが必要です。

中等度であれば、相反抑制と呼ばれる、筋緊張に打ち克てるような、動作パターンや自主トレーニングを身に着けることが、麻痺の改善に大切です。
 
軽度では、運動麻痺があるなかでも、さらにパフォーマンスを上げる取り組みが必要です。動作の課題や難易度調整は無限にあり、歩行が獲得できれば、次は速歩き、ランニングと、麻痺の状態をより改善する課題に取り組むことで、機能向上を図ることが出来ます。



■予後予測と、適切な目標設定

脳出血直後から、6カ月の回復期を経て、症状は徐々に安定化していきます。それ以降も、リハビリ方法や運動量により、機能改善は大いに可能であることが証明されています。
 
現状の麻痺のレベルから、機能改善が図れる幅や、到達可能な具体的な動作を設定することで、効果的にリハビリを進めることが出来ます。



■正しい動作と、筋緊張の調整

先程も述べた麻痺の筋緊張と重なりますが、後遺症と付き合っていくためにも、機能改善または、筋緊張をあげない正しい動作練習が必要です。
 
日常生活動作は、特にリハビリよりも反復されることが多いため、誤った動作パターンでは、機能改善が出来る部分があったとして、返って悪化を招いてしまうこともあります。

正しい動作を定着させることで、機能改善に向けた良い流れを作れることと、リハビリもより効果的に進めることが可能となります。またリハビリ卒業後も、長期的に動作維持を図るためにも、正しい動作の定着は必須です。
 
 

ご利用者様紹介

【ご利用者様】50代男性 被殻出血 後遺症


【ライフゴール】通勤に耐えうる安定した歩行獲得。円滑な階段昇降獲得。


【リハビリ期間】24回プラン+16回プラン 4か月


【現病歴】
左被殻出血を呈し、急性期は保存で経過。その後、回復期病院を満期で退院。復職にむけて、当施設でリハビリ継続。


【身体機能・参加】
回復期では、車いすから屋外歩行を獲得。退院後は、装具なしで歩行が行えるものの、麻痺側の下肢のコントールは困難で、ロッキング動作が目立ちました。麻痺は中等度レベルで、体幹から下肢に筋力低下が残存し、足首のコントロールが困難。
 
 
【リハビリ内容】
歩行は、体幹から股関節に筋力低下がみられ、固定的で円滑な歩行が困難でした。

麻痺のレベルも中等度で、足首の上げ下げが困難だったので、麻痺に対しての神経筋促通と、歩容修正を初めに行いました。

悪い歩行のパターンでは、麻痺が改善するところも、硬いまま改善することが出来ないため、麻痺の改善とともに、歩容修正を図ることで、相乗効果を生み出すことが出来ました。

麻痺へのアプローチは、痙性(麻痺による筋緊張)に対してストレッチングをすることと、電気刺激(IVES)を使用することで、つま先が上がるまでに改善しました。

麻痺は残るものの、通勤に耐えうる歩行距離と歩行速度改善を図ることができ、無事復職を迎えることができました。また最終的に、運転免許の更新も果たすことが出来ました。
 
 

神経筋促通、電気刺激IVES動画

“痙性の抑制”と“随意性の向上”を図り、動作獲得を果たしました。

麻痺のレベルは、人ぞれぞれですが、初めにつま先が上がらない状態であった足首が、電気刺激を用いる事で、上がるようになりました。

初めにつま先を上げる動作感覚を養ったのは、電気刺激の助けが大きくありました。

開始時:つま先が上がらない。

1ヶ月後:つま先が上がり初める。

2ヶ月後:足の上げる下げるの強弱がつく。

3ヶ月後:指が上がり始める。
 
 

【歩行 before & after 】

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復職支援の実際

 
 
“病気になり、復帰まで時間がかかりそう。”

“後遺症が重く、仕事を変えなくてはいけない。“

“今の状態で、復帰して同じ仕事量をこなせることができるか。”

当施設では、このような相談を受けることが多々あります。

様々な状況から、仕事の第一線を長期的に退くことになってしまい、復職まで色んな悩みを持たれる方が多いと思います。

突然、ケガや脳卒中などの病気に合われた方は、今後どうなってしまうのか、不安になってしまう時期が誰しもあります。
 
 
 
 
今回は、当施設で行っている復職支援のかたちや、過程をご紹介させて頂きます。

脳卒中の場合は、急性期から回復期を経て、復職を行うために、当施設で更なる機能改善や、仕事に必要な動作の獲得を、図っていきます。そして復職後も、後遺症というハンディキャップを持ちながらも、仕事効率を上げるためにリハビリを継続支援させて頂いている方も、多くいらっしゃいます。

脳卒中のみならず、整形外科の術後、他の病気を持たれている方に対しても、復職支援をさせて頂いております。特に、病気により休職の期間が長いと、廃用により筋力低下や、仕事に耐えうる体力も衰えしまいます。円滑な復職を果たすために、リハビリの側面から支援させて頂いております。

復職にあたり、以下の5つのポイントを挙げさせて頂きました。


1. 復職は、病型や後遺症の予後予測で決まる。
2. 身体機能をあげて、可能な職種を選んでいく。
3. 復帰は、先方との話し合い、タイミングが重要。
4. 仕事をしながら、効果的なリハビリを重ね、仕事効率を高めていく。
5. 病気をしたことが、悪いことだけではない。

 
 

1.復職は、病型や後遺症の予後予測で決まる。

脳梗塞や脳出血後など、脳卒中の後遺症は、重度から中等度、軽度と様々です。加えて高次脳機能障害の有無も含めると、復職までの過程は大きく広がりがあります。

実際の脳卒中の入院期間は、、脳出血に必要なリハビリ期間についてで述べさせて頂きました。急性期を経て、回復期では、満期6カ月間入院することが出来ます。重度から中等度の場合は、歩行の再獲得と、バランスをとれるようになるまで、6カ月のリハビリ期間を要する方が多い傾向です。中等度から軽度の場合は、歩行をある程度早期に獲得することで、早期退院と、自宅生活を中心としたリハビリで継続される方もいらっしゃいます。ケースによっては、歩行はできるが、高次脳機能障害として、言語や嚥下機能、注意や遂行機能の改善のため、満期の入院を選ばれる方もいらっしゃいます。麻痺の度合いや歩行獲得時期、高次脳機能障害を含めて、退院の期間は異なります。

 復職に向けて具体的に動き出す時期や、回復期の入院期間がどれくらいかかるのか。麻痺の度合いにより、歩行状態や高次脳障害の状態も含めて、時期は様々です。中等度から軽度の方で、早く復職をしたいという方は、自宅退院と、当施設で具体的に復職に向けての機能訓練を行う方々が多いです。また、重度の回復期で満期を経た方も、屋外での活動を更に広げるために、当施設でリハビリを継続される方々もいらっしゃいます。
  
 
 
 
復職となると、まず通勤のことを思い浮かべる方が多いと思います。通勤の足として、歩行が可能かどうか、または車いすも選択肢の一つとして挙げられます。最近はテレワークの普及により、在宅でも可能な仕事が増えてきましたが、歩行の再獲得が可能であれば、通勤という課題も、リハビリとして非常に有効です。

通勤に耐えうる歩行が可能かどうか。という点ですが、急性期から回復期の初期で、歩行獲得の予後予測として、、リアルな脳卒中の治る確率で述べさせて頂きました。復職を目指す段階としては、回復期病院での後半時期に、ある程度歩行状態が定まってきた段階で、考え始められる方が多いと思います。

通勤動作では、歩行の仕方やスピードをより上げていきたい部分もありますが、大切なのは、乗降車や段差昇降、バランスや注意といった課題を安全にこなせるかどうか。または、ルートや通勤の時間帯によっても、復職できるタイミングは変わってきます。

復職が可能かどうか。または可能な時期は、病気の特徴、脳卒中であれば、病型や麻痺の度合い、回復期の初期であれば予後予測から、判断できる部分があります。
 
 

2.身体機能をあげて、可能な職種を選ぶ。

一度、病気となり、仕事を退職された方。これから仕事を、探して復職を目指されている方。後遺症から、可能な職種はある程度決まってきますが、機能を上げて可能な職種を広げていくことも可能です。

機能が上がる期間は、脳卒中後6カ月という期間が設けられていますが、実はその回復期を経た後も、リハビリの負荷量や方法によって機能は変化することがエビデンスでも明らかになっています。逆に言えば、やらなければ機能は落ちますし、リハビリの負荷を上げることで、生活期でも機能を改善させることは可能です。

一度病気になってしまったから、と可能性を狭めるのではなく、リハビリ方法や、今後の復職に対しても、機能改善の流れを作っていくことが、重要です。後遺症の改善を諦めるのではなく、機能改善を最後まで図ってから、復職を迎えることをお勧めします。
 
 

3.復帰は職場との話し合い、タイミングが大切

先ほど、最大限に機能改善を図ってから復職と述べましたが、仕事の再開のタイミングは非常に大切となってきます。特に病気により休職というかたちをとられている方は、職場に身体機能の状況を知ってもらう、職場復帰のタイミングを細かく話し合える環境をつくることが大切です。

復職を迎えると、リハビリ中心の生活から、仕事中心の生活となり、身体のケアに費やす時間も断然減ってきます。特に毎日、通勤や仕事で疲労が溜まっていく中でも、変わらないパフォーマンスで、仕事をこなしていかなくてはなりません。通勤や、仕事の動作に耐えうる身体機能を、職場復帰の前に獲得すべきです。仕事により、機能が落ちていき、職場復帰をしたが、徐々にパフォーマンスを落ちていくと、先行きは困難となってしまいます。仕事との付き合いは長期に渡るため、復帰前に身体機能を上げること。そして復職してからも変わらず維持が出来るかたちをとることが、大切です。

また、職場と身体の状態を共有している、状況の理解が得られていると、通勤日数を段階的に増やすような、段階的な復職を行うことも可能となります。もちろん、リハビリの時間も減っていきますが、仕事復帰し様子をみながら進めることができるため、安心してリハビリから手が離れていくことができます。そのためにも、職場とコミュニケーションをとれる環境にあるか、復帰のタイミングが適切かどうか、復職支援では、確実に押さえていきたい部分になります。
 
 

4.仕事をしながら、効果的なリハビリを重ね、仕事効率を高めていく。

仕事復帰というと、身体のことが心配になりがちですが、実際には、身体が更に良くなることもあります。リハビリ期間は、家族やリハビリの中でスタッフと話すのみ、または身体を動かす内容もリハビリの枠に収まっていることが多いです。いざ仕事復帰となると、仕事を通して色々な人と話す、動作や運動量も格段に上がるということが起こりえます。仕事の内容によりますが、リハビリの時間や量よりも、仕事でももっと長い時間動いたりすることがある場合は、リハビリよりも課題量が増えて、身体機能が上がることも大いにあります。むしろ、身体機能を上げるとともに、復職のタイミングを見計らって、機能を上向かせるいい流れをつくっていくことが、長期的に必要となってきます。

仕事復帰を果たすことが、終わりではありません。誰しもが、業務を行うなかで、仕事の速さ、効率性を求めるようになるため、そのためにも身体機能を上げていく流れは絶やしたくないと感じる方が多いです。日頃のストレッチングや、身体の管理を自身で行っていくこともそうですが、休みの日にリハビリをしながら、更に仕事の効率性を上げていく取り組みも一つの方法です。
 
 

5. 病気をしたことが、悪いことだけではない。

仕事を行っていた生活から、突然病気となり、もとの生活を送れなくなってしまった。初めは、身体の状況を受け入れることや、不安が多く、精神的に不安定な時期を過ごした方は少なくありません。そこから、身体機能を上げていき、少しずつ病前の生活を取り戻していきながら、最終的に社会復帰を果たしていく。健康なことに越したことは、ありませんが、病気になったことは、振り返ると悪いことばかりではありません。
 
 
 
 
特に、悪い生活習慣から脳卒中などの病気になってしまった方は、自身の生活習慣、食事や運動、睡眠など大変、気を使われるようになるかたが多いです。自分の健康について、振り返る大きな機会になりますし、健康体を維持するために、より良い生活習慣を、残りの人生で求め続けるようになります。

それは、残りの長い人生で、悪い生活習慣から改善する大きな機会ですし、そのままいっていたらもっと大病となってしまった可能性もありえます。
 
 
当施設では、整形外科の術後の方、脊髄損傷、脳卒中の後遺症をお持ちの方、様々な方が復職に向けて、または仕事しながらもリハビリに励まれています。今回は、大まかに5つのポイントを述べさせて頂きましたが、復職支援といっても多様性があり、リハビリ過程は身体機能の状態や、職種によっても、個別性が強くあります。

これから復職に向けて動き出す方や、今後のことで不安がある方。入院中で本人は来られないが、ご家族の方も含めて。体験や相談を、常時承っておりますので、ご気軽にご連絡下さい。機能を上げられる部分はたくさんあり、方法も個別でたくさん存在します。まずは必要なことや、さまざまな手段を知ってから、復職に向けて歩んで頂けると幸いです。
 
 

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脳梗塞×リハビリ ~リハビリを成功させる鍵~

今回は、脳梗塞後のリハビリにおいて、後遺症を大きく改善させるポイントを述べていきます。
 
 

多様な脳梗塞後遺症


脳梗塞では起きた部位によって、障害される経路や身体の箇所が異なります。そのため、脳梗塞の後遺症と一口に言っても、その人その人によって、悩まされる症状は様々です。

「手足は動かせるが、バランスが取れない」
「片側が思うように動かない」

人によって異なる後遺症に対処していくためには、具体的な方向性を決めていくことが重要です。

なお、脳梗塞で非常に起きやすい片麻痺に関する発生機序から期間、リハビリの流れについては、突然脳梗塞で右片麻痺になってしまったら?で述べさせてもらいました。
脳幹や小脳梗塞などの後遺症に関しても、細かく脳血管リハビリテーション➂に書かれているので、より詳しく知りたいという方はぜひこちらもご覧下さい。

リハビリの方向性の決定

始めに脳梗塞が起こり、急性期を終えて、全身の状態が安定してから、リハビリ開始となります。

リハビリ開始時に、特に大切なのは、予後予測です。

現在の後遺症の状態から、
「1人で起き上がり、座った姿勢がとれる」
「1人で立って、手すりを使いながら歩くことができる」
「バランスが取れるようになって、外で、1人で歩ける」
など、どのくらいまで動作を獲得することができるか。獲得したいと思うか。
目指すべき到達点をより具体化することで、改善スピードを加速することができます。

脳梗塞の後遺症によってリハビリによる到達点は異なりますが、より短期間で、目標や、獲得すべき動作に向かって、着実にリハビリを進めていくことが大切です。

リハビリベース国分寺では、麻痺の部位や度合いを評価し、到達可能な動作や活動を、期間とともに提示します。
もちろんご利用者様の目標や、ご家族様の希望を聞き、出来る限り実現ができるように具体的な目標設定を行い、オーダーメイドのリハビリプログラムを立案して参ります。そちらをリハビリ毎に振り返りながら、機能改善を着実に進めていきます。

短期集中

リハビリの効果を出すためには、短期集中で機能改善を図ることがより効果的です。リハビリに集中して、自分と向き合うことにより、効果的な運動学習効果を得ることができます。
また、集中的に動作改善を重ねることで、1人で行える動作に短期間で到達でき、そこから長期的な効果へつなげることが出来ます。

立ち座りが不安定で、出来なかったところから、1人で行えるようになると、日常生活の動作量が格段と増えてくることも、短期間での効果から生み出される良さの一つです。

身体機能の改善と日常生活の参加

短期集中による効果を、日常生活でも発揮することが、リハビリでは必要不可欠です。獲得できた立ち上がりや歩行を、普段から行ってもらうことで、筋力や持久力が増し、より難易度の高いバランス、応用的な歩行に発展させていくことができます。

短期集中で機能や動作改善を図り、日常生活でできることを増やす。
この正のサイクルが、リハビリの効果を一気に加速させていきます。

心理サポート

リハビリの過程で、脳梗塞による感情的・精神的な起伏がみられるのは自然なことです。脳梗塞後には、抑うつ、不安、ストレス、焦りなどを皆さんが経験します。時に、周りのご家族様も、どうしたらいいのかと、心配が多くなってしまうこともあると思います。

リハビリベース国分寺では、単にリハビリをするだけでなく、ご利用者様やご家族様と、コミュニケーションを多く重ねていくことを重視しています。思い違いや不安な部分に対して、現在の病態や、改善されるリハビリの過程を説明していくことで、常に軌道修正と、リハビリの動機付けを図っていきます。

心が動かなければ、身体も動きづらくなってしまうのは、当然なことです。心理的な面でも、上向かせていくことで、負のサイクルを抜け出し、効果的な、結果の出るリハビリの流れを生み出せるように、リハビリベース国分寺は最大限のサポートを目指していきます。


2023年8月31日作成
2024年2月24日編集
今回は、脳梗塞後のリハビリにおいて、後遺症を大きく改善させるポイントを述べていきます。
 
 

多様な脳梗塞後遺症

脳梗塞の後遺症と言っても症状は様々です。
「手足は動かせるが、バランスが取れない」。「片側が思うように動かない」。
このように、症状が様々なのも、脳梗塞が起きた部位により、障害される経路や身体の箇所が様々だからです。
脳梗塞で非常に起きやすい片麻痺に関しては、発生機序から期間、リハビリの流れに関して、突然脳梗塞で右片麻痺になってしまったら?で述べさせてもらいました。
その他の、脳幹や小脳梗塞などの後遺症に関しても、細かく脳血管リハビリテーション➂に書かれているので、ご覧下さい。
 
 

リハビリの方向性の決定

脳梗塞の後遺症は、様々と話しましたが、それによってリハビリによる到達点も異なります。初めに脳梗塞が起こり、急性期を終えて、全身状態状態が安定してから、リハビリ開始となります。
リハビリ開始時に、特に大切なのは、予後予測になります。現在の後遺症の状態から、どのくらいまで動作を獲得することができるか。「1人で起き上がり、座った姿勢がとれる」、「1人で立って、手すりを使いながら歩くことができる」、「バランスが取れるようになって、外で、1人で歩ける」。目指すべき到達点をより具体化することで、改善スピードを加速することができます。より短期間で、目標や、獲得すべき動作に向かって、着実にリハビリを進めていくことが大切です。

リハビリベース国分寺では、麻痺の部位や度合いを評価し、到達可能な動作や活動を、期間とともに提示します。もちろんご利用者様の目標や、ご家族様の希望を聞きながら、
出来る限り実現ができるように、オーダーメイドのリハビリプログラムを立案して参ります。
 
 

短期集中

リハビリの効果を出すために、短期集中で機能改善を図ることがより効果的です。理由として、リハビリに集中して、自分と向き合うことにより、効果的な運動学習効果を得ることができるからです。また、集中的に動作改善を重ねることで、1人で行える動作に短期間で到達でき、そこから長期的な効果へつなげることが出来ます。立ち座りが不安定で、出来なかったところから、1人で行えるようになると、日常生活の動作量が格段と増えくることも、短期間での効果から生み出される良さの一つです。

リハビリベース国分寺では、具体的な目標設定を行い、リハビリ毎に振り返りながら、機能改善を着実に進めて参ります。
 
 

身体機能の改善と日常生活の参加

短期集中の効果を、最終的に日常生活にて効果を発揮させることが、リハビリでは必要不可欠です。獲得できた立ち上がりや歩行を、普段から行ってもらうことで、筋力や持久力が増し、より難易度の高いバランス、応用的な歩行に発展させていくことができます。

 
 
短期集中で機能や動作改善を図り、日常生活でできることを増やす。
このサイクルが、リハビリの効果を一気に加速させていきます。
 

心理サポート

リハビリの過程で、脳梗塞による感情的・精神的な起伏がみられるのは自然なことです。脳梗塞後に、抑うつ、不安、ストレス、焦りなどを皆さんが経験します。時に、周りのご家族様も、どうしたらいいのかと、心配が多くなってしまうこともあると思います。特にリハビリベース国分寺では、ご利用者様やご家族様と、コミュニケーションを多く重ねていきます。思い違いや、不安な部分に対して、現在の病態や、改善されるリハビリの過程を説明していくことで、常に軌道修正と、リハビリの動機付けを図っていきます。やはり、心が動かねければ、身体も動きづらくなってしまうのは、当然なことです。心理的な面でも、上向かせていくことで、負の循環から、効果的な結果の出るリハビリの流れを生み出せるように、目指していきます。

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この記事を書いた人

尾作研太 理学療法士

回復期病院にて4年間勤務、主に整形外科や脳血管疾患、脊髄損傷のリハビリに従事。海外の大学にて、ヘルスケアの学位を取得後、訪問リハビリと地域の介護予防に参画。脳血管疾患の方の動作獲得や、装具を含めた歩行の修正、社会復帰までサポートしている。

小脳出血 バランス機能を取り戻した20代男性

 
 
「小脳出血」、脳出血の中でも聞きなれない病名かも知れません。

この小脳という部位。日常生活で絶えず機能している、バランス機能に大きく関与しています。
むしろバランス機能を司っているといっても過言ではありません。

小脳出血は、脳出血の中でも10%にも満たない割合で起こります。割合は少ないですが、この小脳に障害を負うと、日常生活のあらゆる動作に大きな障害を来します。

後遺症としては、比較的身体は動かすことができますが、バランス障害や運動を滑らかに動かすことが困難となるケースが多いです。

今回は、小脳出血の後遺症の特徴から、大事なリハビリのポイントを初めに説明させて頂きます。後半には、当施設に通われていたご利用者様を通し、大きく改善された部分や、生活復帰を叶えた過程を紹介させて頂きます。
 
 

小脳とは?

図1:大脳と脳幹、小脳の位置
小脳は、脳幹の後ろに位置しています。図1のように、脳幹(中脳、橋、延髄)に隣接しており、それぞれ小脳と協同して働く連絡通路が存在します。
小脳は図2のように、大脳小脳、脊髄小脳、前庭小脳に区分されています。発生学的に、古い順番から古小脳(前庭小脳)、旧小脳(脊髄小脳)、新小脳(大脳小脳)という呼称もあります。
この小脳の中でも、出血の部位が異なることで、後遺症も変わってきます。
 
 
図2:小脳の解剖

小脳の役割

小脳の代表的な働きとして、「協調運動」が挙げられます。
協調運動とは、相互に調整を保ちながら、複数の筋によって滑らか、かつ正確に運動することを言います。運動の中でも、動きを協調的に生み出している経路の一つとして、小脳は大きな役割を担っています。協調運動の代表的な検査として、図3の指鼻指試験があります。これは、自分の鼻と、相手の指や一点の標的に対して、指を往復させることで、動作の滑らかさと、標的に対して正確に到達しているかを、検査します。協調性が失われると、手のリーチがぎこちなくなる、標的に対し、大きくズレが生じてしまうといったことが見られます。日常生活では、水が入ったコップを掴み、口に運ぶ。物を棚の上に置く。脚に関して言えば、階段を円滑に登り降りができるといった動作も、協調運動が必要です。
図3:指鼻指試験
 
 

より詳しくみてみると。。。

小脳の働きは、先ほどの小脳の区分にあったように大脳小脳、脊髄小脳、前庭小脳の3つに分けられます。
大脳小脳は、視床と橋を経由し、大脳に行く運動指令を、小脳にてコントロールしています。
次に脊髄小脳は、虫部と半球中間部からなり、体性感覚を統合し、脳幹へ伝達しています。また、小脳虫部は体幹の制御を、中間部は上下肢の制御を行っています。
三つ目の前庭小脳は、耳でとられたバランス等の情報を、脳幹の前庭神経核という部分に情報伝達しています。詳しくは、脳血管リハビリテーション③でも述べた、耳の前庭感覚によるバランス情報も、小脳を経由し脳幹に集められています。外部からの情報は、視覚や体性感覚、前庭覚が、それぞれの受容器から情報入力されますが、それらの情報が脳の中心部に向かう経路や、情報を統合してまた身体へ送り出す経路は、たくさんあります。
失われた障害経路を特定し、得られやすい、または効果的な方法をリハビリの中で探っていくのも、一つの大事な行程になります。
 
 

小脳性運動失調に対してのリハビリ

一様に小脳の後遺症に対してのリハビリは、これが必要とは言いきれません。
脳出血によっては、小脳とまたがり脳幹の一部で侵襲が起こり、片麻痺を呈する場合もあります。まずは、脳画像により侵襲部位を確認することや、身体の症状として、随意性や協調性運動、痺れや感覚の検査を行い、障害部位を具体化していきます。それから、立ち上がりや立った姿勢、バランスの状態や、移乗などのステップ動作、歩行を観察し、総合的に評価していきます。
先程述べた、小脳性運動失調に対しては、失調部位を明らかにしてから、協調性の向上を図る動作も行いますが、個々の細かい筋肉を選択的に使う、そして強化するという行程を踏んでいきます。具体的には、寝返りや四つ這い運動、起立からリーチ動作など、体幹や四肢をより選択的に細かく動かすことで、失調に対し協調性を育んでいきます。座った姿勢や、立った姿勢に対しては、失調により上手くバランスが保てないことに対し、鏡を使用した視覚的情報による代償や、裸足で足底からの感覚を掴みやすくするなど、より本人に効果的に働く感覚入力を行っていきます。最後に、リハビリの中でも一番の量を取りたい動作は、歩行になります。歩行が生み出されるプロセスとしても、小脳は、小脳歩行誘発野と呼ばれる、歩行リズムの生成を担っており、無意識下での姿勢制御や、歩行での選択的な活動を総じて上向かせることができます。注意点としては、固定的な姿勢ではなく、より良い歩行の中で、量を生み出していくことが大切です。
質と量を重ねることで、効果的な学習効果をえることが出来ます。中には、歩行の不安定さが強く、歩行器や手すりを使用して、一時的な期間、日常生活を送ってもらうケースもあります。本来では、支持物はなく歩行改善を目指していきたいところですが、転倒のリスクや1人で行える環境も考慮し、歩行器を使用して歩行量を増やしていく手段も、最終的な目標達成には必要です。
 
 

小脳性運動失調

小脳の代表的な特徴である協調運動に関して述べましたが、特に脊髄小脳の役割である、筋緊張の調整は、リハビリを進めていく上で非常に大切な機能になります。脳卒中では、運動神経の経路が絶たれ、片麻痺の状態になるこが、非常に多いケースとしてあります。小脳に関しても、片側での麻痺が出るケースもありますが、随意性、筋出力は良好なことがあります。筋力は発揮でき身体は動かすことができるが、上手く調整して動かすことができないといった特徴が、小脳の後遺症にあります。この協調性のように、四肢や体幹の運動調整が失われ
ることを「失調」と言います。特に脊髄小脳では、脳出血や脳梗塞による侵襲部位により、体幹や上下肢のどこに強く失調の症状が出るか、ある程度定まってきます。
小脳性運動失調の特徴のもう一つとして、眼球運動や視覚的な情報が、失われやすいです。
これは、前庭小脳が、平衡や眼球運動を担っているため、眼球運動が直接的に障害されることもあれば、姿勢制御の中で協調運動が上手く行えずに、周囲へ向きづらくなるといった理由もあります。人は、無意識下、または予測的にバランスを保っていますが、小脳性運動失調がある場合は、身体が上手くコントールできずに”固定的”になってしまいます。固定的という現象は、具体的に一つ一つの筋肉が”選択的”に働かずに、粗大な筋肉を緊張させて姿勢をとるという現象です。
小脳性運動失調に特徴的な姿勢としては、腰や背中から頸部まで、一直線に固定される。身体を捻る回旋の動きや方向転換など、細かい動きが必要な動作に対して、非常に弱いとこも特徴の一つです。また頸部が固定的になることから、頭を回旋して周りを見回すような動きもしづらく、眼球運動の動かしやすさを阻害する悪循環が存在します。頸部から頭部の動き、または眼球運動は、関係性が強く、姿勢筋緊張に対しても、眼球運動への影響は大きい報告されています。
小脳の姿勢制御と、視覚的なバランス保持は、小脳性運動失調に対してのリハビリに、必要不可欠です。
 
 

リハビリベース国分寺でのアプローチ

【症例】
20代男性 小脳出血

【ライフゴール】
“バランスが取れるようになって、復職したい。”

【リハビリ期間】3ヶ月 16回プラン

【現病歴】
ある日突然、頭痛が強く起こり、救急搬送され、小脳出血の診断を受けました。出血量が多かったことから、2回の開頭術を施行し、2ヶ月の急性期病院を経たあとに、回復期病院へ転院となりました。6ヶ月の回復期退院後、他施設にて3ヶ月リハビリを行い、その後に当施設でリハビリ開始となりました。

【身体機能・参加】
 小脳出血も、中央と左側の侵襲が強く、左上下肢の協調性低下、体幹の筋力低下がみられ、大股の歩行や左右の動揺が見られました。また運動時の回転性目眩、眼球運動障害、複視もあり、バランス機能は困難さが多く見られました。片脚や継足、方向転換時のふらつきがあり、自覚症状として小脳特有のバランスの取りづらさが強くありました。

【目標シート】
 
 
【リハビリ内容】
体幹トレーニング
体幹の協調性低下、筋力低下に対しては、寝返りやうつ伏せ、四つ這いなどベッド上でのトレーニングを中心に強化を図りました。特に小脳由来の体幹の失調に対しては、筋力をつけることもそうですが、より細かい、体を捻るなどの協調的な運動が行えるようにアプローチを行いました。
手足に関しても、緊張を取った後に、細かい関節の一つ一つの動きが滑らかに動かせるように、協調運動の練習を行なっていきました。
 
 
 
 
眼球運動エクササイズ
視覚は、特に左側に複視の症状がみられ、同時に左眼球の外側への動かしにくさがありました。複視や眼球運動障害に対しては、反射を利用した、眼球運動エクササイズを行いました。次第に左側への眼球運動は広がり、視野が広がりましたが、側方の複視は残存しピントが合いづらい部分が残存したため、今後も継続してトレーニングを行ってもらうかたちとなりました。
 
 

 
 
バランス練習
体幹から下肢の協調運動や、眼球運動から視野の改善を図った上で、複合的なバランス課題を、段階的に行っていきました。継足や、足を閉じた中でのバランス保持練習から、視覚を外し、無意識下でのバランス反応を養いました。小脳の障害は、特に無意識でのバランス制御が課題としてあるため、視覚を無くしたバランスへのアプローチは、とても効果的です。体幹から下肢の滑らかな動きを促すことで、前庭系で得られたバランスの情報を、円滑に手や足へ伝達し、バランスがしっかりと取れるようになります。逆に、裸足になり、足底から様々な感覚を入れ、バランスの反応を養う訓練もとても効果的です。様々な刺激や、バランス課題を、段階的に練習することで、バランスがどんな状況でも取れる自信をつけていきました。
 
 

 
 
回転性目眩に対してのアプローチ
小脳の前庭系経路の障害では、目眩やバランスの取りづらさが主訴としてあります。目眩の軽減に対しても、バランス動作や回転運動などの刺激を与えるとともに、バランス機能を養うことで、目眩が改善するエビデンスがあります。バランス課題の中で、視野を一周する、頭部の上下、回転運動を行い、目眩に対して我慢できる刺激や、バランス課題を行いました。次第に大きな視野の変化や、頭部の動きに対しても目眩が起こらずに動作が行える範囲が増えていきました。
 
 

屋外での動作、バランス確認
小脳の障害のお持ちの方は、お店や人混みでの移動など、様々なものに注意を向けながら歩くことが、とても難しく、体力のいる作業です。視覚や、前庭系のバランス、足の協調性が改善したところで、駅構内や階段、人混みなどの移動にて、動作や恐怖心を感じ、自信がない部分などは、屋外での課題を一緒に行わせて頂きました。やはり駅内での移動は、階段など人の流れの中で、必ずしも手すりなど使える環境ではないため、人の流れや少しの衝突に耐えうるバランス能力が必要です。その都度動作確認や、屋外での単独での活動にもチャレンジしてもらいながら、活動範囲を広げて行ってもらいました。

3ヶ月後、ライフゴール達成
 目眩の改善、視野が広がったことと、歩行も大股歩きから、スムーズな歩きを獲得することができました。何より、屋外にて周囲を見ながら歩く、不整地や人混みでもバランスを取り、自信を持って歩くことが可能となりました。バランス課題もリハビリ内の応用的な課題も問題なく行え、ジャンプやランニング動作も獲得していきました。最後は、職場復帰の時期が決まり、それまでにスポーツやフィットネストレーニングなど、より応用的な運動を行って頂き、当施設でのリハビリは卒業する流れとなりました。
 
 

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くも膜下出血 水頭症合併 ~歩行獲得までの道のり~

 
 
今回は、脳卒中のあらゆる病型の中でも、くも膜下出血について、病型と後遺症につい述べていきます。
 
また、後半は当施設に通われている、くも膜下出血を呈した方に対してのリハビリを紹介させて頂きます。
 
 

くも膜下出血とは?

くも膜下出血は、血管が破れ、脳が覆われているくも膜の内側に、血液がたまり、引き起こされる脳血管疾患の一種です。脳皮質内で引き起こされる、頻度が高い被殻出血や、視床出血とは異なり、脳細胞へのダメージというより、脳が圧迫されることで、歩行や意識障害などの後遺症が引き起こされる病型です。下図のように、出血により血が溜まる部分が異なり、脳卒中の中でも、病型により、症状や予後は様々です。
 くも膜下出血は、脳卒中の中でも、1割を占める病型になります。発症頻度としては、男性は50代、女性は60代でピークを示し、60歳以降で女性が占める割合が増えてきます1)。病型として割合は低いものの、予後としては25%以上の割合で予後不良というデータがあり、脳卒中の中でも、重症化しやすい病型と言えます2)。後遺症は、他の病型と比べ、片麻痺などの身体が動かしづらくなる運動麻痺ではなく、意識障害や歩行障害を呈するのが特徴です。
図1:脳卒中の発生機序
図1:脳卒中の発生機序

重症度や予後の決め手

年々、死亡率から受傷者率は、減少傾向にあり、発症から救急にて搬送されるスピードや、クリッピングなど手術の充実性が減少傾向に働いています。くも膜下出血の多くは、脳動脈瘤破裂により、脳全体に多量の出血が広がります。そのため、救命や重症度を軽くするためには、出血後の時間が勝負となります。
図2のように、くも膜下出血後の処置は、以下の割合を示します。初めに出血後、開頭や内視鏡手術を行わずに、経過をみることを保存と言います。次に動脈瘤に対しての処置は、コイルやクリッピングと呼ばれる処置があります。コイルは動脈瘤の中を詰めていくことで、動脈瘤のふくらみの部分に血流がないように遮断します。クリッピングは、動脈瘤の手前を、袋を閉じるようにクリップで止める術式になります。ドレナージとは、くも膜下出血の急性水頭症を引き起こさないためにも非常に大切な処置になります。脳内の出血量が多いと、脳室の拡大も認められ、水頭症を合併するケースがあるからです。
 大まかな予後予測になりますが、予後良好は58%、著しい予後不良は28%と全国をみてもこのような割合を示します1)。この著しい予後不良の中でも、正常圧水頭症を合併しているケースが多いです。
図3: くも膜下出血、術式の割合(2015年脳卒中データバンク)
クリッピング
コイル
 
 
この先は、当施設に通って頂いているくも膜下出血術後、水頭症を合併した方の、リハビリ過程をご紹介します。
 
 
【症例】50代男性 くも膜下出血後遺症 正常圧水頭症合併

【ライフゴール】外で歩けるようになりたい。

【リハビリ期間】再手術の期間を入れ1年 24回プラン × 2

【現病歴】
くも膜下出血呈し、開頭術施行。その後、6カ月の回復期病院の入院期間を経て、当施設にてリハビリを継続。リハビリ開始から3か月経過し、正常圧水頭症と脳内血管のバイパス手術のため、再手術となる。その後自宅退院し、状態が安定し、再度当施設にてリハビリ再開となる。

【身体機能・参加】
リハビリ開始時は、車いす移動でした。前傾姿勢が強く、倒れないように多くの介助が必要で、初めは10m程度の屋内歩行がやっとな状態でした。水頭症を合併し、覚醒や注意など高次脳機能障害もあり、発語も乏しかったです。歩行障害が残存し、予後不良との診断の中でしたが、運動量を多く取り、介助下でしたが最大300m程度屋外での歩行が行えるようになりました。その後、水頭症の経過が変わらないため、再手術を行い、回復を待って、当施設にてリハビリ継続となりました。

【ライフゴール達成】
現在は、屋外歩行見守りで、最大1km程度、目標を達成してきました。これからは、さらに歩行量を延ばしていくことと、単独へ安定した歩行が行えるように、もう1回継続してリハビリ行っていきます。諦めずに、目の前の課題を一つずつクリアし、より高い目標を目指していきます。

【Before & After動画】
 
 

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麻痺などの後遺症に対しての克服方法、リハビリのプロセス、予後予測まで。個々のリハビリを、目標達成までオーダーメイドで組ませて頂きます。
 
 

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