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熱中症対策を「医療費」と「電気代」から考える


命に関わる夏の暑さ


梅雨の最中から30℃超えの日が続き、7月に入ってからも、油断のできない日差しが降り注いでいます。道行く人にも日傘を差す人が男女問わず増えました。

総務省消防庁の発表(速報値)によれば、全国の熱中症による救急搬送は、6月の後半に跳ね上がり、6月16日~22日の期間だけで8000人を越しました。6月23~29日には4665人と少し落ち着きを見せましたが、6月30日~7月6日には再び10048人と増加。5月1日から6月末までの累計では約18000人の方が運ばれており、これは昨年の同時期と比べて約2倍近い、驚くべき数字となっています。

【総務省消防庁 全国の熱中症による救急搬送状況より引用】





ところで、救急車が出動する際にかかる費用が1回あたり何円か、ご存知でしょうか?

1回あたり約4万5千円だそうです。
令和6年度5~9月の間に熱中症で救急搬送されたのは、計97578人。単純にこの数字をかけ合わせると、熱中症の救急搬送によって、昨年は約44億円もの費用がかかった計算となります。

救急車の画像


さらに、救急搬送された中で、入院が必要となる中等症から重症の患者数は、およそ3万4千人でした。
入院日数が2日程度の場合の、1人あたりの医療費は、15万程度(自己負担額4~9万円)と考えられます。この数字は差額ベッド代などの保険適用されない分も含んではいますが、上記の救急搬送に加えて、51億円の医療費が、熱中症のために使われていると言えるでしょう。

その上に、軽症だとしても点滴などの処置がありますし、重症の場合には、入院日数が長期に渡る場合もあります。例えば、65歳以上の高齢者を対象とした調査では、熱中症の入院期間は平均27.5日だと報告されています。実際にはさらに費用がかかっていることが推測されます。

また、入院してしまうとその間、働くことは当然できません。さらに、お金には代えられないものを失ってしまうこともあります。その機会損失・逸失利益は、計り知れません。

経済面から見た時、熱中症は、個人にはもちろんのこと、社会全体にとっても大きな負担と言えます。

ただ、裏を返せば、ひとりひとりが熱中症を防止して自分の体を健康に保つことは、巡り巡って、自分の周囲にいる大切な人のためにもなるとも言えるでしょう。

それでも自分ひとりのためにエアコンをつける気にならない、電気代がもったいない、と感じてしまう方にも、できる限り気兼ねなく熱中症を防止していただけるように、今回は、熱中症になった時のリスクや、より消費電力の少ないエアコンの使い方について紹介いたします。


熱中症になった時の損失


最初に社会全体から見た時の損失についてお伝えしましたが、やはり多くの方が最も気になるのはもっと身近な、自分や、身の回りの方が熱中症になった時にかかる費用や、その影響についてではないでしょうか。

まず、熱中症になった時の影響についてより具体的に想像していただけるように、熱中症の程度について、少し説明させていただきます。




熱中症の程度は、「熱中症による救急搬送状況」に関する統計上では、軽症、中等症、重症、死亡、その他で分けられています。
これらの名称を聞いて、皆様はそれぞれ、どのような状態を思い浮かべるでしょうか?

新型コロナウイルス感染症の流行が始まった時にも少し話題になりましたが、この統計における定義は、「入院が必要かどうか」「入院期間がどの程度か(3週間以上か)」「死亡しているかどうか」によって決められています。
つまり、「軽症」だからと言って、少し休んだり点滴で終わるとは限りません。中には、早期に病院で治療していなければ入院することになっていた方や、その後も通院による治療が必要だった方もいる、ということになります。


さらに、症状によって区別した「日本救急医学会熱中症分類2015」の定義における「重症(Ⅲ度)」の場合、入院後にも中枢神経(脳や脊髄)に後遺症が残ることがあるという報告がされています。

熱中症の症状と重症度の分類表。Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度と分かれており、数字が大きい方が重症と分類される。Ⅰ度ではめまいや立ち眩み、Ⅱ度では頭痛や嘔吐、Ⅲ度では中枢神経症状などが出る。
【環境省 熱中症環境保健マニュアル 2022より引用】


具体的には小脳失調やパーキンソン症候群のような運動障害が出ており、しかも、退院してから1年経っても改善されずに、症状が残ったまま、とのことでした。

重症でなく、頭痛や嘔吐、倦怠感などが起こる熱疲労(中等症、Ⅱ度)レベルであっても、発症して2週間後にも短期記憶や姿勢の安定性低下など、中枢神経障害が残る場合があります。3~6か月後には改善したという報告はありますが、改善するのだとしても、半年近く症状に悩まされれば、仕事や生活に悪影響があるのは、想像に難くないでしょう。

また、最近の調査では、熱中症が白内障リスクの上昇に関係しているという可能性も示唆されています。白内障は手術をすれば治りますが、手術費用は3割負担の場合、約45000円程度になることもあります。


そして、最も悪いケースと言えるのが、死亡した場合でしょう。命は当然、お金に代えることはできません。
ちなみに令和7年度は既に、救急搬送された方だけでも、死亡者数が46人となっています(2025年7月24日時点)。令和6年度についてはまだ全体の数値は発表されていませんが、令和5年度は1651人でした。今年は救急搬送が増加していることを鑑みると、より多くの方が亡くなられる可能性も有り得るでしょう。




以上のように、熱中症の程度によって、影響は様々です。ただ、万が一にも重症になった時のことを考えると、水分補給やエアコンなどの熱中症対策は、圧倒的に「お得」だと言えそうです。

貯金箱に乗る男性のイラスト


費用についても様々ですが、おおよその目安として計算しますと、最初にお伝えした通り、2日間の入院となった場合には、保険適用される治療費・入院費用に、食事代や差額ベッド代などを含み、自己負担額はおよそ4~9万円程度になることが多いようです。
点滴の場合では、初診料と検査、そして点滴による治療によって、おおよそ2千円~3千円程度が見込まれます。

そして入院・診療をしている間は、当然のことながら、仕事はできません。生命保険文化センターによる調査では、入院時(熱中症以外も含む)の1日あたりの逸失収入は、平均で21000 円と報告されています。自己負担額と合わせると、2日入院しただけでも、10万円近くが失われてしまいますね。


熱中症対策をした時の費用


熱中症になった場合にかかる費用については、ご想像いただけたでしょうか。場合にもよりますので、実際には想像よりも上、想像よりも下、ということもあるでしょうが、熱中症になった時の心労も加味すると、やはり多くの方にとっては高コストと言えるのではないでしょうか。

では、熱中症対策にかかる費用について、ご説明いたします。

熱中症対策で大切なこととして挙げられるのは、水分補給や、エアコンの使用です。

各省から出ている、熱中症予防行動を取りましょう!ポスター。「熱中症警戒アラートをチェック!」「見守り・声かけ!」「適切にエアコンを使おう!」「こまめに水分・塩分を補給!」熱中症は誰でも危険!油断大敵で


特にエアコンの使用は重要です。東京都の令和6年の調査によれば、屋内で亡くなった291人のうち、185人がエアコンを使用しておらず、64人がエアコンを設置していなかったそうです。割合にすると、亡くなった方の8割以上がエアコン未使用となります。

こういった背景もあってか、東京都では今年、夏季4か月間の水道代基本料金を無償化する特別措置を打ち出し、これに368億円もの補正予算を組んでいます。



では、具体的に、エアコンを使用した場合の費用を考えてみます。

部屋数や大きさ、エアコンの性能、設定温度など様々な要素によって、費用は大きく変わります。
その中で例を挙げると、経済産業省資源エネルギー庁が出している「省エネ性能カタログ2024年版」の「エアコン省エネ性能一覧」によれば、14畳程度の部屋を冷やす能力を持ったエアコンの、冷房期間(5月23日~10月4日)の消費電力量は、省エネ性能に優れた製品で294kWh、評価点の低いもので481kWhと算出されていました。

全国家庭電気製品公正取引協議会を参考に、電気料金単価を31円/kWhとした場合、1か月のエアコンにかかる電気代は、おおよそ2000円~3300円程度と考えられます。
熱中症で1日休んで点滴をするのと、同程度の金額ですね。


また、エアコンは使い方を工夫することで、消費電力をより少なくすることができます。



エアコンはつけっぱなしにした方がお得、という話をご存知でしょうか。エアコンはつけた時に、最も電力を使います。さらに、室内外の気温差が大きい時、部屋を冷やすためには、より大きなパワーが必要となります。そのため、短時間の外出であればつけっぱなしにしておいた方が、効率的に使うことができるのです。

また、エアコンの掃除も重要です。資源エネルギー庁によれば、フィルター掃除を月1回か2回清掃することで、年間で990円の節約になるそうです。室外機の周りにものを置かないことも、冷房の効果を上げます。


以前お伝えした、こちらの記事もご参照ください。冷房での冷えすぎにお困りの方向けの記事となっておりますが、上手に利用することで、より冷房効率を上げるヒントになるかも知れません。


夏を楽しむご利用者様のご紹介


熱中症になれば、費用はかかり、健康リスクも上がります。低額から利用できる熱中症保険なども生まれていますが、まずは熱中症にならないのが一番です! どうか、お体に気をつけてお過ごしください。

夏は大変なだけでなく、楽しみもたくさんある季節です。


当院にはこのように、夏を満喫するご利用者様もいらっしゃいます。

空調はもちろん完備。飲み物の提供もございます。

危険だから夏にリハビリは止めておこうかな、という方もぜひ、体験からご利用ください。


参考

「令和6年夏の熱中症死亡者数の状況【東京都23区(確定値)】」(東京都監察医務院 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/kansatsu/heatstroke/r06-heatstroke 閲覧日2025/7/3)
「熱中症情報 救急搬送 令和7年の情報」(総務省消防庁 https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/post3.html 閲覧日7/10)
「救急車の出動には1回「4万5000円」かかる!?有料化がすすむ背景とは?」(FINANCIAL FIELD編集部ファイナンシャルプランナー https://news.yahoo.co.jp/articles/8cea27acdd565d5cde0dfedc85f974ca8ab8cc41?page=1 閲覧日7/3)
「エアコンは「つけっぱなし」でも大丈夫? 24時間利用の賢い使い方」(Panasonic https://panasonic.jp/life/air/170037.html 閲覧日2025/7/3)
「高齢者の熱中症による入院費用とエアコンの電気料金を用いたエアコン使用促進方法の検討」(紅粉 美涼, 中井 寿雄 https://doi.org/10.51028/jjdisatmed.27.1_13 閲覧日2025/7/3)
「安全衛生キーワード 熱中症」(厚生労働省「職場のあんぜんサイト」https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo09_1.html 閲覧日2025/7/10)
「令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況 熱中症による死亡数」(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/necchusho23/index.html 閲覧日7/17)
「熱中症の現状と基本情報 ー熱中症環境保健マニュアル2018を参考にー」(三宅康史 https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/sympo/20190602_1.pdf 閲覧日2025/7/1)
「熱中症診療ガイドライン2015」(日本救急医学会 https://www.jaam.jp/info/2015/pdf/info-20150413.pdf 閲覧日2025/7/10)
「熱中症環境保健マニュアル 2022」(環境省 https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php 閲覧日7/17)
「2024 年(令和6年) 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58389.html 閲覧日2025/7/10)
「夏場は注意!紫外線だけでなく、高温・熱中症も白内障リスクに」(ケアネット https://www.carenet.com/news/general/carenet/58866 閲覧日2025/7/15)
「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」(生命保険文化センター https://www.jili.or.jp/research/chousa/8944.html 閲覧日7/17)
「省エネ性能カタログ2024年版」(経済産業省資源エネルギー庁「省エネ型製品情報サイト」https://seihinjyoho.go.jp/frontguide/pdf/catalog/2024/catalog2024.pdf?update=20241129 閲覧日2025/7/15)
「無理のない省エネ節約」(経済産業省資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/howto/airconditioning/index.html 閲覧日2025/7/15)


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