小脳出血 バランス機能を取り戻した20代男性
「小脳出血」、脳出血の中でも聞きなれない病名かも知れません。
この小脳という部位。日常生活で絶えず機能している、バランス機能に大きく関与しています。
むしろバランス機能を司っているといっても過言ではありません。
小脳出血は、脳出血の中でも10%にも満たない割合で起こります。割合は少ないですが、この小脳に障害を負うと、日常生活のあらゆる動作に大きな障害を来します。
後遺症としては、比較的身体は動かすことができますが、バランス障害や運動を滑らかに動かすことが困難となるケースが多いです。
今回は、小脳出血の後遺症の特徴から、大事なリハビリのポイントを初めに説明させて頂きます。後半には、当施設に通われていたご利用者様を通し、大きく改善された部分や、生活復帰を叶えた過程を紹介させて頂きます。
小脳は、脳幹の後ろに位置しています。図1のように、脳幹(中脳、橋、延髄)に隣接しており、それぞれ小脳と協同して働く連絡通路が存在します。
小脳は図2のように、大脳小脳、脊髄小脳、前庭小脳に区分されています。発生学的に、古い順番から古小脳(前庭小脳)、旧小脳(脊髄小脳)、新小脳(大脳小脳)という呼称もあります。
この小脳の中でも、出血の部位が異なることで、後遺症も変わってきます。
小脳の役割
小脳の代表的な働きとして、「協調運動」が挙げられます。
協調運動とは、相互に調整を保ちながら、複数の筋によって滑らか、かつ正確に運動することを言います。運動の中でも、動きを協調的に生み出している経路の一つとして、小脳は大きな役割を担っています。協調運動の代表的な検査として、図3の指鼻指試験があります。これは、自分の鼻と、相手の指や一点の標的に対して、指を往復させることで、動作の滑らかさと、標的に対して正確に到達しているかを、検査します。協調性が失われると、手のリーチがぎこちなくなる、標的に対し、大きくズレが生じてしまうといったことが見られます。日常生活では、水が入ったコップを掴み、口に運ぶ。物を棚の上に置く。脚に関して言えば、階段を円滑に登り降りができるといった動作も、協調運動が必要です。
より詳しくみてみると。。。
小脳の働きは、先ほどの小脳の区分にあったように大脳小脳、脊髄小脳、前庭小脳の3つに分けられます。
大脳小脳は、視床と橋を経由し、大脳に行く運動指令を、小脳にてコントロールしています。
次に脊髄小脳は、虫部と半球中間部からなり、体性感覚を統合し、脳幹へ伝達しています。また、小脳虫部は体幹の制御を、中間部は上下肢の制御を行っています。
三つ目の前庭小脳は、耳でとられたバランス等の情報を、脳幹の前庭神経核という部分に情報伝達しています。詳しくは、
脳血管リハビリテーション③でも述べた、耳の前庭感覚によるバランス情報も、小脳を経由し脳幹に集められています。外部からの情報は、視覚や体性感覚、前庭覚が、それぞれの受容器から情報入力されますが、それらの情報が脳の中心部に向かう経路や、情報を統合してまた身体へ送り出す経路は、たくさんあります。
失われた障害経路を特定し、得られやすい、または効果的な方法をリハビリの中で探っていくのも、一つの大事な行程になります。
小脳性運動失調に対してのリハビリ
一様に小脳の後遺症に対してのリハビリは、これが必要とは言いきれません。
脳出血によっては、小脳とまたがり脳幹の一部で侵襲が起こり、片麻痺を呈する場合もあります。まずは、脳画像により侵襲部位を確認することや、身体の症状として、随意性や協調性運動、痺れや感覚の検査を行い、障害部位を具体化していきます。それから、立ち上がりや立った姿勢、バランスの状態や、移乗などのステップ動作、歩行を観察し、総合的に評価していきます。
先程述べた、小脳性運動失調に対しては、失調部位を明らかにしてから、協調性の向上を図る動作も行いますが、個々の細かい筋肉を選択的に使う、そして強化するという行程を踏んでいきます。具体的には、寝返りや四つ這い運動、起立からリーチ動作など、体幹や四肢をより選択的に細かく動かすことで、失調に対し協調性を育んでいきます。座った姿勢や、立った姿勢に対しては、失調により上手くバランスが保てないことに対し、鏡を使用した視覚的情報による代償や、裸足で足底からの感覚を掴みやすくするなど、より本人に効果的に働く感覚入力を行っていきます。最後に、リハビリの中でも一番の量を取りたい動作は、歩行になります。歩行が生み出されるプロセスとしても、小脳は、小脳歩行誘発野と呼ばれる、歩行リズムの生成を担っており、無意識下での姿勢制御や、歩行での選択的な活動を総じて上向かせることができます。注意点としては、固定的な姿勢ではなく、より良い歩行の中で、量を生み出していくことが大切です。
質と量を重ねることで、効果的な学習効果をえることが出来ます。中には、歩行の不安定さが強く、歩行器や手すりを使用して、一時的な期間、日常生活を送ってもらうケースもあります。本来では、支持物はなく歩行改善を目指していきたいところですが、転倒のリスクや1人で行える環境も考慮し、歩行器を使用して歩行量を増やしていく手段も、最終的な目標達成には必要です。
小脳性運動失調
小脳の代表的な特徴である協調運動に関して述べましたが、特に脊髄小脳の役割である、筋緊張の調整は、リハビリを進めていく上で非常に大切な機能になります。脳卒中では、運動神経の経路が絶たれ、片麻痺の状態になるこが、非常に多いケースとしてあります。小脳に関しても、片側での麻痺が出るケースもありますが、随意性、筋出力は良好なことがあります。筋力は発揮でき身体は動かすことができるが、上手く調整して動かすことができないといった特徴が、小脳の後遺症にあります。この協調性のように、四肢や体幹の運動調整が失われ
ることを「失調」と言います。特に脊髄小脳では、脳出血や脳梗塞による侵襲部位により、体幹や上下肢のどこに強く失調の症状が出るか、ある程度定まってきます。
小脳性運動失調の特徴のもう一つとして、眼球運動や視覚的な情報が、失われやすいです。
これは、前庭小脳が、平衡や眼球運動を担っているため、眼球運動が直接的に障害されることもあれば、姿勢制御の中で協調運動が上手く行えずに、周囲へ向きづらくなるといった理由もあります。人は、無意識下、または予測的にバランスを保っていますが、小脳性運動失調がある場合は、身体が上手くコントールできずに”固定的”になってしまいます。固定的という現象は、具体的に一つ一つの筋肉が”選択的”に働かずに、粗大な筋肉を緊張させて姿勢をとるという現象です。
小脳性運動失調に特徴的な姿勢としては、腰や背中から頸部まで、一直線に固定される。身体を捻る回旋の動きや方向転換など、細かい動きが必要な動作に対して、非常に弱いとこも特徴の一つです。また頸部が固定的になることから、頭を回旋して周りを見回すような動きもしづらく、眼球運動の動かしやすさを阻害する悪循環が存在します。頸部から頭部の動き、または眼球運動は、関係性が強く、姿勢筋緊張に対しても、眼球運動への影響は大きい報告されています。
小脳の姿勢制御と、視覚的なバランス保持は、小脳性運動失調に対してのリハビリに、必要不可欠です。
リハビリベース国分寺でのアプローチ
【症例】
20代男性 小脳出血
【ライフゴール】
“バランスが取れるようになって、復職したい。”
【リハビリ期間】3ヶ月 16回プラン
【現病歴】
ある日突然、頭痛が強く起こり、救急搬送され、小脳出血の診断を受けました。出血量が多かったことから、2回の開頭術を施行し、2ヶ月の急性期病院を経たあとに、回復期病院へ転院となりました。6ヶ月の回復期退院後、他施設にて3ヶ月リハビリを行い、その後に当施設でリハビリ開始となりました。
【身体機能・参加】
小脳出血も、中央と左側の侵襲が強く、左上下肢の協調性低下、体幹の筋力低下がみられ、大股の歩行や左右の動揺が見られました。また運動時の回転性目眩、眼球運動障害、複視もあり、バランス機能は困難さが多く見られました。片脚や継足、方向転換時のふらつきがあり、自覚症状として小脳特有のバランスの取りづらさが強くありました。
【目標シート】
【リハビリ内容】
体幹トレーニング
体幹の協調性低下、筋力低下に対しては、寝返りやうつ伏せ、四つ這いなどベッド上でのトレーニングを中心に強化を図りました。特に小脳由来の体幹の失調に対しては、筋力をつけることもそうですが、より細かい、体を捻るなどの協調的な運動が行えるようにアプローチを行いました。
手足に関しても、緊張を取った後に、細かい関節の一つ一つの動きが滑らかに動かせるように、協調運動の練習を行なっていきました。
眼球運動エクササイズ
視覚は、特に左側に複視の症状がみられ、同時に左眼球の外側への動かしにくさがありました。複視や眼球運動障害に対しては、反射を利用した、眼球運動エクササイズを行いました。次第に左側への眼球運動は広がり、視野が広がりましたが、側方の複視は残存しピントが合いづらい部分が残存したため、今後も継続してトレーニングを行ってもらうかたちとなりました。
バランス練習
体幹から下肢の協調運動や、眼球運動から視野の改善を図った上で、複合的なバランス課題を、段階的に行っていきました。継足や、足を閉じた中でのバランス保持練習から、視覚を外し、無意識下でのバランス反応を養いました。小脳の障害は、特に無意識でのバランス制御が課題としてあるため、視覚を無くしたバランスへのアプローチは、とても効果的です。体幹から下肢の滑らかな動きを促すことで、前庭系で得られたバランスの情報を、円滑に手や足へ伝達し、バランスがしっかりと取れるようになります。逆に、裸足になり、足底から様々な感覚を入れ、バランスの反応を養う訓練もとても効果的です。様々な刺激や、バランス課題を、段階的に練習することで、バランスがどんな状況でも取れる自信をつけていきました。
回転性目眩に対してのアプローチ
小脳の前庭系経路の障害では、目眩やバランスの取りづらさが主訴としてあります。目眩の軽減に対しても、バランス動作や回転運動などの刺激を与えるとともに、バランス機能を養うことで、目眩が改善するエビデンスがあります。バランス課題の中で、視野を一周する、頭部の上下、回転運動を行い、目眩に対して我慢できる刺激や、バランス課題を行いました。次第に大きな視野の変化や、頭部の動きに対しても目眩が起こらずに動作が行える範囲が増えていきました。
屋外での動作、バランス確認
小脳の障害のお持ちの方は、お店や人混みでの移動など、様々なものに注意を向けながら歩くことが、とても難しく、体力のいる作業です。視覚や、前庭系のバランス、足の協調性が改善したところで、駅構内や階段、人混みなどの移動にて、動作や恐怖心を感じ、自信がない部分などは、屋外での課題を一緒に行わせて頂きました。やはり駅内での移動は、階段など人の流れの中で、必ずしも手すりなど使える環境ではないため、人の流れや少しの衝突に耐えうるバランス能力が必要です。その都度動作確認や、屋外での単独での活動にもチャレンジしてもらいながら、活動範囲を広げて行ってもらいました。
3ヶ月後、ライフゴール達成
目眩の改善、視野が広がったことと、歩行も大股歩きから、スムーズな歩きを獲得することができました。何より、屋外にて周囲を見ながら歩く、不整地や人混みでもバランスを取り、自信を持って歩くことが可能となりました。バランス課題もリハビリ内の応用的な課題も問題なく行え、ジャンプやランニング動作も獲得していきました。最後は、職場復帰の時期が決まり、それまでにスポーツやフィットネストレーニングなど、より応用的な運動を行って頂き、当施設でのリハビリは卒業する流れとなりました。
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くも膜下出血 水頭症合併 ~歩行獲得までの道のり~
今回は、脳卒中のあらゆる病型の中でも、くも膜下出血について、病型と後遺症につい述べていきます。
また、後半は当施設に通われている、くも膜下出血を呈した方に対してのリハビリを紹介させて頂きます。
くも膜下出血とは?
くも膜下出血は、血管が破れ、脳が覆われているくも膜の内側に、血液がたまり、引き起こされる脳血管疾患の一種です。脳皮質内で引き起こされる、頻度が高い被殻出血や、視床出血とは異なり、脳細胞へのダメージというより、脳が圧迫されることで、歩行や意識障害などの後遺症が引き起こされる病型です。下図のように、出血により血が溜まる部分が異なり、脳卒中の中でも、病型により、症状や予後は様々です。
くも膜下出血は、脳卒中の中でも、1割を占める病型になります。発症頻度としては、男性は50代、女性は60代でピークを示し、60歳以降で女性が占める割合が増えてきます1)。病型として割合は低いものの、予後としては25%以上の割合で予後不良というデータがあり、脳卒中の中でも、重症化しやすい病型と言えます2)。後遺症は、他の病型と比べ、片麻痺などの身体が動かしづらくなる運動麻痺ではなく、意識障害や歩行障害を呈するのが特徴です。
図1:脳卒中の発生機序
重症度や予後の決め手
年々、死亡率から受傷者率は、減少傾向にあり、発症から救急にて搬送されるスピードや、クリッピングなど手術の充実性が減少傾向に働いています。くも膜下出血の多くは、脳動脈瘤破裂により、脳全体に多量の出血が広がります。そのため、救命や重症度を軽くするためには、出血後の時間が勝負となります。
図2のように、くも膜下出血後の処置は、以下の割合を示します。初めに出血後、開頭や内視鏡手術を行わずに、経過をみることを保存と言います。次に動脈瘤に対しての処置は、コイルやクリッピングと呼ばれる処置があります。コイルは動脈瘤の中を詰めていくことで、動脈瘤のふくらみの部分に血流がないように遮断します。クリッピングは、動脈瘤の手前を、袋を閉じるようにクリップで止める術式になります。ドレナージとは、くも膜下出血の急性水頭症を引き起こさないためにも非常に大切な処置になります。脳内の出血量が多いと、脳室の拡大も認められ、水頭症を合併するケースがあるからです。
大まかな予後予測になりますが、予後良好は58%、著しい予後不良は28%と全国をみてもこのような割合を示します1)。この著しい予後不良の中でも、正常圧水頭症を合併しているケースが多いです。
クリッピング
コイル
この先は、当施設に通って頂いているくも膜下出血術後、水頭症を合併した方の、リハビリ過程をご紹介します。
【症例】50代男性 くも膜下出血後遺症 正常圧水頭症合併
【ライフゴール】外で歩けるようになりたい。
【リハビリ期間】再手術の期間を入れ1年 24回プラン × 2
【現病歴】
くも膜下出血呈し、開頭術施行。その後、6カ月の回復期病院の入院期間を経て、当施設にてリハビリを継続。リハビリ開始から3か月経過し、正常圧水頭症と脳内血管のバイパス手術のため、再手術となる。その後自宅退院し、状態が安定し、再度当施設にてリハビリ再開となる。
【身体機能・参加】
リハビリ開始時は、車いす移動でした。前傾姿勢が強く、倒れないように多くの介助が必要で、初めは10m程度の屋内歩行がやっとな状態でした。水頭症を合併し、覚醒や注意など高次脳機能障害もあり、発語も乏しかったです。歩行障害が残存し、予後不良との診断の中でしたが、運動量を多く取り、介助下でしたが最大300m程度屋外での歩行が行えるようになりました。その後、水頭症の経過が変わらないため、再手術を行い、回復を待って、当施設にてリハビリ継続となりました。
【ライフゴール達成】
現在は、屋外歩行見守りで、最大1km程度、目標を達成してきました。これからは、さらに歩行量を延ばしていくことと、単独へ安定した歩行が行えるように、もう1回継続してリハビリ行っていきます。諦めずに、目の前の課題を一つずつクリアし、より高い目標を目指していきます。
【Before & After動画】
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視床出血 後遺症に打ち克つ方法
視床とは?
視床とは、脳の間脳と呼ばれる部位に属しています。嗅覚を除く聴覚や視覚、その他様々な感覚を、大脳新皮質へ繋げる重要な場所です。間脳には、視床の近くに、視床下部、松果体、脳下垂体があり、ホルモン分泌の中枢も担っています。
上の図のように、大まかな部位になりますが、間脳の上には、大きな大脳皮質があり、下方には、脳幹と脊髄が繋がっています。これらの間に視床があるように、脊髄や脳幹から受け取ったあらゆる情報を、上の大脳皮質へ繋げています。
脳幹は、
脳血管リハビリテーション➂(バランス編)で説明させてもらいましたが、バランスに関して重要な役割を果たしています。この脳幹でまとめられたバランスの情報や、あらゆる感覚が、この視床を経由し大脳皮質へ運ばれています。
視床は、さまざまな感覚を司っていると述べましたが、具体的にはどの機能があり、どのような動作と関係しているのかを具体的にみていきます。
人は、身体を動かすとき、脳から指令を送り、自分の意思で身体を動かしています。
物を掴む動作を例に挙げると、物の形状を確認し、持ち方や挙げ方を無意識下に考え、動作を実行しています。次に、物を持ち続ける動作として、手で把持をしながら落とさないようにする、または手の平でバランスを取る。これは、手の皮膚に触れる感覚や、それぞれの関節の位置情報を得て、手のコントロールをしています。
この視覚情報と、手の感覚は、どちらも必要な情報です。仮に目をつむりながら、物を持とうとする時、人は、対象物がどんな物なのか、情報がないまま物に触れることに、恐怖心が生じてしまいます。
手探りで対象物の質感や、形状、大きさや重さを理解し、初めて、対象物の持ち方を頭で構想することが出来ます。目をつむった状態で、手のひらに置いたボールを落とさないようにすると、すごく難しい作業になってしまいます。人は無意識のうちに、動作一つの中で、視覚から得た情報や感覚を統合した上で、効率的に動作が行われています。
体性感覚は、下の図1の大きく分けて三つに分類されます。
初めに、物に触れた時に表面の滑らかさ、粗さを感じることができる、皮膚の表在感覚が一つ挙げられます。この表在感覚は、温度や痛みを感じる情報(温痛覚)も含まれています。
次に、物を持つときの指や手首の位置は、位置覚と言われ、深部感覚に属します。深部感覚には、位置覚の他に、運動の方向を認知する運動覚、振動を感じる振動覚が含まれます。
最後に、皮膚に2点同時に触れて認識する感覚(二点識別覚)、皮膚上に書字された文字を認識する(皮膚書字覚)を複合感覚と呼びます。この表在感覚、深部感覚、複合感覚の総称を体性感覚と呼びます。
視床は、これらの体性感覚や、バランスを保つための情報をまとめ、大脳皮質へ情報を送っています。
視床の役割は?
視床は、その他にも様々な機能を担っています。脳画像の断面図をみると、視床のかたちは丸みを帯びていますが、この丸のなかで、解剖学的に小分けがされています1)。
このように視床といっても、一つの部位が単一の機能を担っている訳ではなく、部位により機能が異なります。脳出血においても、血種がどの部位を阻んでいるかにより、障害される機能も異なってきます。
脳卒中において、起こったときや直後は、覚醒が低下したままなことや、回復しても短期間の記憶が曖昧なケースが多々あります。この視床においても、後方に血種が行き届いてしまうと覚醒レベルの低下が顕著にみられるケースがあります。
他にも、部位により視覚、聴覚、痺れや感覚異常など、後遺症として生じるケースが多いです。
次は、この視床が脳出血によって侵襲されたときに、具体的などのような症状がでるか。また全体の脳出血の病型とも比較しながらみていきます。
脳卒中の病型は、脳卒中データバンクによると、脳出血の割合は全体の18.5%を占めます。脳出血部位の割合は、被殻(29%)、視床(26%)、皮質下(19%)、脳幹(9%)、小脳(8%)という順番になっています。脳出血の中でも、被殻出血、視床出血を呈する割合は高く、リハビリを必要とする方の中でも、両者を担当させて頂くことが非常に多いです。上の図は、脳の横断面になりますが、被殻と視床は近い部分にあります。中大脳動脈は、脳の側方を流れ、そこから細かい分岐した血管が破裂することで、被殻や視床部位に出血が起こります。この出血が固まり血種となったものが、手術で除去を行わない場合は、脳内に残ります。この血種の大きさにより、予後はある程度決まってきます。具体的に、視床出血では、血種量が10mLをこえると、予後が不良という結果が出ています2)。
先ほど述べた、視床の細かい部位や役割がそれぞれありましたが、実際の出血の場所により、後遺症の症状も様々です。視床出血にて傾向や障害を、下記にまとめます。
運動麻痺
被殻出血や視床出血でも多くみられる片麻痺ですが、脳出血が起きた反対側の半身において運動が行いづらい状態を指します。出血部位や量によって、麻痺の症状も様々ですが、後遺症として、痙性や固縮と呼ばれる筋緊張の高さにより、運動が行える範囲も大きく変わってきます。筋緊張に対して、装具が必要か、それとも筋力や動作を改善させることで、装具なく歩行がおこなえるかも、この運動麻痺の状態により、予後が変わってきます。
感覚障害
運動の経路とは、別に脳神経は感覚の経路があります。先ほど、体性感覚や痺れの話があがりましたが、片麻痺で片側が痺れる、温かさや痛みを過剰に感じてしまう異常感覚などが挙げられます。また視床は、バランス機能を担っており、身体は動かせるが、バランスが上手くとりづらいといった症状がみられるケースがあるのも特徴です。あらゆる感覚が脳幹で統合され、視床を通ります。各動作を遂行する上でも、この感覚障害に対してのアプローチは必須となります。
運動失調
先ほどあった運動障害とは別に、筋出力は良好だが、上手く動かすことができない状態を、運動失調と呼びます。協調性運動障害とも表されたりしますが、協調的に四肢や体幹が、円滑に動かせないことを指します。視床出血後の後遺症としては、ごく稀なケースになります。運動麻痺とは混在しやすいですが、筋力が発揮しづらい運動麻痺の部分と、失調によりコントロールが上手く行えない部分を、見極めながら動作に対してアプローチ行うことが大切です。他の脳幹や小脳出血では、この運動失調の症状がみられるのは、典型例ですが、視床出血においても、協調性運動は確認していく必要があります。
視床痛
視床特有の感覚障害もですが、この麻痺側には視床痛と呼ばれるし、慢性的な痛みがみられるケースがあります。これは、感覚路が脳へ上行する過程で障害がおこり、感覚が過敏に痛みとして知覚されている状態になってしまっています3)。
眼球障害
眼の症状は、先ほども出ましたが、視床出血においては、高頻度の後遺症になります。この障害は、視床内の出血の部位により、眼球運動障害のパターンがいくつかあります。視床には、眼球運動と呼ばれる、眼の周囲についている細かい筋肉を、コントロールする機能があります。血種により、その機能が障害されると、以下の縮瞳、上方注視麻痺、内外方視、共同偏視、開散外方視などの眼の症状がみられます。眼球運動障害と付随し、出血の反対側の注意障害、瞳孔不動や眼瞼下垂もみられることがあります。
視床性失語
視床には、言語に関連する部位もあり、視床出血により失語を呈する、視床失語症がみられることがあります。視床性失語とは、自発性は乏しく、流暢に話すことが出来ない。復唱や音読言語理解は良好に保たれているのが特徴です。類似しているものとして、超皮質性運動性失語が挙げられ、こちらも自発言語が少なく、非流暢で、言語理解や復唱は良好といった同じ特徴を持ちます。
視床性無視
半側空間無視は、さまざまな脳の部位の損傷から引き起こされ、その部位によって種類や症状も様々です。視床出血による半側空間無視は、一過性の症状としてみられることが多いのも特徴としてあり、年齢によって予後が大きく変わりうるとも言われています4)。
視床出血に対してのリハビリ
視床出血といっても、血種の大きさにより麻痺のレベルや、後遺症は様々です。脳血管疾患のリハビリアプローチは、個別性が強く、共通した方法が全ての方にとって有効とは言い切れません。ここでは、今まで視床の働きから、実際の視床出血の後遺症に対して、実際に有効なアプローチ方法をいくつ挙げていきます。
★覚醒状態を上げる
覚醒度合いも、特に視床に影響された部位によって、度合いが異なりますが、共通して覚醒を上げる働きをすることがリハビリでは可能です。まず、運動量を総じてあげていくこと。運動量を上げることで、当然のことですが、脳内の血流量は多くなり、注意や反応が改善されます。注意障害や、半側空間無視が併発していれば、なおさら、課題の中でもたくさんの視覚的な刺激や、感覚的な刺激を与えることで、覚醒や注意力をあげるアプローチはたくさんあります。リハビリ課題や運動のシーンに限らず、本人の好きなこと、注意が向きやすいことを行うことも、覚醒を上げる一つの手段です。好きな音楽を流す、好きなスポーツなど簡単にできるアクティビティーを行う。好きなものに対して心が動きやすいように、身体を動かしやすくする環境づくりも非常に大切です。最後に、覚醒を上げ続け、自身でできる活動を増やしていくことで、運動量がふえるという良い循環が生み出すことがポイントです。覚醒状態の改善に長期的にアプローチすることが可能となります。日常生活でも、ただできない日々を過ごすのではなく、限られた環境の中で、本人の覚醒を向上させる工夫は無限にあります。
★感覚に対してのアプローチ
視床は、様々な感覚が統合し、大脳皮質で運動へと変換されるための大切な中継地点になります。視床出血後の後遺症として、感覚異常やバランス機能を含めた感覚が捉えづらくなることが特徴です。運動麻痺により弱くなった筋力に対し、筋力向上を図るリハビリもそうですが、それを実用的に使えるようにするために、感覚障害に対してのアプローチは必須となります。
実際の感覚へのアプローチとはどのようなものがあるでしょうか。一つに、皮膚の感覚が鈍くなってしまっている部分に対し、床反力による荷重感覚や、物に触れることで、感覚を入れる方法があります。感覚が鈍くなっている部分に対して、よりわかりやすく感覚を入れることで、その動作に合わせて麻痺側の筋出力があがり、後に獲得すべき動作へと発展してきます。視床出血後遺症で、感覚が大きく障害されているという問題があっても、鈍くなっている部分を少しずつ動かすことで、筋力強化や、動作獲得へと必ずつながっていきます。時間をかけても、改善が見込めることが、リハビリの強みとしてあります。
★実際のバランス訓練
人それぞれ、麻痺のレベルから獲得すべき日常生活レベルも広がりがあると思いますが、特に何かを一人で自立して行う、または介助量をできるだけ少なくしていくためにも、バランス機能を上げるリハビリは必須です。視床出血では、脳幹で統合されたバランスの情報が障害されてしまうため、先ほど述べた感覚障害も含めて、克服していくために非常に大切な訓練の一つです。感覚障害に対してのアプローチや、半側空間無視、注意障害など、高次脳機能障害が併発しているケースは特に、バランス機能に対して弱い部分を少しずつ克服していく必要があります。このバランス機能を改善していくプロセスで、大切なことは、残存している機能を上手に活用していくことが、成功への鍵です。バランスが取りづらい、半側空間無視のある右麻痺に対して、視覚や注意を向ける。感覚を入れながら、麻痺側の脚でコントロールを図らせる。バランス課題といっても、屋外や電車、バスなどの公共交通機関を含めた難易度の高いバランス機能が求められる場面もあります。それぞれの難易度に合わせた課題をこなしていく過程はそれぞれありますが、弱点としてみられる障害に対して、細かくアプローチを行っていくことが、リハビリの中で非常に大切です。
【参考文献】
1) 酒向正春. (2016).リハビリに役立つ脳画像.p,p148-149.
2) 若杉洋. 被殻出血および視床出血の予後に関する研究. 日大大誌. 第54巻
3) Tsubokawa, T. (1992). Thalamic Pain. Pain inducing mechanisms. Pain research 7(1992)1-8.
4) 前島伸一郎.(2006).半側無視の下位分類. 高次脳機能研究26 (3):235~244, 2006.
それぞれの目標に見合ったリハビリの到達点
今回、視床出血という、脳出血のなかでも高頻度に起こりうる病型に焦点を当て、機能から起こりうる後遺症、またそれに対してのアプローチを紹介してきました。視床出血の後遺症は、幅広くある視床の機能の中でも、障害される特徴は人それぞれです。リハビリの取り組みは、後遺症に対しての初期評価から、本人やご家族の希望に沿って進められます。初期評価から、相談というかたちで、希望やリハビリの必要性を聞かせてもらった後に、予後予測として、実際にどのくらいの長さで、どこまで到達することができるかを、提示していきます。どんな麻痺のレベルや症状であっても、できることはたくさんあり、大きく改善がみこめるケースも多々あります。
麻痺の症状や、後遺症の度合いを一度評価させて頂き、一緒に目標を共有しませんか?
リハビリベースでは、体験にて、お身体の状態から、現在の困りごと、悩んでいる部分に対して、多角的にアプローチを行っています。多角的なアプローチとは、諦めていた、もう出来ることは少ない、といったケースに対しても、様々な角度からリハビリを施行して、突破口を見出していく作業になります。
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尾作研太 理学療法士
回復期病院にて4年間勤務、主に整形外科や脳血管疾患、脊髄損傷のリハビリに従事。海外の大学にて、ヘルスケアの学位を取得後、訪問リハビリと地域の介護予防に参画。脳血管疾患の方の動作獲得や、装具を含めた歩行の修正、社会復帰までサポートしている。
冬は、麻痺側が硬くなる?その解決法とは。
「夏、秋と順調に来ていたのに、冬になり思うように手足が動かなくなってしまった。」
「寒くなるにつれて、麻痺側が冷たくなり、筋肉が硬くなってしまっているような気がする。」
脳卒中後遺症をお持ちの方は、冬の気温低下に伴い麻痺の後遺症による筋緊張に悩まされることが多々あります。
これは、気温が低くなると、麻痺側の緊張が強まるメカニズムが証明されております。冬は低い外気温のため、避けては通れない現象ともいえます。
そうは言っても、冬にリハビリのパフォーマンスを下げることは避けたいですし、リハビリで機能改善を図るために、対策をしていくことは、十分に可能です。
今回は、後遺症において筋緊張が高くなるメカニズムから、そのオススメの対策方法ベスト5を、ご紹介させて頂きます。
後遺症による麻痺側の筋緊張とは?
脳卒中後遺症として、脳梗塞や脳出血を起こした反対側に片麻痺を呈し、筋緊張が高くなるケースが非常に多いです。この麻痺の後遺症は、”弛緩性麻痺”、”痙性麻痺”の2種類があります。言葉の通り、前者は麻痺により筋肉が弛緩し、力が入りづらい状態を指します。後者の痙性麻痺は、脳卒中により持続的に筋収縮が起こり、筋緊張が高い状態を言います。この麻痺の後遺症による、筋緊張の高さは、「痙性」、「固縮」の2種類があります。この2点の違いは、神経の経路によって分類されますが、両者の境が不明瞭なケースもあり、総じて筋緊張が高く、運動に支障を来す後遺症として、解釈されます。
この痙性や固縮といった、脳の神経障害は、持続的に筋肉が収縮するように神経伝達されており、服薬による薬物療法や、リハビリによって改善させる運動療法、電気刺激なども含まれる物理療法が手立てとして挙げられます。この物理療法の中には、温熱療法が含まれ、麻痺側を温めることで、筋緊張を緩和する効果が証明されています。
冬季に筋緊張は高くなる?
麻痺の後遺症をお持ちの方は、経験したことがあるかも知れません。日により、麻痺側の筋緊張の状態が変わる、特に冬は硬くなってしまうといった経験はありませんか。逆に、温かいお湯につかり、筋緊張が高い部分を温めることで、筋肉がほぐれる感覚がありませんか。これは、実際に筋緊張が緩和されるメカニズムとして証明されています。
先ほど述べた痙性や固縮といった筋緊張は、脳卒中により脳の神経路が障害され、筋肉が持続的に収縮するように持続的に指令がだされている状態です。温かい物や、温水に浸かることで、持続的な収縮指令を弱め、筋緊張を緩和する働きがあります。
筋緊張の状態は、外気温に非常に左右されやすく、冬季は痙性麻痺をお持ちの方は、歩きづらさや、動作のしづらさが特にみられることが多いです。リハビリの過程では、なるべく筋緊張を落とした状態で行いところですが、冬季は通常よりも筋緊張が高い状態からリハビリを行うため、苦労されるが方が多いです。
冬季は筋緊張があがる傾向ですが、リハビリの歩みを止めることはありません。筋緊張をコントロールするには、いくつか大切なポイントがあるので、次に述べていきます。
冬季の筋緊張、克服方法ベスト5
1. 体を温める
すごく初歩的なことかもしれませんが、身体を温める方法や、その後に出来ることがたくさんあります。お風呂に浸かり、身体が温まった後に、ストレッチングを入念に行います。先ほども述べた温熱療法の効果として、筋緊張が緩和されたタイミングで、筋肉を伸ばすことで、可動域が広がり、動作がしやすくなります。もう1点は、動いて身体の代謝を上げることです。筋緊張が高いと動作がしづらく、活動量が低下しがちですが、筋緊張を上げる悪循環となってしまいます。硬くなった筋肉を少しでも動かす。そして温かくなってから、ストレッチングで柔軟性を高めることが、悪循環から抜け出すコツです。
2. 相反抑制
先ほども述べた、麻痺の筋緊張は持続的に収縮が指令として送られています。指や腕、膝や足首に硬さがある場合は、反対方向へ多く動かすことで、筋緊張を緩和することができます。これは、相反抑制と呼ばれ、筋緊張が起こっている反対の動きをすることで、緊張が和らぐ機序を利用した、有効な方法です。膝が伸び、足首も伸び切りやすい場合は、装具を装着し、立ち上がり動作などで、筋緊張をコントロールしてみて下さい。肘や肩が曲がり固まりやすい場合は、肘を伸ばす運動と、肩を真っ直ぐ挙上する動作を入念に行ってみて下さい。必ず動作を始める前に、準備運動として相反抑制を行うと、格段と筋緊張が落ちる感覚を味わえると思います。相反抑制が上手く行えず、動かすことが難しいケースは、下の手段があります。
3.電気刺激
よく低周波治療器を、耳にしたことはありませんか。電気刺激でも、周波によっては逆に筋収縮を強く起こすこともできますが、低い周波数では、筋緊張を緩和させる働きあります。低周波と呼ばれるものですが、麻痺の筋緊張に対しても、緩和させる働きがあるため、動作を行う前に痙性に筋緊張を抑えることで、本来の正しい動作へ導くことが可能です。
4.装具による抑制
筋緊張を抑える方法として、手や足の装具が挙げられます。手では、指を巻き込んでしまうことに対して、スプリントなど伸ばした状態を保つ器具があります。ナイトブレースとも呼ばれますが、夜間の手を使用しない時間帯に、筋緊張により可動域制限が生じないように、伸ばしたまま固定することができる器具になります。足も同様で、足首に対して、足関節用のナイトブレース装着し過ごして頂くこともあります。
5.電動マッサージャーの活用
筋肉をほぐす機器として、様々なマッサージ機器がありますが、麻痺の痙性に対しては、振動療法と呼ばれる振動をかけることで、筋肉が弛緩することが証明されています。振動マッサッジャーを筋緊張の高い部分にあてるだけで、筋緊張を和らげることができるので、試してみて下さい。
リハビリベースメソッド体験
脳卒中の後遺症に対して改善を図ることは、リハビリの即時的な効果も得られますが、生活の再獲得を図るには、長期戦となります。一度、リハビリベースにて体験をして、後遺症に打ち勝つリハビリをしてみませんか?
麻痺などの後遺症に対しての克服方法、リハビリのプロセス、予後予測まで。個々のリハビリを、目標達成までオーダーメイドで組ませて頂きます。
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脳卒中 後遺症 電気刺激IVESの効果は!?
脳出血、脳梗塞の後遺症として、特に悩ましいこと。
「手足が思うように動かない」、「上手くコントロールができない」。
脳のダメージにより、運動神経の経路が絶たれ、自分の意思に沿って関節や筋肉を動かすことができない症状が、後遺症の悩ましいことの一つとして、必ず挙げられます。
意思に基づいて筋力が発揮されることを、“随意性”と呼びます。この随意性が後遺症により得られない事で、上肢では手が持ち上げらない、下肢では思うように歩けないといった症状がみられます。
それでは、この随意性の低下に対して、どのようにリハビリをしていくのか。手段の一つに電気刺激が挙げられます。
今回は、脳卒中の後遺症に対して、電気治療器として有名なIVESを使用し、実際に当施設での治療効果をお見せしていきます。
電気刺激とは
電気刺激とは、運動麻痺による後遺症で、随意性が低下した箇所にに対し、筋と神経に電気を流して動かせるようにすることを指します。リハビリの方法は、「脳卒中リハビリテーションガイドライン」と呼ばれる、脳卒中患者に対してエビデンス(科学的な根拠)が取れた、様々なリハビリ方法の推奨度が書かれたガイドラインが存在します。このガイドラインは、推奨度(ABSDE)で表現され、電気刺激療法は、グレードBに値します。
この電気刺激は、ガイドラインの中で大きく二つの効果を挙げています。一つは“随意性の向上”。もう一つに、“痙性の抑制”。
一つ目の“随意性の向上”は、意思とともに筋肉が動かしやすくなることを指します。
もう一つに“痙性”とは、後遺症として麻痺のある手足に筋緊張が高くなっている状態をいいます。これも、後遺症の重症度や、脳の損傷部位により症状は別々ですが、中等度から重度の方は、痙性も強くあります。この痙性を抑制するのも、電気刺激を用いることが推奨度として高く挙げらえれ、実際に筋緊張を落とすことが可能です。
実際の電気刺激による効果
今回は、当施設で麻痺の後遺症に対して電気刺激を行った改善例を紹介します。
先程述べたた電気刺激の働きとして、“痙性の抑制”と“随意性の向上”を図り、動作獲得を果たしました。
■下肢
麻痺のレベルは、人ぞれぞれですが、初めにつま先が上がらない状態であった足首が、電気刺激を用いる事で、上がるようになりました。これは、本人の歩行練習などを通したリハビリの効果も含まれますが、初めにつま先を上げる動作感覚を養ったのは、電気刺激の助けが大きくありました。
開始時:つま先が上がらない。
↓
1ヶ月後:つま先が上がり初める。
↓
2ヶ月後:足の上げる下げるの強弱がつく。
↓
3ヶ月後:指が上がり始める。
■上肢
もう1人の方は、上肢に麻痺の症状があり、指を伸ばすことができない部分に対して、電気刺激を用いました。この方も、痙性があり、指を曲げた状態から伸ばす切り替えに困難さがあったため、指を伸ばす方向に電気刺激を送る事で動作獲得を図りました。
開始時:肩をまっすぐ上げる。
↓
1ヶ月後:肘をまっすぐに伸ばす。
↓
2ヶ月後:手首と指を伸ばす。
↓
3ヶ月後:個々の指を伸ばす。
上肢は、肩から複合的な動きにより、最終的に指の細かい動作が得られます。段階的に身体の中心から近い肩から肘、手首と動作獲得を図り、最終的な指の細かい動作は、特に電気刺激により、細かい動作の感覚を養いました。
動きや筋力を上げるリハビリベースメソッド
筋力を上げるためには、食事を含めて様々な方法がありますが、特に脳卒中の後遺症をお持ちの方に対しては、大きく分けて二つのポイントがあります。
それは、”発火頻度”と”感覚入力”です。
発火頻度=筋肉を動かす頻度
感覚入力=力を入れる場所とタイミングの再学習
発火頻度とは、運動麻痺により、動かしにくくなった筋肉に対して、出来るだけ多く動かす頻度のことを言います。これは、筋力トレーニングとは別で、負荷をかけずとも、できるだけ筋肉と神経を結びつける事で、筋力をより発揮しやすくします。
感覚入力とは、脳卒中の後遺症として運動麻痺の他に、感覚の低下が挙げられます。皮膚の感覚や、各関節の動きが把握しづらいため、どこでどのタイミングで筋肉を動かすか分かりづらい状態にあります。感覚の低下に対しては、皮膚の感覚や電気刺激を用いる事で、正しい場所やタイミングで、筋発揮を最大限引き上げていきます。
二つとも、難しい言葉に聞こえますが、たくさん動き、動作学習を多く重ねるこの二つをリハビリベースでは強みとしています。やはり、リハビリ過程で、後遺症の動かなくなった手足を、再び蘇られせるためには、運動量が必要です。運動量といっても、質を伴わないと意味がありません。特に、脳卒中の後遺症のような、感覚低下に対しては、皮膚や関節に感覚を入れること。そして正しい動作で行えているか、という点に重きを置いています。
そのためには、後遺症の失われた感覚に対して、電気刺激を送り、正しいタイミングで筋肉を動かせるように促していきます。ここでIVESのパワーアシストモードにて、その感覚を養い、正しい動作が行えてきたら、運動量を多くとる事で、劇的な筋力向上を図っていきます。
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電気治療器IVESの強み
IVESは、電気刺激を送る作業の中でもいつくかの機能があります。代表的な二つの働きとして、単純な電気刺激を送り続けること、もう一つに動きに合わせて電気刺激を送ることもできます。
当施設で、リハビリに励まれた2名の方も、この二つの機能を用いて、動作獲得を図りました。脳卒中の後遺症には、痙性と呼ばれる筋の緊張があり、筋緊張を和らげることが、随意性や動作を獲得する鍵となります。
電気刺激を送り続ける、ノーマルモードにて痙性を緩め、動作練習では、動きに合わせて電気刺激を送る、パワーアシストモードにて動作中の筋活動を促していきます。
様々な電気治療器がある中で、動きに合わせて電気刺激を送ることができるのは、IVESの特徴であり、脳卒中の後遺症で、動作獲得を図る過程では、大きな助けになります。
痙性に対してノーマルモードを使用し筋緊張の抑制
IVESのパワーアシストを用いた歩行パターンの修正
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50代男性 脳出血後遺症 〜復職、ランニング獲得までの道のり〜
【症例】
50代男性 脳出血 左片麻痺
【ライフゴール】
“スムーズに歩けるようになって、復職したい。”
【リハビリ期間】3ヶ月 24回プラン
【現病歴】
突如、左半身が動かなくなり、救急搬送される。M R Iにて左被殻出血を認め、血腫除去術試行後、回復期病院5ヶ月入院。退院後直後から、当施設にてリハビリ継続の流れとなる。
【身体機能・参加】
回復期では、ADL自立し退院となりましたが、屋外での歩行は足を引きずり、バランスとしても不十分で恐怖心が強い状態でした。今後は工場での仕事再開を目指しており、そのために歩行の改善と、バランスの獲得が必要でした。
麻痺のレベルBrStage4レベルで、歩行は膝や足首が曲がったままでの歩行パターンが根強くありました。足を引きずってしまうため、連続歩行は500m程度でした。手も軽度の麻痺があり、筋緊張はないものの、細かい動作は困難さがありました。
初期評価の段階で、歩行を修正、短いランニングが出来るまで希望があり、以下の目標を立てました。
【目標シート】
脳卒中の歩行パターンとして、股関節から足首が曲がったままでのStiff kneeの歩行パターンに対して、各関節の分離運動の促通を中心に行い歩行の修正を図りました。そのために、脚のストレッチングや徒手療法によって可動域の改善を図ることと、脚の各関節が滑らかに動けるように、協調運動練習を多く行いました。
分離運動が次第に行えるように、各関節が速いスピードで滑らかに動かせるようになったタイミングで、ジャンプ動作など速い協調スピード練習を開始しました。速いスピードで足首から膝のコントロールが行えるようになったことでランニング練習もこなせるようになりました。
【Berfore& After 動画】
【ライフゴール達成】
突然の脳出血から、手術を無事に終えて、回復期リハビリ病院にて6ヶ月を過ごした後、すぐに当施設を訪ねていただきました。後遺症がありながらも、復職への思いが強く、3ヶ月間、当施設でリハビリを励まれました。
ご本人「リハビリ病院の後も、諦めずに最後までリハビリを続けて良かった。」
ご家族「走れるようになるなんて信じられなかった。無事、復職できて安心しています。」
ご家族の献身的なサポートもあり、脳出血から懸命にリハビリを励まれ、病前の生活に戻ることができたことを、とても嬉しく思います。
【復職支援相談】
リハビリベース国分寺では、「身体が思うように動かず、今は復職が難しい。」といった方々に対しても、リハビリで身体機能の底上げを行い復職を果たしている方々がたくさんいます。
・通勤に必要な歩行能力
・電車通勤に耐えるバランス機能
・パソコンなどの細かい手の作業
・力のいる介護職や工場などの勤務
疾患や、身体の症状は、皆様それぞれです。まずは、職場での動作を細かく聞き取りし、確認していきます。そこから現在の身体機能や、動作で困っている部分を洗い出し、着実に弱い部分の強化を行い、動作獲得を図っていきます。
自費のリハビリ施設の強みとして、段階的に慣らし通勤から開始し、完全復職まで時間をかけてフォローアップすることができます。復職を果たした段階でも、「やっぱり肩の痛みが出てくる。」、「仕事の後半で歩きが不安定になってくる。」といった、悩みも多々出てきます。復職後、定期的に動作や身体の状態を確認し、フォローアップしていきます。
復職にあたり、お困り事がある場合は、是非一度、体験で私たちと、目標を共有しませんか?
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Sportip社さんの導入事例で当施設が紹介されました!
先日受けたインタビューが記事になりました!Sportip社
当施設で導入している、AIによる姿勢や歩行解析ソフトSportip proを開発された、Sprotipさんから先日インタビューを受け、当施設の【導入事例】が記事になりました!
なんと!インタビュー記事第1号です!
脳梗塞や脳出血の後遺症の方、腰痛や義足の方にもSportip proを用いて幅広く評価の参考にさせていただいております。
Sportipを体験で行いたい!
そんな方もいらっしゃっております。
当施設ではリハビリの新しい選択肢として、機能改善に向けたトータルアプローチを行っております。
・整体に通い続けているけど治らない
・スポーツジムでは医療知識のある専門職がいないくて相談できない
・整形外科では時間が短い
・介護保険のリハビリに満足できない
など
今の身体に満足できていない方は是非一度ご相談ください!
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リアルな脳卒中が治る確率
リアルな脳卒中が治る確率
「脳梗塞が起こった。今後生活はどうなってしまうのだろう。」
「今後、どのくらいの確率で、回復するのか。」
今回は、脳卒中に起こりうる死亡率から、後遺症の重症度、予後予測まで、脳卒中のリアルな現状を述べていきます。
脳卒中と言っても、「脳梗塞」や「脳出血」によって、死亡率から、重症度による治る確率も、ある程度傾向が決まっています。また、脳卒中は、梗塞が起きた部位や、出血した量により、意識レベルや、麻痺の状態、高次脳機能障害など、症状は様々です。
脳卒中の分類から、初期評価、それから予後どれだけ動けるようになるのかを、数字を持って述べていきます。
脳卒中患者の生存率は?
脳卒中の中には、どの病型も死に至るケースがある程度の割合でてきます。ご存知の通り、日本でも死亡患者のうち、脳血管疾患が第4位と上位にあります(厚生労働.2021)。特に、50歳以降になると、心疾患に続き死因第3位に必ず上がってきます。
重症度の確率にも関係しますが、生存率は年齢、全身の健康状態、脳卒中の病型、治療のスピードなど、いくつかの要因によって大きく異なります。「脳出血が起こり、発見が遅くなってしまった」、「心疾患から、脳梗塞が起こってしまった。」など、脳卒中に至る背景からも、治る確率は決まってきます。
脳卒中の代表的な病型として、脳梗塞(47.9%)、脳内出血(26.5%)、くも膜下出血(9.5%)、その他の脳血管疾患(2.2%)と、死亡率の割合が挙げられます(厚生労働省「人口動態統計」.2019)。脳梗塞は、脳卒中の中でも、母数として発症頻度が高く、死亡する割合も脳卒中の中で一番多く占めます。
全体の数としては、脳梗塞が一番に上がってきますが、急性期の病院では、違う傾向にあります。
国立循環器病研究センターの報告では、院内の脳卒中発症後の死亡率は、脳梗塞(4.4%)、脳出血(16%)、くも膜下出血(26.6%)という順に示されています。脳梗塞に比べ脳出血、さらにはくも膜出血は、病型として重症度や、死に至るリスクが高いと言えます。
次は、より細かい病型から、脳卒中が引き起こされやすい傾向をみていきます。
脳卒中の病型別の特徴
脳卒中データバンクによると、脳卒中の病型、発症頻度としては、アテローム血栓性脳梗塞(24.1%)、ラクナ梗塞(22.7%)、心原性脳塞栓症(19.2%)。次いで、高血圧性脳出血(13.7%)、一過性脳虚血(TIA:5.8%、くも膜下出血(6.4%)、その他脳出血(3.0)の順にあります。
特徴としては、心原性脳塞栓症の場合、60歳以降で年代別に急増し、80歳は30%と起こる頻度が高くなっています。心原性能塞栓症とは、心臓にできた血栓が脳に運ばれ、脳血管を詰まらせる病気です。
具体的な心疾患として、9割以上が心房細動と呼ばれる不整脈から起因し、心臓の老化に伴い増加する脳卒中の代表的なタイプになります。
心原性脳塞栓症の特徴として、重症度が比較的高く、多く介護を要する傾向にあります。
(厚生労働省「人口動態統計」2019年から抜粋)
脳出血、くも膜下出血では、60歳以下で発症する頻度が最も高く、それぞれ20%、13%と、他の病型と比較し、若い年層に起こる頻度が高いのが特徴です1)。
また下図の重症度スケールNHISSでは、11項目4段階で、麻痺の重症度を分類できる評価があります。この評価は、脳卒中患者に対して予後予測にも有で、信頼性が高いことが証明されています2)。
重症度分類は、軽症(1-5点)、中等症(6-14点)、重症(15-24点)、非常に重症(25点以上)となっています。脳出血の場合、5段階中のもっとも重い23点以上が、25%を占めております。
先程述べた心原性脳塞栓症も、20%と重症化する高い割合を示しています。他の病型では、TIAの場合は、4点以下の軽症が90%、ラクナ梗塞では70%と、軽症レベルが非常に多いのが特徴です。
歩行が可能か、予後判定
先程は、脳卒中の重症化分類としてNIHSSを用いましたが、脳卒中の後遺症を評価する部分として、麻痺のレベルを段階付けすることがよく用いられます。
麻痺のレベルから、実際に起き上がりから、立ち上がり、または歩くことができるかということの、判断材料となります。
代表的な指標として以下の2つ、BrunnStromStage(ブルーンストロームステージ)、Fugl-Meyer assessment(フューゲルマイヤーアセスメント)が挙げられます。
■BurunnStrom Stage (ブルーンストロームステージ)
麻痺のレベルは、手と脚のそれぞれを6段階で評価していきます。大事な麻痺のポイントとして、「分離運動」と呼ばれる各関節が分かれて動くかどうかとういう点に着目しています。分離の逆は「共同運動」と呼ばれ、麻痺が重度で個々の関節を別々に動かすことができずに、共同的に曲げるか伸びるかの2パターンとなってしまっている状態を指します。やはり歩くことや、手を使うといった日常生活の動作は、「分離運動ができる」ステージ4〜5へ育てていくことが大切です。代表的な歩行自立の指標として、二木の、脳卒中が発症した1ヶ月で、今後歩行が可能かどうかの有無を、ブルーンストロームステージを使用して、予後予測を行う指標があります。
■二木の入院後1ヶ月、最終自立度予測基準
他にも、FMAやバランス指標であるBBS、日常生活指標FIMなどのテストを用いて、歩行自立度を評価する指標はありますが、全てを不足なく網羅する指標はありません。ある割合で、当てはまらずとも歩行を達成することができる、慢性期でも時間をかけて自立を図ることも可能です。あくまでも、多い確率として、入院時の設定として、ベッド周囲の動作が自立している、ブルーンストロームステージとして麻痺のレベルが4以上の場合は、歩行を獲得する確率が高い傾向にあります。
■BBSによる歩行自立評価
BBSとは、Berg Balance Scaleの頭文字をとった略で、項目は下記の通りです。14項目、各4段階評価、総合56点になります。各バランス課題を4段階評価し、総合得点から「転ばずに1人で歩くことが出来るか。」を判断します。
1. 椅子からの立ち上がり
2. 立位保持
3. 座位保持
4. 着座
5. 移乗
6. 閉眼立位保持
7. 閉脚立位保持
8. フェンクショナルリーチ
9. 拾い上げ
10. 振り返り
11. 360°の方向転換
12. 踏み台昇降
13. タンデム立位
14. 片脚立位
「カットオフ値」と呼ぼれる、言わば1人で安全にバランスが取れる合格点というものがあり、BBSは45点以上にて、1人でバランスをとり歩けると言われています。この数値は、実際の回復期病院にて取られた有効性の高い数値ではありますが、実際は自宅内の歩行など、伝いができる環境や、屋外で見守りにて行えるなど、歩行導入に対しては、必ず必要な数値ではありません。また逆に、数値が上回っているからといって、必ずしも転倒なく過ごせるといったことでもありません。認知機能や、また危険かどうか判断ができる危険認知、注意力など、高次脳機能も判定する上で重要な要素となってきます。
脳卒中の予後や回復の話になると、まず思い浮かべるのは「もう一度歩けるかどうか」という点が着目されると思います。発症後からの予後判定としては、ブルーンストロームステージに基づいた麻痺のレベルから、実際の歩行自立判定としてBBSが用いられます。このような指標を用いる事で、治る確率が上っているか、下がっているのか判断する材料になります。より確率を上げていくには、リハビリが重要なのは過言ではありません。脳卒中の病型の特徴から、致死率や重症度の傾向をみてきましたが、実際の予後予測では急性期を脱して、回復期入院後の評価から日を追うごとに、最終的な回復度合いは明らかになってきます。
リハビリベース国分寺の取り組み
リハビリベースでは、脳卒中が起こり、急性期から退院し、そのままリハビリに通われる方や、回復期以降もさらに上を目指しリハビリを求めて来られる方が多数いらっしゃいます。歩行はある程度獲得し、自宅で生活を送りながらも、リハビリを集中的に行いたい方。回復期を経て歩行を行えるようになったが、後遺症をもう一段階改善したい方。歩きだけでなくランニングも目指したい方。保険外では、それぞれの利用者様のニーズに合わせ、目標が実現できるまでリハビリで改善を図ることができます。
先程は、脳卒中後の回復として「1人で歩けるようになる」という点で、様々な評価指標を出していきましたが、単独歩行に到達しない重度〜中等度の後遺症をお持ちの方が、回復として諦めざる終えないということではありません。中には、脳卒中が起こり、意識レベルが低い期間が長く、リハビリを3年も受けられずに、覚醒が良くなってからリハビリを開始される方もいらっしゃいます。脳卒中の予後は、先程述べた麻痺の評価だけでなく、病歴や、家族構成、自宅環境、内科的疾患の状態など多様性を富んでいます。その中でも、「少しでもできること増やす。」、「長い時間をかけても歩けるようになりたい。」と、どの目標を持ち、どのように目指していくかで、後遺症との付き合い方は多く異なってきます。
今までの経過や、現在の悩み、今後の方向性をまずは、一緒に体験で共有しませんか?
重症度が高っかったのにも限らず、奇跡的な回復を遂げる。そのようなケースを生み出すのは、やはりリハビリの力にあります。「ダメだ」と言われたことに、まだ可能性が多くあるかも知れません。諦める前に一度、ご相談下さい。
予想をくつがえすリハビリ
先程も述べたように、多くのブルーンストロームステージにて、2や3レベルの人が歩けないかというと、そうではありません。麻痺に対して、装具や杖を使用し調整を行い、残存する機能を上手く引き出していくことで、歩行獲得を果たす方も多くいます。
それにも、麻痺に対して可動域改善を図ることや、筋力を上げる、動作を修正し獲得するといったリハビリを取り組むことで、可能となることがあります。通例では、回復期と呼ばれる発症後の6ヶ月が回復大きく見込める期間と言われています。
ですが、回復期を経た慢性期でも必要なリハビリを行うことで、麻痺の度合いや動作を改善できることは、エビデンスレベル証明されており、リハビリベースではそのノウハウが実在します。
歩けないから、終わりでない。。。
脳出血が起こり、なんとか命はとりとめたものの、重い後遺症を患ってしまった。麻痺のレベルも重度、高次脳機能障害もあり、歩行は難しい。それでも、出来る様になることはたくさんあります。寝返りから、車椅子への乗り移り。家族や介護サービスにて手を借りることが出来れば、様々な活動に広げることも出来ます。
歩けないから、リハビリは終わりではありません。助かったからこそ、やれることは無限にあります。自宅に戻っても、時間を経過しても治る確率を上げるリハビリを私達は提供します。
【参考文献】
1)山口修平. 小林祥泰.(2014)脳卒中データバンクからみた最近の脳卒中の疫学的動向.脳卒中36:378-384.
2)Brott, T., et al. Measurements of acute cerebral infraction: a clinical examination scale.
3)二木立. (1982).脳卒中リハビリテーション患者の早期自立度予測.リハ医学.19:201-223.
4)林真範. 太田郁. 回復期リハビリテーション病棟における脳卒中患者の歩行自立までの期間予測. 理学療法学. 第46巻第3号. 188-195.
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尾作研太 理学療法士
回復期病院にて4年間勤務、主に整形外科や脳血管疾患、脊髄損傷のリハビリに従事。海外の大学にて、ヘルスケアの学位を取得後、訪問リハビリと地域の介護予防に参画。脳血管疾患の方の動作獲得や、装具を含めた歩行の修正、社会復帰までサポートしている。