突然、脳梗塞で右片麻痺になってしまったら?
~機序や特徴、リハビリまとめ~
突然脳梗塞になって右片麻痺になってしまったら。
突然、家族やご自身、または親しい人が脳梗塞になってしまったら、皆さんはどうしますか?
脳梗塞では梗塞されてしまった部位によって、様々な症状が引き起こされます。
しかし、右片麻痺か左片麻痺かで症状の大部分は予測できます。
今回、右麻痺の方の特徴、左麻痺の方の特徴、そのリハビリについてまとめました。
・脳梗塞とは
・脳梗塞は突然やってくる
・病気によるリハビリの違い
・急性期リハビリテーション
・回復期リハビリテーション
・在宅期リハビリテーション
脳梗塞とは
脳梗塞とは、脳内の血管が塞がり、その結果、酸素と栄養素の供給を受けることができない脳の一部が壊死する状態を指します。この状態が引き起こされる主要なメカニズムは二つあります。
一つは、体内の他の部分で形成された血栓(血液が固まって作られる塊)が血管内を移動し、脳内の細い血管を塞いでしまう状態です。これらの素因には血小板異常症や血液凝固異常症などがあります。
もう一つは、血管の壁に形成された動脈硬化(血管が硬く、厚くなる状態)のプラーク(血管内膜にできた塊)が破裂し、その結果として新たな血栓が形成され、血流が遮断される状態です。これは加齢とともに起こる動脈硬化だけが原因ではなく、いわゆる生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症・内臓脂肪型肥満・睡眠時無呼吸症候群など)や喫煙者などに多く見られることがあります。
脳梗塞は突然やってくる。
脳梗塞の症状は通常、突然現れます。そしてその症状は多岐にわたります。
ですが、損傷した脳の領域によって特徴があります。具体的な症状は損傷の程度と位置によりますが、以下のような症状が一般的に起こります。
表はそれぞれ、脳の左側(左半球)、脳の右側(右半球)で起きた場合をまとめております。
脳の左側(左半球)が損傷を受けると、その効果は身体の右側に表れます。
脳の右側(右半球)が損傷を受けると、その効果は身体の左側に表れます。
これらの症状は個々によって異なります。また、これらの症状がすべての人に現れるわけではなく、一部のみ現れる場合もあります。周囲の方(家族や友人、介助者など)が特徴を理解するだけでも、脳梗塞を発症した方は安心します。
もし上手くコミュニケーションが取れなくても、それはその人自身の問題ではなく、脳梗塞による影響であると思うだけでも、様々な物事が理解できるようになるのではないでしょうか。
急性期のリハビリテーション
脳梗塞の直後は、まず生命の安定と状況の安定化が優先されます。
この段階では、病状の進行を抑えるための治療が行われ、新たな脳梗塞のリスクを最小限に抑えることが目指されます。急性期の治療には通常、抗血栓薬や抗凝固薬、血圧や血糖値をコントロールする薬物が用いられます。
脳梗塞からの回復では、リハビリテーションが重要な役割を果たします。
リハビリテーションの目的は、麻痺した身体の機能を最大限に回復させ、日常生活の自立を目指すことです。リハビリテーションは、理学療法、作業療法、言語療法など、さまざまな専門分野のプロフェッショナルによって提供されます。
リハビリテーションは可能な限り早期から開始することが推奨されます。急性期のリハビリテーションは、主に以下のような内容を含みます。
1.身体機能の評価と理学療法: リハビリテーション専門家が患者の身体機能を評価します。これには、筋力、感覚、調整能力、バランス、身体の一部の制御などが含まれます。
2.基本的なADL(生活動作)の練習: 初期段階から、基本的な日常生活動作(食事、移動、トイレなど)の練習が始まります。これは、自立した生活を目指すための重要なステップです。
3.スワローイング(嚥下)トレーニング: 脳梗塞により飲食時の嚥下機能が低下する場合、専門家の指導のもとで嚥下訓練が行われます。
4.言語療法: 言語障害がある場合、言語聴覚士による早期の介入が行われます。
急性期のリハビリテーションは、病院やリハビリテーション施設などの医療機関で行われます。
リハビリテーションチームは通常、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、栄養士などから構成されます。
回復期のリハビリテーション
急性期を経て生命の安定を得た後、回復期のリハビリテーションが始まります。
この段階では、生活の質の改善と機能の回復が目指されます。
具体的なリハビリテーションの内容は、患者さんの状態や障害の程度によりますが、以下のような要素が含まれます。
1.理学療法: 筋力と座位保持、立位保持、歩行能力の改善に重点を置きます。理学療法士は、麻痺した肢の拘縮を予防と筋力を強化し、バランスと歩行能力を改善するためのエクササイズを指導します。
2.作業療法: 作業療法士は、日常生活動作(食事、着替え、トイレ、調理、洗濯など)の遂行能力を再学習するための訓練を行います。また、自宅での生活を支援するための補助具の使用方法も指導します。
3.言語療法: 言語・認知障害のある患者は、スピーチセラピストと共に言語能力の回復を目指します。また、言語聴覚士は嚥下訓練も指導します。
4.認知訓練: 記憶、注意、問題解決能力などの認知機能の改善を目指します。
回復期のリハビリテーションは、通常、リハビリテーション専門の医療機関で行われます。
ここでは、1日2~3時間程度のリハビリを毎日行います。365日リハビリと言われますが、自宅退院、社会復帰に向けて重要な時期とも言えます。
在宅期のリハビリテーション
在宅期のリハビリテーションは、自宅での生活を支えるための継続的なリハビリテーションです。
ここでは、既に獲得したスキルの維持と、可能な限り自立した生活の達成が目指されます。
また、介護保険など認定されている方は医師の指示書があれば訪問リハビリテーションとして自宅で行うこともあり、最近では特徴のあるデイサービスやデイケアが増えています。
1.理学療法: 在宅期でも、定期的に理学療法士とリハビリを行い、筋力とバランスを維持することが重要です。
2.作業療法: 作業療法士は、生活の中で新たに生じた課題に対応するための支援を提供します。また、自宅での安全性を確保するためのアドバイスも提供します。
3.言語療法: 在宅期でも、言語・認知能力の維持と改善を目指してスピーチセラピーを続けることが推奨されます。
4.適応補助具: 必要に応じて、歩行器、杖、車椅子などの補助具を利用することで、日常生活の自立性と安全性を向上させることができます。
5.日常生活の適応:家庭での作業効率を最大化するために、家の配置を変更したり、特定のタスクの遂行方法を変更したりすることが有用です。例えば、頻繁に使用する物を身体の非麻痺側に置く、一つの作業を複数の短いステップに分割するなどの工夫があります。
6.心理的サポート:脳梗塞後の生活は、身体的な挑戦だけでなく、精神的なストレスも伴います。心理療法、カウンセリング、サポートグループなど、心の健康を保つためのリソースを活用することが重要です。
7.栄養: 健康な食事は、リハビリテーションの成功に大きな影響を与えます。体重管理、血圧や血糖のコントロール、脳梗塞の再発予防など、健康状態の改善に役立つ食事計画を立てることが推奨されます。
8.生活スタイルの改善: 脳梗塞の再発を防ぐためには、健康的な生活習慣を維持することが重要です。禁煙、アルコールの摂取を控える、適度な運動を行う、ストレスを管理するなどの生活スタイルの変更が有用です。
在宅期のリハビリテーションは、患者自身とその家族が中心的な役割を果たします。
しかし、リハビリテーションのプロフェッショナルたちが継続的に指導と支援を提供することで、自宅での生活が向上し、生活の質が維持されます。
また、自宅での過ごし方についても幾つかの重要なポイントがあります。
身体活動: 軽いストレッチングや歩行など、日常的な身体活動を継続することが重要です。無理をせず、自身のペースで活動を行いましょう。また、定期的にリハビリテーションの専門家と連絡を取り、状態を報告することも必要です。
食事: 健康的な食事は非常に重要です。特に、高血圧やコレステロール値を下げる食品を選ぶことを推奨します。これには、新鮮なフルーツと野菜、全粒穀物、低脂肪の乳製品、魚などが含まれます。
心の健康: 精神的な健康も肉体的な健康と同じくらい重要です。リハビリテーションは困難であり、ストレスやフラストレーションを感じることがあります。このような感情は正常ですが、それらがあまりにも強くなったり、長期間続いたりする場合には、心理カウンセラーや社会福祉士といった専門家に相談することをお勧めします。
安全な生活環境: 転倒や事故を防ぐために、家の中をできるだけ安全にすることが大切です。例えば、滑りやすい床にはマットを敷く、手すりやバーを設置する、通路を広く保つなどの工夫があります。
脳梗塞からの回復は時間と努力を必要としますが、適切なリハビリテーションと日々の生活習慣の改善により、生活の質を改善することが可能です。
自分自身や家族が情報をしっかりと理解し、専門家と協力することで、より良い結果が得られます。
脳梗塞後のリハビリテーションは長期的なプロセスであり、患者とその家族、医療チーム全体の努力が必要です。
それぞれの段階での目標は異なりますが、すべての段階での最終的な目標は、患者が最大限に自立し、生活の質を向上させることです。
いかがでしたでしょうか。
突然、家族やご自身または親しい人が脳梗塞になってしまったら、当然困惑してしまうと思います。しかし、病気の事、これからの事を知るだけでも様々なことに心の準備ができると思います。
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原嶋崇人 リハビリベース国分寺院長 運動器認定理学療法士
小児から高齢者、俳優からスポーツ選手のリハビリを経験。ラグビーワールドカップ2019のスポーツマッサージセラピスト、TOKYO2020大会の医療スタッフとして派遣経験あり。スポーツ現場へのサポート、地域高齢者に対しての介護予防や転倒予防事業の講師などを行っている。