腰痛シリーズ第4弾 腰椎分離症について
【腰痛シリーズ】第4弾 腰椎分離症について
成長期に多い腰痛の中でも早期発見が鍵となる『腰椎分離症』
今回のブログでは腰椎分離症の病態や症状、所見などをまとめています。
「理由は分からないけどスポーツ中の腰痛が思うように改善しない、、、」「病院受信のタイミングがわからない」そんな悩みを抱えている方へご参考になれば幸いです。
【目次】
●腰椎分離症とは
●自覚症状
●診断
●治療
●参考文献
腰椎の後ろ半分がリング状の形をしており、その部位が疲労骨折(分離)してしまうことを腰椎分離症といいます。
スポーツ動作による過度な後屈・回旋・側屈の複合動作により分離を引き起こしてしまいます。
主に10代の成長期に見られることが多く、発症すると腰痛や下肢の痺れなどが引き起こされる場合もある疾患です。
【自覚症状】
腰椎分離症ではスポーツ活動などの動作以外は比較的症状が軽く、主に体動時に片側に範囲の狭い鋭い痛みを訴えることが多いです。
体幹の後屈時・側屈時・開戦時に、同一部位の狭い範囲に痛みを訴えます。通常、座位や立位も含めて安静時の痛みは少ないといわれていますが、発症初期や、炎症反応が強い時期には安静時や体幹屈曲時にも腰痛が出現し、下肢痛を訴えるケースも少なくはありません。
【診断】
〇身体所見
・疼痛部位の確認
・棘突起および周囲の圧痛の確認
・腰椎の動作時痛の確認(前屈・後屈・側屈・回旋)
・他の疾患との鑑別のため、下肢伸展挙上テストや徒手筋力検査も行う場合もある
※後屈ではほぼ全例(約95%)が指をさした部位に痛みを訴え、左右の側屈では患側が痛む場合と反対側が痛む場合がありますが、陽性率は約75%といわれています。
左右の回旋では回旋の反対側に痛みを訴えることが多いです。
〇画像所見
・単純X線所見
単純X線は「腰椎診療ガイドライン」において20歳以下はred flagに該当(1)するため、必要最低限の検査です。4方向撮影(正面、側面、両斜位)が基本であり、斜位像による"スコッチテリアサイン(スコッチテリアの首輪)"にみられるような関節突起間部の骨連続性が断たれた状態は腰椎分離症の単純X線所見として有名です。しかし、腰椎分離症の早期例では、腰椎X線4方向撮影で分離像を認められないのが一般です。したがって、この有名な所見は完成された分離症終末期と一部の進行期にしか認められません。また、腸管ガスが重なることもあり特に初期以前では単純X線での診断は難しいとされています。
・MRI
早期に関節突起間部の骨髄浮腫(骨が腫れている状態)を捉えられ、骨癒合の目安になるため、腰椎分離症の診断にはMRIは必須の検査です。
長くとも1週間以上続くような身体所見を認める場合は、早期診断のためにMRIを撮影することをお勧めします。
・CT
CTは腰椎分離症の病期分類(図1)には欠かせないため、特に骨癒合を目指す際はMRIとともに必須の検査になります。
〇文献
(1)日本整形外科学会,他監:腰痛患者が初診した場合に必要とされる診断の手順は、腰痛診療ガイドライン、第2版、日本整形外科学会診療ガイドライン委員会、他編、南江堂,2019.p22-4.
【治療】
〇保存療法
発育期の腰椎分離症では保存療法の選択が基本となります。
骨癒合を目指す場合は硬性コルセット装着による腰部の安静とスポーツの中止が必要となります。
スポーツ中止による対象者の不利益も十分考慮しなければなりませんが、分離症症状の増悪や骨癒合せず両側が偽関節となり分離すべり症に進行してスポーツ時の腰痛を引き起こす可能性が十分高いことも理解しなければなりません。また、将来を見据えた際にも、分離症の既往が原因で腰痛により動作に制限が生じる可能性も少なくないです。
これらの理由からもなるべく早期にMRIとCTによる確実な病期診断を行い、適切な治療方針を決定することが大切です。
保存療法では硬性コルセット着用による装具療法(終末期以外)、運動療法やストレッチ、超低周波超音波パルス照射(LIPUS)等の物理療法を中心に行っていきます。
病期や時期別の治療の流れを以下にまとめます。
〇手術療法
骨癒合が得られず偽関節となり、痛みが保存療法に影響したりスポーツ復帰に支障がある場合や本人が強く希望する場合は手術を検討しますが、適応は限られます。
手術治療は主に分離部修復術、分離部除圧術、椎体固定術が行われてますが、発育期の腰椎分離症に対する手術適応はかなり限られており、その中では分離部修復術が多く行われています。
前述した通り、腰椎分離症では基本的に保存療法を選択することが多くなっています。
医師の診断の元、的確な治療とリハビリが必要になってきます。
次回、腰痛シリーズ第5弾の【腰部疾患のリハビリについて】をご紹介いたします。
【参考文献】
・吉田徹.成長期腰椎分離症の診断と治療.2003
・加藤欽志.整形外科医のための脊椎のスポーツ診療のすべて.2022
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