リハビリとピラティス

リハビリとピラティス

ピラティスは、体の動きを改善するために開発されたエクササイズ法であり、リハビリテーションにおいても非常に有効な方法です。その歴史や種類、おすすめのエクササイズについて紹介していきます。

目次

1,創設者
2,ピラティスの種類
3,基本原則
4,おすすめのエクササイズ

1,創設者

ジョセフ・ピラティス

ピラティスの創設者であるジョセフ・ピラティス(1883-1967)は、ドイツ生まれのフィットネスの先駆者です。彼自身が幼少期に病弱であったため、身体を鍛える方法に興味を持ち、ヨガや古代ギリシャの体操、ボクシング、呼吸法などを経験し、独自のメソッド、エクササイズを考案しました。
https://ameblo.jp/pilates-in-hawaii/entry-11717323411.htmlより引用
https://ameblo.jp/pilates-in-hawaii/entry-11717323411.htmlより引用
第一次世界大戦中には負傷兵のサポートに従事、ベッドのスプリングを運動する時の抵抗として用い、様々な運動を指導し多くの負傷兵のリハビリに関わったとされています。戦争の終息に伴いアメリカに移り、初めはNYのボクシングジムで働き、後にスタジオを買い取りピラティスのジムを構えることとなりました。そのビルには世界的に有名なダンススタジオがあり、ダンサー達がピラティススタジオに身体のケアを受けに来るようになったことで口コミで評判を呼んだとされています。


現代では、ピラティスは一般的なフィットネス手法として広く普及し、リハビリテーション、健康管理、スポーツトレーニング、ストレス解消など、さまざまな目的で行われており、アメリカでのピラティス人口は1200万人という多さです。マットピラティスやリフォーマーを使ったエクササイズに加え、ファンクショナルローラーピラティスなど、現代のライフスタイルに適した方法としてより進化し、多くの人々に取り入れられています。

2,ピラティスの種類

ピラティスには、主に3つのタイプがあります:

〇マットピラティス
床にマットを敷いて行うピラティスです。自重を利用して筋力や柔軟性を高める基本的なスタイルです。

〇器具を使ったマシンピラティス(リフォーマー、キャデラックなど)
リフォーマーやキャデラックなど、特殊な器具を使用して行うピラティスです。器具は、抵抗を加えることによって筋力を強化し、身体を調整する役割を果たします。これらの器具を使ったピラティスは、より高度な運動や特定の部位に対するターゲットトレーニングが可能です。

〇ファンクショナルローラーピラティス
理学療法士が考案した日本発のピラティスメソッドです。フォームローラーを用いてヒト本来の機能的な動きを引き出します。歩きにつながるスタンディングのエクササイズが多いことが特徴です。

3,ピラティスの基本原則

ピラティスには、いくつかの基本的な原則がありますが、リハビリに特に役立つものとして、以下の4つを挙げます:

気づき(Awareness)
ヒトは運動学習によって意識のないところでも行動や運動が行えます。この習慣は身体の偏位があったとしてもそれを習慣として学習してしまう危険性も有しています。もしこの偏位を修正するとしたら、まずは自身の状態に「気づく」ことが重要です。

軸の伸張(Axial Elongation)
軸の伸張という概念は「抗重力伸展」と同義であり、重力に対して体を垂直に持ち上げるという根源的な機能のことを指します。脊柱には生理的な湾曲が存在し、湾曲のバランスが取れていることが重要となります。充分に軸の伸張がなされている状態では、脊柱は生理的な湾曲を保つ事が出来きます。ピラティスのエクササイズではこの原則を重要視しており、常に身体を伸ばすことを意識します。

正中化(Centraling)
前述した軸の伸張がなされ脊柱の生理的な湾曲が保持されると、脊柱は前後左右のバランスがとれた状態となり、これを正中化と呼びます。正中化された状態では不安定な状況においても姿勢を保つ事が出来ます。例えば片足立ちの姿勢が挙げられます。片足立ちが安定するという事は、歩行の安定性にも寄与する可能性が高いと考えられます。

効率的な運動(Efficient Movement)
人間は進化の過程において四足歩行から二足歩行となりエネルギー消費が約35%削減されました。ここで節約されたエネルギーは脳に回され、体重の約3%にしか過ぎない脳は、全体の三割近くのエネルギーを消費します。ヒトは身体のエネルギーを節約して脳を大きくしてきたと考えられています。理想的な運動形態は必要最低限のエネルギーで動けることとされており、ピラティスの目標とする所です。

4、おすすめのエクササイズ

以下は、腰痛や猫背で悩んでいる方向けの、脊柱の柔軟性の向上や体幹強化に特におすすめのピラティスエクササイズです。

➀マーメイド

1、スタートポジション
 ・床に座った姿勢で行います。
 ・足は膝を曲げ、肩幅程度に開きます。
 ・頭を天井に向かって伸ばすように軸の伸張を意識します。

➀マーメイド

1、スタートポジション
 ・床に座った姿勢で行います。
 ・足は膝を曲げ、肩幅程度に開きます。
 ・頭を天井に向かって伸ばすように軸の伸張を意識します。
2、手を持ち上げる
  ・右手を天井に向かって持ち上げ、左手は軽く身体を支えるように体の横に置きます。
3、側屈を行う
  ・右手で大きく円を描くように左に身体を側屈させます。
  ・側屈する際は、伸ばしている体側が長くなすように意識します。
  ・肩が上がらないように首を長く保ちます。
4、元の位置に戻る
   ・しっかりと体側が伸びたら、ゆっくりと元の位置に戻ります。
5、反対側も同様に行う。
ポイント:
 ・軸の伸張を常に意識し、身体を伸ばした姿勢を維持します。
 ・同じ動作を左右5回ほど繰り返します。

➁ヒンジバック

1、スタートポジション
 ・➀のマーメイドと同じ姿勢で行います。
 ・腿の裏に両手を当て、軽く肘を外に張ります。
2、身体を後ろに倒す
 ・身体は軸の伸張を維持したまま、肘が伸びるところまで身体を後ろに倒します。
3、戻る
 ・ゆっくりと元に戻ります。
ポイント:
 ・マーメイド同様、常に軸の伸張を意識します。
 ・身体を倒す距離は体をコントロールできる範囲で行います。
  可能な方は肘が伸びるまで倒してください。

注意点

・いずれも痛みがある場合や不安がある際は、無理をせずに中止してください。
・力を入れる際に息をこらえると、血圧の上昇を招く可能性がある為、呼吸は止めずに行ってください。

おわりに

当院ではピラティスインストラクターの資格を有した理学療法士が、ピラティスメソッドを用いて、その方々に合ったエクササイズをオーダーメイドで提供しております。姿勢の改善だけでなく、歩行の改善の効果も実感されている方々が多数いらっしゃいます。月曜日午後に勤務している石井が体験リハビリも行っております。お気軽にお問い合わせください。




参考文献:
1)中村尚人.有限会社ナップ.コメディカルのためのピラティスアプローチ.2019
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