廃用症候群による消化器系・泌尿器系・皮膚への影響

廃用症候群による消化器系・泌尿器系・皮膚への影響

今回のブログでは廃用症候群による消化器や泌尿器、皮膚への影響についてまとめています。
これらの器官への影響は廃用症候群をさらに悪化させる要因となってしまうので注意が必要です。
是非、最後までご覧ください。

 
【目次】

●廃用症候群による消化器系への影響
●廃用症候群による泌尿器系への影響
●廃用症候群による皮膚への影響
●まとめ

 
【廃用症候群による消化器系への影響】

廃用症候群による消化器への影響は主に食欲の低下や体重の減少、便秘、栄養状態の悪化、逆流性食道炎などがあげられます。
これらは不動による交感神経系亢進の結果、腸管蠕動運動が低下し、括約筋収縮の増大による栄養吸収率低下から、体重減少や便秘などの症状を生じます。また、臥床姿勢による食物の通過時間延長が食欲低下や食事量減少に影響すると、低栄養状態になり筋萎縮、骨萎縮を助長することになってしまいます。
廃用症候群による便秘の多くは、大腸の動きが弱くなるためです。腸は、副交感神経が働く(=リラックスしている状態の時)ことで動きが活発になります。しかし、上記した通り廃用症候群では交感神経系の亢進により副交感神経は働きが低下するので、腸は不活発になり便秘になりやすくなります。
廃用症候群では日常生活の活動量低下とともに筋力も低下します。特に排便には腹筋が関与しており、腹筋と腸の動きは連動しているため筋力の低下で腸の動きも衰えます。これにより、腸の中の便が停滞してしまうのです。
腸内に停滞している便は、水分が減っていきます。スムーズに排便するためには、十分な水分量が必要ですが廃用性症候群により水分摂取量の減少、食事量の減少が腸の刺激を弱めることで便の水分量が失われやすい状態になり、排便が困難になります。便が長く腸に停滞した状態であると、腸のバリア機能の低下やお腹が張り、食欲低下により炎症や感染症、栄養不足をきたすリスクが高くなります。また、腸が動かないことで消化不良を起こすなど身体的な影響とともに、イライラや便秘が悩みになるなど精神的な苦痛も出てきます。
このような精神的な苦痛や、座った姿勢を保持する体力的な辛さから食事への意欲を失い、食欲低下と悪循環を招いているケースもあります。
満足に食事できなくなると、全身の栄養状態が悪化するため、風邪をひきやすく、誤嚥性肺炎や褥瘡の原因にもなります。無理のない姿勢で楽しい雰囲気の中で食事ができるよう環境を整えることも予防のひとつになります。
廃用症候群による消化器系への影響の中でも代表的なのが、胃酸が食道まで逆流する逆流性食道炎です。
本来であれば、胃の入り口は筋肉の力で締まっているので、胃の中にある胃酸は食道に逆流してくることはありませんが、廃用症候群になると、胃の入り口の筋肉の力も低下してしまうため、逆流性食道炎が起こりやすくなってしまいます。
逆流性食道炎があると胸やけの原因にもなり、ますます食欲の低下や栄養状態への悪化につながります。
逆流性食道炎は薬での治療ができるので、胸やけの症状がある場合には、悪循環を招く前に早急に対応することが望ましいです。

 
【廃用症候群による非尿器系への影響】

廃用症候群になると、不動による骨量の減少と骨吸収の亢進により高カルシウム血症,高カルシウム尿症が生じ、尿路結石が生じやすくなります。
長期間寝たきりになった場合など、尿道に管を入れる尿道留置カテーテルが挿入されることがありますが、留置カテーテルの挿入は、さらに尿路結石のリスクを高めます。
また、全身の栄養状態に伴い、免疫が低下することによって、尿路感染症も起きやすくなり、発熱の原因となり、さらに膀胱結石があると膀胱粘膜を損傷し、細菌の繁殖により尿路感染のリスクが高くなります。
尿路感染症とは細菌が尿路の出口から侵入し、尿道、膀胱、尿管、腎臓など尿の通り道に細菌が住み着き、増殖して炎症が起きる感染症です。
感染する場所によって、尿道炎、膀胱炎、腎盂腎炎に分けられます。
尿道炎
尿をするときに痛みを感じ、膿(うみ)がでます。
膀胱炎
尿をするときに尿道や膀胱に痛みを感じる(排尿痛)、尿をした後も尿が膀胱に残っている感じがする(残尿感)、トイレが近い(頻尿)、尿が濁るといった症状があります。
発熱はありませんが炎症が非常に強い場合には、尿に血が混じることもあります。
腎盂腎炎
背中の痛み、発熱、悪寒、吐き気・嘔吐などがあります。炎症が強いと尿に血が混じることもあります。
尿路結石も尿路感染症も排尿時に痛みや血尿を伴うものなので、日頃から痛みの訴えがないか、尿の色が変化していないかを確認しておくことが大切です。
尿路結石や尿路感染症の予防には水分の摂取が効果的です。
廃用性症候群より、水分摂取量が減少していなかきちんと把握すること、定期的に水分の摂取を促し、手が届く位置に水分を置いておくなど、予防することが重要です。

 
【廃用症候群による皮膚への影響】

廃用症候群による影響で、さらに注意したいのが「褥瘡(床ずれ)」です。
褥瘡とは、寝たきりなどによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまうことです。一般的に「床ずれ」ともいわれ、背骨の棘突起や仙骨、大転子、腓骨頭、かかとに多く、在宅介護の場合では後頭部にできてしまうケースもあります。
本来、無意識のうちに眠っている間は寝返りをうち、長時間椅子に座っているときはお尻を浮かせるなどして、同じ部位に長い時間の圧迫が加わらないよう「体位変換」を行っています。しかし、こういった体位変換できない場合は、体重で長い時間圧迫された皮膚の細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり「褥瘡」ができてしまいます。また皮膚の表面だけでなく、皮膚の中にある骨に近い組織が傷ついている場合もあり、最悪の場合「壊死」してしまいます。褥瘡を作らないためにも、クッションなどで除圧する、体位変換を促す・介助することが必要になってきます。
自分で体位変換ができず長期間寝たきりで、栄養状態が悪かったり皮膚が弱くなっていたりする場合、圧迫だけでなく摩擦やずれなどの刺激が繰り返されている場合は褥瘡になりやすいといえます。

 
【まとめ】

今回のブログでは廃用症候群による消化器系・泌尿器系・皮膚への影響についてご説明させていただきました。
これらの器官への影響は、リハビリを行う上でも大きな阻害因子になってしまいます。
特に食事や水分が十分に取れないことで低栄養となり、身体機能改善や向上のための筋力強化に必要なエネルギーが作られないことや感染症による痛み等の症状で動くことが困難になることでさらに廃用を進めてしまいます。
このように廃用症候群は様々な器官や組織への影響が多く、治療が難渋するケースも少なくありません。
何度も言いますが、廃用症候群はやはり予防が重要となってきます!!!

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