立ち上がり動作とは
はじめに
当院では様々な機能訓練や動作練習を行いますが、その中でも立ち上がり動作の練習を重要視しています。立ち上がり動作とはどんなものか、簡単ですが説明いたします。
立ち上がり動作とは
立ち上がり動作とは、坐位(ここでは椅子坐位)から立位に至るまでの継ぎ動作であり、日常生活においては立位・歩行を行う為の準備動作ともいえる大変重要な動作である。 運動学的には、坐位から抗重力位である立位に向かう過程の動作(重心を前方に移動しかつ上方に移動する動作)であり、立位に向かうに従い支持基底面は小さくなり、活動の自由度は大きくなる。逆に、支持基底面が小さくなるということは、バランスをとるために筋をより 協調的に活動させなければならないとも言える。静的な 坐位・立位に比べ、立ち上がり動作は、体の幾種類の筋をより協調的に活動させる必要がある動作である。1)
とされています。
日常生活において例えばトイレに行く場面を想像してみてください。座っている椅子から立ち上がり、トイレまで移動し便座に座る。用を足したら、便座から立ち上がり元の場所へ戻る。といったように立ち上がり動作が生活の基盤となっている事が分かります。
立ち上がり動作のメカニズム
立ち上がり動作を三相に分けて、相ごとに起こる関節運動や筋活動を中心に説明します。
・一相目
座った姿勢から上半身を前傾させ、臀部にあった重心を足部へ移動させます。この時に股関節と膝関節が最大に屈曲し、足関節が背屈します。
主に使用する筋肉は、腸腰筋という股関節を曲げる筋肉や、下腿を前傾させる前脛骨筋が働きます。
・二相目
臀部を座面から離します。一層目で最大に曲がっていた股関節と膝関節が伸展方向に動きます。足関節は最大に背屈します。
ここでは、股関節を伸展させる殿筋群、膝関節を伸展させる大腿四頭筋を主に使用します。
・三相目
股関節、膝関節を更に伸展させ一相目で前方に移した重心を三相目で上方に移動させます。上半身も起こし立位姿勢に移行します。
ここでは二層目に引き続き、殿筋群と大腿四頭筋が働き、足関節を背屈位から底屈方向に動くために下腿三頭筋が働きます。そして、体幹筋群が働き姿勢を安定させ立位姿勢となります。
代償動作
立ち上がり動作には様々な関節運動や筋活動が起きて成り立つ事を説明しました。前述した立ち上がり動作は、所謂正常な動作の説明ですが、人それぞれの身体の動かし方の癖や可動域制限、筋力低下等の様々な影響で多種多様な動作方法を呈する事があります。
例として...
・股関節、膝関節が硬かったり、上半身を前傾させる筋肉の筋力低下を起こしていると一相目の動きが不十分となります。こういった場合、前方にある支持物を手で引っ張りながら重心を前方に移動させ立ち上がるといった代償動作がよく見かけられます。腰が曲がった円背姿勢の方でよく見られます。
・脳卒中の後遺症で麻痺のある方は、足関節の背屈に制限がある場合がある為、一層目では下腿の前傾が不十分となり、上体の前傾をより増強させ重心を前方に移動させる場合があります。また二相目で麻痺側への体重移動を避け非麻痺側へ重心が偏位し、非麻痺側が優位な非対称な動作となりやすい場合も多く見受けられます。
これらの代償動作には、動作分析の専門家である理学療法士の評価・指導のもと、必要な運動や動作練習を行うことで正常な動作を体に覚えさせる事が効果的です。
おわりに
立ち上がり動作は全身運動であり、協調的な動きが必要となります。その為、立ち上がり動作の改善(非対称性や代償動作の改善)、がその他動作や歩行に良い影響を与える可能性が高いです。当院では、ご利用者様ひとりひとりの動作をしっかりと評価、分析し必要なストレッチや筋力強化、動作練習をオーダーメイドで提供しております。無料で体験リハビリが受けられますので、お気軽にお問い合わせください!
引用、参考文献
立ち上がり動作
―力学的負荷に着目した動作分析とアライメント―
後藤 淳, 高田 毅, 末廣 健児